648『忍の夢』

1.忍の夢(1)

「サスケェ!!
 オレも行くってばよ!!」

闘気を剥き出しに、
サスケと共闘することを宣言したナルト。

「…うずまきナルト
 (何度も…何度も…)」

なかなか折れそうで折れないナルトの心をみて、
オビトも苛立ちを見せています。
そんなナルトに父ミナトも安心して任せる様子。
陰の九尾のチャクラも供給し、万端の構えです。

「で…サスケ…。
 お前…相手は仙術しか効かねェって、
 分かってんよな!?」

とナルト。

「さっきのお前と一緒にするな」

抜けてるお前と一緒にするな、
と皮肉って見せます。
今度は自分が力を見せる番。

「…香燐ほら…!
 アレってさ…、サスケの呪印模様だよね…。
 呪印の力は無くなってたハズだろ…。」

水月の言う通り、
須佐能乎の状態から呪印状態をつくりあげるように
サスケを黒い影が包み込んでいきます。

「そもそも、重吾の呪印は仙術の力。
 …かつて私の実験でその重吾のチャクラを注入して、
 直ぐ呪印を解放したサスケくんだもの……
 サスケくんの須佐能乎が同じように
 重吾のチャクラに適応しても何ら不思議じゃないわ。
 つまり仙術須佐能乎ってとこかしら。」

自然エネルギーを取り込み活動源とする重吾の仙術の力――
それを簡易的にしたものが呪印でした。
同様にして重吾のチャクラを組み込んで、
《仙術・須佐能乎》とするのは容易いはずだと大蛇丸は言います。

「(…うちはサスケか…。
  かつてのマダラと同じ可能性を見せる
  …うちはの者よの。)」

"うちは"の歴史を背負い、
うちは最強の戦士と称されたマダラのような
力の片鱗を見せるサスケに
扉間は少々複雑な心境を見せます。
いまは仲間として共に闘う選択をしたサスケですが、
どうもマダラっぽさが感じられてならないようです。
でも、いまは彼の力を信じるしかありません。

「…ウチもあっちに交ざろっかなぁ…」

重吾と共闘するサスケを見て、
なぜだか寂しそうにつぶやく香燐に
水月はもちろん気なんか遣いません。

「邪魔だって。また刺されるよ。」

香燐はそんな水月を全身全霊を以て殴りかかります。
そんな二人を少し愉快そうにしながら大蛇丸は、
思慮深げに考え込みます。

「そしてサスケくん…。
 アナタの力はこの後ろの二人と違って……、
 …イヤ、私のどの実験体とも違って……、
 …まだまだこんな程度ではない…。
 私には分かるのよ…。
 私の生涯をかけ集めた情報から導き出せる…
 私の勘がこういうの…
 アナタはいずれマダラを越えた忍になると。」

縦横無尽に力を揮うマダラの存在を前に、
サスケからそれを上回る可能性を見出している大蛇丸

「(そして、うずまきナルト…。
  まるでかつての兄者を見てるようだ……
  バカで甘く、キレイ事を大声で口にするガキだ。
  だが…なぜだか皆に好かれ…頼りたくなる…。)」

対して偉大な忍である兄・柱間のような魅力と、
凌駕するかもしれない可能性をナルトに感じた扉間。
ナルトとサスケ――
彼らが合わされば、
絶望の壁すら脆く見えるように感じられます。

「後悔は先に立たんぞ…
 お前らの先には何もないがな。」

と愚かな者を見下すようにオビトは言います。
でも忍連合の者達には違って映ります――
絶対的な力を前に一歩も踏み出せなかった忍たち。
踏み出せない一歩を踏み留まる忍たちを見て、
少し昔に想いを馳せる柱間。
その様子がリンク中の忍たちに流れ込んでいきます。

2.忍の夢(2)

初代影たちの五影会議に場面は移ります。

「ここにこうして各五大国初代五影が集い、
 五影会談ができることを本当に……
 感謝する!!」

と頭<こうべ>を円卓にめり込むほど垂れる柱間。

「兄者…!
 火ノ国木ノ葉隠れ代表である火影が、
 他の影相手に簡単に頭を垂れるな。」

示しがつかないとばかりに、
柱間を制止する扉間。
各影にも扉間のような形で、
付き人が配されており、
おそらくこれは将来の影を担う人々――
二代目となった忍たちでしょう。

「だが、うれしくてのォ〜〜〜」

と嬉し泣きする柱間。
でも皆が皆、柱間のように、
恒久平和を願う者ばかりではありません。

「火影殿。頭を上げろよ。
 長たる者がよ、する行為じゃねーよ。
 それはよ。」

と初代雷影。

「確かに。火影殿の言われる五影協定の趣旨に
 賛同するためここへ来たが……
 ただでサインする訳ではない。」

と初代土影。

「あまり下手に出られると、
 何かあると勘ぐってしまうぞ。」

と初代水影。

「火影殿が集めた尾獣を他里に分配するというのが
 協定へのサインの条件…。
 これは取引だ。
 感情だけに流されるものではない。」

と初代風影は現実的です。

「その通りだ…。
 尾獣はバランスを考え分配するが、
 全て買い取っていただく。」

と扉間。

「タダでも…」

と提案しようとする柱間を厳しく制します。

「黙れ!!」

実際には感情論だけでは、
争いの抑止力にはならないのです。
各々が持つ正義がある。
そのぶつかり合いに暇<いとま>はないのです。
ならば尾獣という大きな力を抑止力に、
それぞれがいがみ合いを止めていく
取っ掛かりをつくるのが五影会談の目的だったのでしょう。

「我が里には古くよりある寺の者達が
 尾獣を一匹封印してきた…。
 すでに尾獣を持っている…。
 よってもう要らぬ。
 協定に協力するには他里と違い
 それなりの見返りを求めるが、
 ……よろしいか?」

と強気の交渉にでた初代風影。
その望みとは――

「我らの国は砂ばかりだ……。
 よって隣接する木ノ葉には尾獣の代わりに
 豊かな土地を分けていただく。
 そして他国には尾獣を買う額の3割を
 こちらにもいただきたい。」

と初代風影。このあまりの自国贔屓に他里からは当然、

「ふざけるな風影!!」
「なっ!」
「すぎるぞ風影殿!」

初代雷影、初代土影、初代水影と、
猛烈に反発してくるのは目に見えています。

「この条件を飲んでもらえなければ
 協定にはサインしない!!
 砂漠ばかりの生産性の無い我が国で…、
 四つの大国と渡り合っていくには、
 我が里の尾獣の存在を大いに利用するのは当然!!」

風の国の人々の豊かさがかかっています。
一国一里を背負う者として、
初代風影は強気の交渉を続けます。

「我ら四国が手を組み、
 風の国をたたくこともできるのだぞ……。」

と初代水影。
そんな収拾のつかない展開に広がっていきそうな流れを、
柱間が再び勢いよく頭を垂れることで治めようとします。

「…今まで確かに我々は上手くいかない事だらけだった…。
 我ら各々同胞や一族を守る為にやってきたことだ…。
 致し方ない時もあったかもしれぬ。
 そして今日…五国の協定が上手くいったとしても…
 それがどこまで続くかも守られるかも正直分からぬ。
 だが…オレはいつか…いつの日かこれから先…
 国は関係なく忍が皆協力し合い助け合い…、
 心が一つとなる日が来ると夢見ている。
 …それがオレの思う…先の夢。
 今日はその夢への第一歩にしていただきたいのだ…!
 どうか! どうか! どうか! どうか!」

と柱間。
なぜだか夢想に満ちた綺麗ごとなのに、
妙に納得してしまう面々。
それが柱間という人物の力であることを暗に示しています。
そして月日は流れ現在――

「今こそ我ら忍の痛みから、苦悩から、挫折から…
 紡いで見せてくれ!!
 我ら忍の――本当の夢を!!
 頼む!! 我らの愛すべき子供達よ!!」

と忍連合皆に柱間は呼び掛けます。
現五陰も到着し、これからが忍連合の反撃の時です!