674『サスケの輪廻眼』

1.サスケの輪廻眼(1)

マダラによって放たれた《仙法・陰遁雷派》。
マダラは仙術を当然のように扱う事が出来て、
陰遁――すなわち精神的なエネルギーが雷のようになって
ナルトとサスケに向けて驟雨の如く打ち付けるのですが、
ナルトは六道の力で具現化した両の手に持つその黒い棍棒
回転させて投げつけその雷を防ぎます。

「(サスケが…!)」

自らの術の発動に気を取られ、
サスケが瞬間移動したように錯覚したマダラ。

「(この左目…。
  …なるほど。)」

サスケは発現したばかりの自身の輪廻眼の能力について
おおよそ把握できた模様です。

「(これは…。移動したのではない…!!)」

サスケははじめからそこに居たと言わんばかりです。
まるで水底に沈む物体を水面に見るような感覚。
サスケばかりに気を取られていたマダラは、
死角に滑り込んできたナルトの攻撃を
《輪墓》を展開することでどうにか防ぎます。
目には見えませんが、何者かがナルトの攻撃を阻止しました。

「(何だ、アレは!?)」

何かを感じとったナルトに対して、
しっかりと何かを目撃したサスケ。
ナルトとの応酬の際に出てくる何か――

「また! 来る!!」

《仙法・嵐遁光牙》――
嵐を嗾けてその隙に《輪墓》を繰り出してくることを察知したナルト。
目に見えないその何かに身構えますが、
しっかりと見えているサスケは、
"そこ"に向かって刀を投げつけます。

「当たらない!?」

空を切る刀。
そこに何かが居たのは確かですが、
いったいどういうことでしょうか。

「サスケ。そっちへ行ったぞ!
 何か目に見えねーのがうろちょろしてる。」

とナルト。

「そうか?
 オレにはハッキリ見えてるぞ!
 これは…もう一人のマダラだ。」

とサスケは答えます。

「(輪廻眼となって見える様になったか。
  そしてナルト…
  貴様は見えはしないが感知ができる。)」

二人のやりとりを見聞きしていたマダラは、
自身の《輪墓》が見切られていることに気付きます。

「どうやら、もう一人のマダラには、
 こちら側からの物理攻撃は効果がない様だ。」

この影のようなマダラには
一切の物理攻撃が効かない。
しかし向こう側からは干渉できる――
二次元の紙の上では届かない《高さ》という概念をもつ
三次元からペンで何かを書き込むように紙が感ずるかの様。
より高次元の空間からの攻撃ができるのが《輪墓》なのでしょう。
《神威》のような次元空間転移だけでなく、
干渉も可能とするより高度な術の様です。

「(本来ならこちらの世界からは感知する事も
  目視する事も不可能…
  見えざる世界"輪墓"に存在するオレを…。
  …どうやってこれほどの力を急に得たというのだ?
  …あのうちはサスケ…。
  奴は唯一オレと同じ直巴の写輪眼を開眼していた。
  サスケとオレには何か血とは違う
  繋がりがあるのかもしれんな。)」

"直巴"という単語は一般的でないので、
どういったものかは分かりませんが、
マダラと共通する巴紋様ということでしょうか。

「ならば――さぞや、その左目もオレの眼として
 しっくりくるだろう!!」

サスケの左目の輪廻眼を狙って急襲するマダラですが、
どこからともなく刀が刺さります。
まるでそこにあった刀に見えずに突進したかの様。

「(それが…お前の左目の能力か……。)」

マダラにもサスケの左眼の能力が大凡つかめたようです。

「なら…試してみろよ。
 その程度で死にはしないよな?」

とマダラをサスケは挑発します。

2.サスケの輪廻眼(2)

「(影のマダラにも…
  六道の仙人チャクラによる攻撃は効く…か。
  あの右腕の傷…
  最初にナルトの攻撃をガードした時にできたもの…)」

高次元と思しきところから干渉してきたマダラの影――
しかしナルトの攻撃を防いだ際に負傷したところが、
そのままこの世界に存在するマダラにも存在します。
つまりこの世界に干渉したときに起こった事象は、
そのまま引き継がれるようです。
紙の上では本来認知できませんが、
三次元空間から突如やってきたボールペンが
インクという形で文字を書き残していき二次元空間に残され、
三次元的に見たときボールペンの芯から
そのインクの残量が減っているのと同義です。

「お前の影は一定時間で自分の体に戻る様だな。
 ナルト。また奴の影が出現したら、
 そっちはお前がやれ。
 オレは目に見える方をやる。ただし…」

とナルトに提案をもちかけたサスケ。

「お前に命令されっとイラッとくんの……
 今でも変わらんねーみてーだわ。オレ!」

久々の共闘で、気持ちが昂ぶるナルト。

「話を最後まで聞け!
 …いいか。今がチャンスだ。
 奴と奴の影はおそらく少しの間重なったままだ。
 何でもいい…。次も仙人の力のまま術を準備しろ。
 動きを封じる術がいい。」

もちろんサスケの持ちかけた戦略はマダラにも聞こえています。
それでも成功すると踏み切ったゆえの行動でしょう。

「(輪墓の継続時間とその発動時間…
  そしてそれに対する対処法を想定したか…
  なるほどカンがいい。
  冷静な分析と判断能力…
  そしてオレと同じ直巴…。
  オビトより早く生まれていれば、こいつを…
  イヤ…今さらそんな事はどうでもいい。
  何があったにしろ、今のこいつらは、
  ただのガキではないと理解しなければ。
  すぐにでも両目を揃えるとするか。)」

マダラはナルトとサスケの実力に
輪廻眼一つでは心許ないと感じたようです。

「ならオレ様のチャクラを使え。
 封印術を仕込める。」

と守鶴の申し出を受け、
ナルトは《仙法・磁遁螺旋丸》を拵えます。
一方で六道の力を解放し、《千鳥》を拵えたサスケ。

「ナルト。それをオレに向かって撃て!
 それで上手くいく!」

とサスケ。影はどちらか一方の攻撃しか防げないはず。
挟み撃ちの作戦です。

「ちっとイラつくけど、
 疑う余地はねーな!」

と一瞬で間合いを詰め、
マダラを挟んでの螺旋丸と千鳥の激突!

「ナルト。六道仙人から授かった術…
 分かっているな!」

とサスケ。

「オウ!
 今がその――」

とナルトも相槌を打ちます。
どうやら六道仙人からは術も授かったようです。
しかし挟み撃ちが成功したと思われた矢先、
"影"だけを残して、本体は別の場所に退避していました。

「サスケ。こいつはオレが止めてっから、
 本体を追え!」

とナルト。
左眼の能力を使いますが、
どうやら届かない様子。

「ここまで離れると輪廻眼の能力は使えないようだな。
 少しだがお前の左目の能力も分かってきたぞ、サスケ。」

マダラもそのことに気付いています。

「急げサスケ!
 マダラの先には――
 カカシ先生がいる!!」

マダラにとっては最初からこれが狙いでした。
《神威》を使うためカカシの写輪眼を奪います。

「(だが…さすがに速いなサスケ。)」

マダラ以上のスピードで、
追いついていたサスケは刀で一閃。
マダラを一刀両断します。
しかし即座にマダラは《神威》を発動。
オビトの居る空間までたどり着きます。
そこにはサクラも一緒に居ます。
サクラに輪廻眼を潰させようとしていたオビト。
ですがその間際にマダラが阻止しにかかるのです。