643『合わせる拳』

クライマックス!
残念ながら月曜日に更新できていませんが、
記事を書いていて、
ついに大一番を迎えたなという気がします。

1.合わせる拳(1)

「ミナト…。
 お前は息子に己の尻拭いを
 させるつもりだったのだろう?」

尻拭い――
あまり聞こえは良くありませんが、
確かにミナトは自分の息子の未来を信じて、
自分が果たせなかった想いを託した形にはなりましたが、
それはナルトの意志とは無関係なので、
厳しい見方をすれば、"押し付けた"ことになります。

「だから息子にワシの残り半分を封印した…。
 ワシの半身と協力することを確信するかのようにな。」

しかし、それは見方次第で希望にもなる。
強力な力になると信じて、
ミナトは九尾を息子に封印したのです。
そして陰の九尾はミナトに賛同するように言います。

「なら今さら後悔するな。
 クシナが死んだのはお前のせいではない……。
 息子を人柱力にした事は悪いことではない…
 世界がこうなってしまったのを今まさに…
 変えようとしとるのがお前の息子だ。
 …もうあの時の赤子ではない。
 ちょうど明日で…」

もはや人柱力として自分が封印された憎しみすら、
屍鬼封尽として半分にされてしまった怨みすら、
もはや九喇嘛にとってはもう"どうでもいい"のです。
ダチであるナルトとともに、
終りかけようとしている世界を食い止めることに
何の躊躇いもありません。
何が原因で、何故このような結果を生んだのか――
そんな理由を求める事はいつの世だって結果論にすぎない。
何が一番で、本当に大切なモノか――
今この時を大事にし一生懸命やり抜くことです。

「やっぱ思った通りだってばよ!」

仙術が効いてしてやったりという様子のナルト。

「十尾の人柱力にこんな弱点があったとはな…」

全てが完璧の存在――
そう自負していただけに
オビトは意外そうにしてみせます。

「(十尾が入った分…
  すり抜けもできぬか。
  うっとうしい…)」

十尾が存在することによって
《神威》もうまく扱えない様子。

「…仙人の力…」

あまり馴染みがないような様子を見せるサスケ。
攻撃を成功させて帰ってきたナルトが
今回は解説をする方です。

「ガマの攻撃は仙術つって、
 自然エネルギーを使うんだってばよ。
 考えてみりゃ十尾の力を感じてみた時、
 自然エネルギーそのものだった。
 自然の力には同じ自然の力で
 対抗できるってことかもな…。
 理屈はよく分かんねーけど。」

とナルト。そうなれば、
これを基軸に攻撃を組み立てていくより
他はなさそうです。

「仙術覚えといてよかったぜ…!!
 よォーし…。次は蛙組手だ!!」

意気揚々とするナルトの背後で、

「(…ワシとの飛雷神を即座に理解し…、
  仙人の力まで身に付けている。
  まるで兄者と共に闘っているようだな。)」

と柱間を重ねるほど、
扉間はナルトを評価しています。

「効いたのは確かだが…
 回復して後ろを警戒しているようだ。」

一方で冷静に敵の様子も分析しています。
先ほどの螺旋丸によるダメージを回復しながらも、
飛雷神の起点となったマーキング部分を警戒し、
もはや一撃たりとも入れさせない構えをオビトはとります。

「そろそろ月読の準備をし、
 掃除もしておくか…」

そう言って徐<おもむろ>に
地面に膝をつき手をおくと、
そこから巨大で恐ろしげなモノが花開きます。

「この現実には……、
 残すに値するものは何もない。
 この世はすでに死んでいる。」

開いた花は4つ。
その全てから尾獣玉をつくりはじめます。

「あれでは土遁障壁を連合皆でやっても間に合わん…!
 数が多すぎる…!」

いくら力を合わせたとしても、
4つは数が多すぎると黄ツチも判断。
もはや打つ手はないのか――
シカマルは残された短い時間必死に考えます。

「アレを飛雷神でとばすのは一人一つが限度だ…!
 四代目とワシで2つはいけるとしても、
 他の2つは無理だ!
 兄者は…!?」

扉間の悲観的な分析――。
ここは柱間の協力も欲しいところです。


2.合わせる拳(2)

「マダラちょい待たぬか!
 お前の仲間が…」

交戦中のマダラはしかし、
柱間の言葉に聞く耳を持ちません。

「オレ達は穢土転生だ。
 気にすることはない!!
 このまま続ける!!」

木龍と須佐能乎の衝突――
一切の隙を与えてはくれません。

「皆の者。諦めるな。オレもおる!!
 玉の軌道さえ変えればよいのだ!!
 火影達も手を打ち海の外へはじく!!
 皆は土遁の壁を頼む!
 オレは樹海降誕でアレを海へ打ち上げ、導く!」

そんな中でも皆に呼び掛ける柱間。

「そうはさせん。」

しかし、オビトは、六本の楔を立て、
自分のまわりの戦闘エリアを
あの影級の忍が四人いてやっとという《四赤陽陣》を
軽々超える強固な《六赤陽陣》にて封ずるのです。

「…皆を結界で閉じ込め、
 尾獣玉を外へはじけなくしたのか…。」

すべての連合の忍たちは結界の中で、
ただ死を待つしかないのでしょうか――
あまりにも強力な力に為す術もなく…

「こうなったらアレは飛雷神で
 結界の外に飛ばす以外にないぞ。
 四代目…2ついけるか…!?」

頼みの綱は《飛雷神の術》による空間転移。
一人が2個以上を飛ばすしかありません。

「マーキングができない以上1つが限界です…。
 方法はたった一つ…」

しかしあまりのチャクラ量に、
ミナトといえど一人一つがやっとです。
ならば、砲台となる本体ごと
空間転移させるより他にはないでしょう。

「木ごと外へまるまる飛ばすつもりか?
 …させると思うか…。
 アンタは誰も救えない。」

オビトはそれをみすみすは許さないでしょう。
こんな絶望的な状況下、
ナルトはミナトに拳を突き出します。

「父ちゃん…。
 うまくいくか分かんねーけど、考えがあんだ…。
 拳を合わせてくれっか。」

言われるがままに拳を突き合わせるミナト。

「ようワシの半身。元気してたかよ?
 ちょいとお前のチャクラを分けてもらえねーか?」

九尾の陽と陰が繋がります。

「自分自身に頼み事をされるとは…
 変な感じだな…。」

と陰の九喇嘛。
もちろん腹積もりはできています。
一方外界では、散々にかつての師をこき下ろすオビト。

「ナルト…。そいつは…何もできない…。
 お前の母を守れもしなかった…。己の部下も…。
 …明日が、何の日か知ってるな?
 ミナトとクシナの命日だ。
 …両親の知んだ日だ。
 …死ねば終わりだ…。この世は…。
 …いいか」

説法じみたことを言って聞かせようとする
オビトの言葉を遮るようにナルトが口を挟みます。

「そうだった……。
 なら明日は…オレの生まれた日だ。
 いいか…終わりじゃねェ…。
 オレがこの世に居る!!!
 行くぜ父ちゃん!!!」

ミナトとクシナ――
父、母が亡くなった日。
それは同時に二人の希望でもある
ナルトが生まれた日でもあるのです。
自分をこの世に生んでくれた二人のためにも、
この世を終わらさせてやることなんて
断固拒絶に決まっています。

「…オレたちのナルトは
 本当に強く大きくなったよ…。クシナ。」

息子の勇姿に思わず感けそうになりながらも、
目の前の敵を見据えるミナト。

「ああ!!」

ナルトの言葉に強く答えるミナト。
思えば今まで九尾は半分の力しか
出していなかったことになります。
全開の九尾の力を今こそ見せるときです。