651『埋めたもの』

1.埋めたもの(1)

「かつてマダラがやったのも…
 こんな感じか。」

マダラによる九尾の須佐能乎強化の逸話は
サスケも知るところです。

「これは…
 ナルトとサスケ…?」

外界で起こっていることがカカシにも少し視えました。

「今さら何をしようと変わらんぞ。
 上を見てみろ……。
 この天井の穴から何が見える?
 月だ。月夜の夢の世界へ向かう時は近づいている。
 大きく開いた地獄の穴を月の夢が埋めてくれる。
 やっとその時が来たのだ!」

しかしどんな強大な力でも、
自分には及ばないという自負に満ちたようなオビト。
しかし、どんなに絶大な力をもってしても、
決して折れずに立ち上がる心をもつナルトに、
幾度となく"絶望"させようとしても効き目がない様子に
オビトも多少焦っているように見えます。
完全勝利としたいのでしょうか――
決して潰えぬその心を折ることで、
かつての自分を否定し、現実を完全に否定できると。

「(…オビトの…見るもの…声が入ってくる。
  共鳴か…)」

同じ写輪眼がまるで共鳴同調を起すように、
カカシにオビトの見るもの、想いなどを伝えます。
ナルトのチャクラがいのの力を増幅した効果もあるでしょう。
力と力のぶつかり合いだけでなく、
心と心のぶつかり合いの様子もカカシには視えます。

「この剣は六道仙人の神剣ぬのぼこの剣だ。
 もう貴様らはオレには勝てん…。
 その想いの強さが剣に宿る…心の剣だ…。
 仙人はこの剣で、この世界を創造した。」

いかなる絶大な力をちらつかせても、
ナルトの目は真っ直ぐ先を見ています。

「サスケ…。オレ達は一撃に集中する。
 ほんの小さなスキしかできねーだろう…。
 見のがすなよ。」

一瞬に全力を叩きこむことを決意したナルト。

「フン…」

分かりきった事――
とでも言わんばかりにサスケも了承します。


2.埋めたもの(2)

「…あいつが読んでる。」

ナルトに呼ばれていることが分かった同期たち。
力を合わせるためにナルトのもとへ向かいます。

「そしてオレがこの剣で世界を消す!」

創造を司った剣で世界を破壊する――
その想いの強さを示さんとオビトは剣を構えます。

「螺旋丸を皆に託す!
 うまく奴の盾をぶっ壊してくれってばよ!!」

ナルトに協力しようと駆けつけてきた同期たち。
仙術が練り込まれた巨大な螺旋丸を皆に託します。
うまくできるか――
その不安を払拭するように、
ナルトが大丈夫と言う言葉で力強く後押しします。
九尾の尾に各々配置された同期たち――
リー、テンテン、サイ、チョウジ、シカマル
いの、ヒナタ、シノ、キバ。
サクラは綱手とともに最大限のサポートをします。
九人が力を合わせ螺旋丸をオビトの黒い盾にぶつけます。
破壊される盾――
その隙を縫うように突き出されるオビトの剣。
九尾の剣と衝突します。
ナルト、そしてオビトを見てカカシは思います。

「(最初はバカにしていても、
  人は人一倍がんばる奴を見ると…
  おのずと手を差しのべたくなる。
  心の穴は互いに埋め合う事を
  人はいずれは知る事になるからだよ。
  そしてその仲間で満ちた心を持つ者は、強い!!!)」

想いの力のぶつかり合い――
不思議な世界を見たオビト。
仲間と共に、木ノ葉の忍として生き、
果ては火影となっていた自分――
そんな幻です。

「なぜ…オレは――
 こんなイメージを…。」

折れたのはオビトの剣。
ナルトたちの想いの強さが勝ります。