649『忍の意志』

1.忍の意志(1)

「ワシ達の代で…その夢についての会談は
 もう必要なさそうだな。…違うか?」

と雷影としてエーが言います。

「…そうですね。」

賛同する水影メイ。

「当たり前じゃぜ。
 ただしここで勝たねばそれも成就せんぞ!」

土影オオノキも、国境を超えて、
忍の皆が力を合わせていく未来を力強く肯定します。
現代の影たちが帰ってきて、
連合軍の各々の忍たちも再び士気をあげます。
その皆の思いに呼応するように、
オビトに挑むナルトとサスケ。
仙術を融合した九尾化。
そして仙術を融合した万華鏡写輪眼
二つの絶大な力を合わせても、
オビトの絶対的な障壁を崩すことは難しいようです。

「…いいんだな……」

と念を押すようにオビト。

「「オレの仲間を絶対殺させやしねェ!!」」

忍連合軍の中に出た犠牲者は数知れず。
そして、その事実に心を強く保てなかったナルト。

「ウォオオー!!」

しかし皆の想いは死を超えても繋がっているのです。
自棄を起こしているのではありません。
守るべきもの、曲げられないもの、本当に大切なもの――
考えるのでなく感じているのです。
雄叫びをあげ、オビトへの闘志を捨てることはありません。

「(ナルト…!
  …戦いながらも……仲間の回復まで…。
  ナルト! アンタはアンタのやるべきことを!
  ここは私にまかせて!)」

仲間たちにチャクラを供給し続けながらも、
戦いに臨んでいるナルト。
そんなナルトを見兼ねるように、
内なる声で応援しながらも心配するサクラ。

「違うよ、サクラ…。
 ナルトは無意識でやってる…。
 シカマルを助けたいと心から強く願う想いだけで、
 チャクラが動いてる…
 心転身の術で感じるからハッキリ分かる。」

サクラの心の声を汲み取り、いのが言います。
そしてその様子を薄れかかる意識の中で、
はっきりと感じているシカマル。

「(ナルト…まったくお前はいつもそうだ。
  無理ばっかしやがって…!
  ……オレ達の為にどこまで…。
  今までだってオレらの事となると、
  手抜きも妥協もしねーから…
  お前の前だとオレも、
  めんどくさがったりできなくなっちまっただろ…)」

そんな"いい奴"が頑張ってる――
そいつの力になりたい――

「オヤジ悪ィ…。
 オレはまだ、そっちに行くなって…
 ナルトがよ。」

口にせずにはいられない言葉。
シカマルはか細くても、それを声にします。

「シカマル。今はしゃべらないで!
 アンタは絶対に死なせない!!
 ナルトが…皆が必要としてんだから!!」

サクラもシカマルを死なせまいと必死です。

「(オヤジ…。ナルトは今まで1人で辛ェー事、
  くさるほどやり抜いてきた事…
  オレは後で知った…。
  もう今はそんな思いをアイツに
  これっぽっちもさせたくねェ…
  とにかくそう思いたくないんだよ…
  あいつと一緒に居るとよ。昔、オヤジに言ったよな。)」

ドジして、やんちゃして、怒られて――
でもいつでも必死で、頑張って、一生懸命な奴――
だからこいつのために頑張ろう、頑張りたいと
そう心の底から思えるような存在。

「(初代様と違って、ナルトのバカヤローに
  相談役の二代目様のようなできる兄弟はいねーしな。
  まぁ…だから…だからこそ…
  あいつが火影になった時、
  オレがあのバカヤローの隣に居てやらねェーとよ!
  悪ィーけどオヤジ。オレはまだそっちには行けねーよ。
  ナルトの相談役にオレ以上の奴はいねーからよ!)」

シカマルは瀕死の状態から回復し遂げます。

「(ナルト。ありがとう…!
  アンタのチャクラで…
  アンタの想いの力で助かった!)」

サクラもホッと胸をなで下ろします。
サイやいのも安堵の様子。

「無理すんなよシカマル…
 オレの相談役になるかもしれねーんだから。」

とシカマルの回復に
キバも軽口を言いながら喜びます。

「心配ないぞ。赤丸。
 なぜなら相談役は3人でもいい。」

主人の発言にどこか不安げな様子で鳴く赤丸――
ととらえたシノがフォローを入れつつ
自分の思いを込めます。

「(…私だってナルトくんの隣に居たいんだもの。
  がんばらなきゃ…)」

そう――同期の皆の想いはヒナタも同じです。

2.忍の意志(2)

「よくやった…。」

駆けつけたのは綱手
そして弟子のサクラの頭に手をおくのです。
嬉しそうなサクラ。
シカマルの治癒速度を飛躍的に上がります。

「おじい様…すまぬ。」

柱間のところにいく綱手
大きくなった孫娘を見て、

「孫の代まで問題をかかえ込ませた。
 ふがい無いのは、このオレぞ。」

と答えます。

「だがおじい様の思いと夢も孫の代…
 それよりも未来に受け継がれてる。
 …そう…火の意志ってやつだ。」

綱手
先代のせいなどにはしない――
自分たちの時代は自分たちで良くしていく――
仲間の為、立ち向かっていく強き想い。
そしてその想いは今も昔も同じ。
火の意志として受け継がれているのです。

「…よし!
 奴が戦いに気を取られてる内に、
 あの大樹を切るとしようぞ!」

と柱間。
皆の力と想いが合わされば、
どんな困難も撥ね退けられる――

「たとえどれほど大きな大樹だろうと、
 この大地に比べれば小さなものじゃぜ!
 大地こそワシらの味方じゃ!!」

オオノキも土影として岩隠れの忍たちを鼓舞します。

「(…火影になる者は土下座が好きなようだが…、
  アレも…想いを伝える行動であり、
  力になりえるのかもしれんな…)」

かつてナルトが頭を地面につけて
乞うような姿勢を見せたとき、
ただ情けを求めるような見下げた行動だと見限ったエー。
しかし、今思えば、
そのような強気想いが自然に具現化したからこそ
そのような行動として表れたのであって、
ただのパフォーマンスではなかったこと――
そしてそれを理解できなかった自分を少し後悔します。
土下座をしたという事実にではなく、
その裏にある真摯な想いと信念が重要なのです。
大切なのは想い。そして、それにとどまらない行動。

「行くぞ。お前ら!!」

ナルトの中の心意気を改めて認めるエー。
雷影として雲隠れの忍をを鼓舞します。

「女として戦闘まで出遅れる訳にはいかないのよ…
 さぁ皆行くわよ!!」

メイも水影として霧隠れの忍たちを鼓舞します。

「(…ナルト。お前は今まさに…この世に、
  必要とされる存在になった。
  オレ達のなりたかったモノだ。
  そしてこのままこの世を救うぞ…ナルト!!)」

一度は恨み憎んだこの世。
でもその孤独と絶望に打ち勝ち、
この世に必要とされる存在になったことで、
本当の真実を知ったのです――
生きているからこそ、
この世に居たいと強く長うからこそ、
辛いと思える現実も楽しく輝いたものになると。
そして今ではそんなこの世が愛しいとも。

「皆、オレに続け!!」

我愛羅も風影ろして砂隠れの忍を鼓舞します。

「よし…。そろそろ行けるか……」

傷の回復とチャクラの回復を待って、
次なる行動を起そうとしていたカカシ。

「オレの青春はまだ色褪せちゃいないぞ!!
 行くぞリー!! テンテン!!」

青春パワー全開のガイ。
各々の忍たちの目に輝きが戻ります。

「(…お前の過去が…皆を通して入ってくる…。
  うずまきナルト。…今…、お前が皆を一つにしている。
  お前のその波乱に満ちた人生がお前を作り……、
  お前のその生き様が、皆の胸に希望をあたえたのだ!)」

と柱間は胸の内で理解します。

「希望(さき)を追う――行くぞ!!!」