650『眠るのは』

なぜナルトは諦めないのでしょうか。
そして信じ続けるのでしょうか。
その本当の意味――
それはオビトにはわからないでしょう。

1.眠るのは(1)

「怯むな!! 行くぞ――!!」

士気を取り戻した連合軍。

「あの大樹を切り倒すぞ!!」

柱間を先頭に皆の心がまとまっていきます。

「侍も気圧されるな!!」

ミフネが指揮する侍たちも、
忍に負けじと前進します。

「四代目。お前とナルトのチャクラの
 繋がりを利用させてもらうぞ。
 お前と違い一度には無理だが、
 ワシなりの瞬身の術で皆を援護する。」

扉間も《飛雷神の術》による援護態勢は万端です。

大蛇丸…。お前はただ傍観するだけか?」

ヒルゼンの問いかけに、

「…この戦争に興味はないわ。」

と冷めたような口調で答える大蛇丸
しかし、続けざまに、

「ただ…、彼の言う夢とやらは、
 私の大切なこの大きな実験場を捨てるのと同じ…。
 容認はできそうにないわね。」

と言います。
大蛇丸はもちろん強力するつもりです。

「なら、手を貸せ。」

と安堵を見せずにヒルゼン。

「いいでしょう。
 今はほんの少し思い出しましょうか――
 懐かしき師弟の関係を。」

と蛇を召喚し、戦闘態勢に入ります。

「(少し攻撃形態にするか。)」

限月読の準備は整え、秒読みに入ったものの、
切り倒されていく大樹の枝や根を見て、
忍連合の悪あがきを黙らせるために
そちらに力を割きはじめたオビト。
木龍形態にして大樹に攻撃機能を持たせます。
不意を突かれた忍たち。

「ワシの瞬身の術で危険な奴は逃がしていく。
 臆さず行け!!」

しかし寸での所で扉間によって匿われます。
扉間はこのようなサポートに手を尽くすようです。

「百豪で2人なら、
 湿骨林からおそらくカツユ本体の10分の1を
 口寄せできる!」

綱手もサクラと力を合わせ、
医療サポート体制を万全にします。

「連合の足場全てをカツユにする!
 その場に立っているだけで
 回復できる回復エリアだ。
 行くぞ、サクラ!」

《百豪の術》2人併せても
カツユ本体の10分の1ということなので、
一人で呼び出した場合のカツユのあの大きさでも、
おそらく20分の1〜30分の1ということなのでしょうか。
それだけ巨大ということです。
呼び出されたカツユは、忍連合の皆に治癒をもたらします。
チャクラを吸収されても、その分を補填できるため、
臆することなく戦闘に臨めます。

「くそ! やっぱ速ェ!!
 けどだんだん感知できてきたぞ! ここだ!」

オビトの移動速度は、
たとえ九尾の力を解放したナルトでも、
容易にとらえることができないもののようです。
しかし段々とその動きを感知できるようになってきたナルト。
オビトの裏をかき、同じように順応したサスケと力を合わせ、
挟み撃ちにします。

「そろそろ眠る時間だ。
 夢の中へ連れて行く…。
 時間はもう無い…。」

しかし彼らの攻撃を完璧に受け止めたオビト。
全力のナルトとサスケすら赤子の手を捻るようです。

2.眠るのは(2)

「オビト…。やはりお前は確かめたかったんだろう…。
 何があろうと決して折れない心と変わらない火の意志…
 それが本当にありえるのかを!
 一度捨てたはずだった。」

真っ直ぐな気持ち。
決して絶望に浸らない折れない心。
それを支える仲間の存在――
火の意志、諦めない信念。
未来を信じ続けるその眼差し。
オビトにとってそれは、
かつて信じていたもの、
そして諦めて捨てたものだったはず。

「だがナルトと戦いナルトの言葉を聞いて、
 一度否定したはずのそれがあるかもしれないと、
 心の奥で否定しきれなくなったんだろう…
 オビトよ。
 そして何度確かめてみても探してみても
 そんなものは無いとも思っている。
 その狭間で今も…お前はナルトに…
 その答えを見ようとしている。」

カカシはナルトを徹底的に叩こうとしている
オビトの心の裏を察します。

「なぜ起き上がる…!?」

何度力の差を見せつけても、
決して諦めず、心折れず、
立ち上がって向かってくるナルト。

「お前は何のために戦っているというのだ?
 仲間の為か。それともこの世界の為か?
 いいか…。仲間にはいずれ裏切られる。
 そしてこの世界では愛は憎しみに変わる。
 お前も分かっているハズだ。
 かつて里の者もサスケもお前を裏切ってきた…
 そして自来也の愛がお前に憎しみを与えた。
 お前もオレと同じだ。
 積み重なる苦しみがいずれお前を変えていく。
 そして今、お前にさらなる苦しみは襲うことになる。
 それでもお前は自分が変わらないと言い切れるのか!?
 またいつ仲間がお前を裏切るかも分からない。
 連合がまたいつ戦争をするかも分からない。
 そしてこのオレに勝てるかも分からない…
 こんな世界の為にもう戦う意味はないハズだ…
 もうこの世界は数分で終わる。
 そうまでして、なぜ戦う!?」

といつになく多弁なオビト。
絶対的な力を以てしても、
本当に大切なものが分からないオビトは、
ナルトのその諦めぬ心に及び腰です。

「自分の忍道だからだ。
 まっすぐ自分の言葉は曲げねェ。
 それがオレの忍道だからだ。」


"…かもしれない"という不安は大いに結構。
ただしそれに臆したり、絶望したりして、
何もせずにいるのはそれは死んでいるのと同じ。
自分たちはこの世界に"生きて"いる――
生きているからこそ、不安を感じながらも、
時には深い悲しみをを抱えながらも
今、この時を一生懸命やり抜く。
だからこそ喜びもあり、幸せもある。
その結果こそが未来なのです。
運命だとか環境だとか、縛り付けてくるものは、
今を一生懸命生き抜かないものには、
結局最後には言い訳にしかならない――。
ナルトにはそれが分かっているのです。

「次で決着をつけるぞ。ナルト。」

帰って来た戦友の言葉にナルトは力強く頷きます。

「オウ!
 眠るのは明日。夢は自分で見る!!!」