621『柱間とマダラ』

1.柱間とマダラ

忍を超越した二人の戦い。
これがたった二人の人間どうしの戦いなのか、
そう思えるほどの規模に戦いの爪痕を残します。

「獣の難を喰らう…。
 木遁・榜排の術か…」

榜排<ぼうひ>とは千手観音の手に握られている
法具の一つのようですが、少し様相が違って、
木でつくられた獅子面が殻のようになり
九尾の尾獣玉をやり過ごさせた模様。

「(尾獣に須佐能乎を鎧として着させるとはの。
  マダラめ…考えよる。)」

対してマダラは、九尾にまるで鎧を纏わせるように
《須佐能乎》を変化させて待ち構えていました。

「もう主の太刀筋は読める…!」

振りかざされた《須佐能乎》によるチャクラの大剣を、
木遁による大きな木の両掌が白刃取りします。
《木遁・皆布袋の術》――
続いてわき立つように大きな木の手がいくつも出現し、
九尾を取り押さえようとしますが、
もう片方の大剣で根こそぎ薙ぎ払っていきます。
その斬撃の勢いは、山々をも切り崩してしまいます。

「(このままでは陸が無茶苦茶になる…。
  海辺に移動した方がいい…!!)」

そう判断した柱間は、
マダラと九尾を海辺の方へと誘導しようとします。

「ちょこまかと逃げるだけか柱間」

九尾の尾獣玉を須佐能乎の剣の刃で串刺しにし、
螺旋手裏剣のごとく飛ばします。
追い詰められた柱間。
《口寄せ・五重羅生門》によって、
軌道を変えることに成功はしますが、
その威力と貫通力は衰えることなく、
海を渡って向こう岸にまで被害を及ぼします。

「柱間…。
 お前と本気でやるのは久しいからな…。
 …昔とは違うのが分かったろ…。」

向こう岸にまで届くほどの力――
これは出会いから、
マダラがずっと追い続けてきた男の背中に
追いつき、追い越したことを自負するゆえの行動。

「…今までの事を…、オレ達の努力を…、
 無駄にするのかマダラ!!
 オレとお前が闘ったところで何も生まれん…。
 この戦いは…里と忍を傷付けるだけだ!」

柱間はこの戦い自体が不毛であることをマダラに訴えかけます。
幾度も繰り広げてきた千手とうちはの戦い。
それがようやく"木ノ葉の里"という形で落ち着いた――
私怨を持ち出してその有り余る力を振りかざしても、
傷付くだけで、何も残りはしない――

「オレ達のの兄弟を…、仲間を…、
 侮辱するだけぞ!!」

しかしマダラにはその想いは届きません。
弟イズナが自分に授けてくれた両眼と志。
それを無にすることはできない――

「お前に…、オレの…」

なのに理解したような口をきく柱間に、
怒りがこみ上げてきます。

「…オレはお前を殺したくない…!」

そういう柱間の言葉も、
もはや棘に触れるだけです。

「…それは、オレをいつでも殺せるってことか?」

とマダラ。

「違う!!
 オレ達は友だと…」

柱間は時にはどちらが上か争い、
時には共に戦ったマダラのことを
戦友と思いたいようです。

「オレはもう…届いたのさ。」

しかし千手に対するうちはの敵愾心、
柱間に対するマダラの劣等感、
弟イズナの想いと力、
それらを背負って臨んでいるこの戦いに、
"友情"など入る余地もありません。

「…仕方ない…」

ただただ自分の力を誇示したいとばかりに、
辺りを破壊しつくすマダラに、
柱間も腹をくくります。
《仙法・木遁・真数千手》――
尾獣である九尾すら小さく映るような、
山ほどある巨大な千手観音が現れます。

「行くぞ…マダラ!!」

その意気にマダラも負けてはいません。

「来い、柱間!!」

二人の戦いから遡り、
彼らが幼少時代の頃に場面が移ります。

「次こそ向こう岸に…」

石投げ――
川をわたって石を向こう岸まで届かせたいのですが、
どうもうまくはいかない様子のマダラ。

「気持ち少し上に投げる感じ。
 コツとしては…。」

それを横目に簡単に向こう岸まで届かせる少年が表れます。
袴姿で背格好も同じくらい。

「そんなこと…分かってる。
 オレが本気出せば届くさ…!
 つーかてめェ誰だ?」

会ったこともないのに親しげに話しかけてくる謎の少年。
マダラは怪訝な面持ちで見ます。

「今…この時点では水切りのライバルってとこか…。
 オレは届いたけど。」

こうしてマダラと柱間は初めて出会ったのです。