620『千手柱間』

週始めが忙しくなかなか思うように更新できていません...

今回の話は"柱間"がどのような人物なのか、
具象化されている部分です。
絶大な力のみを過信せず、本質を見通し、
仁徳を持つ人物像を味わいましょう。

1.千手柱間(1)

「里……、忍びとは何ぞ?
 …か…」

今一度、サスケの問いを確認するように、
柱間は呟きます。

「……同胞を殺してまで、
 己が死んでまで守ろうとする里とは、
 いったい何だ?
 こんな状況を作りあげた忍…
 それをよしとする忍とは何なんだ?
 アンタの言葉を聞いて…、
 本当の事を知ってから、自分で答えを出したい。
 木ノ葉に復讐するのか…、…それとも…。」

兄が命を賭してでも、汚名を被ってでも守ろうとしたもの。
それは弟にしてみれば、兄を奪った憎きもの。
兄の気持ちをくんでそれを大切にすべきか、
自分の気持ちにしたがって破壊するべきか、
いまはすぐには決められない――

大蛇丸…アンタは木ノ葉を一度潰そうとした…。
 初めは気まぐれだと言ったアンタの言葉を信じたが…、
 今は違うと分かる…。
 本当は何だったんだ?」

大蛇丸はサスケが自分を見透かすような言動をした事に、
少し驚きました。
かつては周りに棘をはり、その棘に触れたら、
すぐにでも反応するような子供だったのに、
いまはいったん受け入れて、
自分なりに考えてから行動するようになった――
サスケの柱間に対しての言動も、
単なる迷いでないことを理解しています。

「木ノ葉へ復讐だと!
 うちはの悪に憑かれた小僧が…
 ここでワシが……。」

木ノ葉を潰す――
その発言に殺気立つ扉間。しかし――

「扉間…」

その殺気をも打ち消してしまうような、
遥かに凄い気迫が柱間から迸ります。
思わず扉間も居竦んでしまいます。

「(…か…貫禄ハンパねェ〜〜〜〜)」

先ほどまでとは別人のような、畏怖を覚える水月

「指をおろせ…」

腕組みしながら臨戦態勢をとっていた扉間に、
ただ一言そう告げる柱間。

「分かった…
 そうチャクラを荒立てるな。
 ……兄者。」

扉間もその圧倒的なまでの迫力に、
気圧され言葉を失い、ただただ従うのみです。
その場にいた誰もが生唾を呑みます。
次の瞬間――

「ガハハハ!!
 いやすまんすまん!!」

そう言って大笑いして見せる柱間。
張りつめた場を解きほぐそうとします。
ミナトもヒルゼンも胸をなで下ろします。

2.千手柱間(2)

「しかし……、よい兄を持った。サスケとやら。
 オレ以上の忍ぞ。」

柱間はイタチの事に感嘆した旨を、
サスケに率直に伝えます。

「…里について話してやってもよいが、
 ちと長くなるぞ。」

と悠長に構えようとする柱間に、

「できれば早急にこの子の聞きたい事を
 話してあげて下さい。
 あまり時間も無いですから。

と時間を気にする大蛇丸の言動を

「時間がない?」

聞き逃さなかったようにヒルゼンが訊き返します。

「今は戦争中です。
 うちはマダラが復活し、
 この世の忍を消すつもりのようです。」

と戦争のことを持ち出した大蛇丸
先ほどまで戦争には興味はない、
と嘯いていた様相の大蛇丸ですが、
それであれば、なおさら急いで答えを出すことに意味は無い。
どういった風の吹き回しでしょうか――。
大蛇丸にもこの戦争を終わらせることに"意味"を持っていそうです。
さて、このような事態を知れば、
今は昔とはいえ、火影と呼ばれていた四人が、
動かずにいられるわけはありません。

「いつの世も戦いか…。」

そう言って頭を抱えるような素振りを見せる柱間。

「確かにここから2時の方向…。
 …何やら強いチャクラを感じる…!」

扉間はただごとならぬチャクラの奔流を感じます。

「ならワシらは戦場へ向かう!!」

ヒルゼンは今にもこの場を立ち去り、
戦場に駆け付けたい気持ちに駆られます。

「アナタ方は私の穢土転生の術の管理下にあり、
 その行動は制限される…。
 戦場へ向かいたいなら話を済ませてからです。

ヒルゼンを制します。
しかし、逆説的に、
サスケの話を済ませれば、
戦場へ赴くのを止めはしない――ということです。

「…私はこの子に付きます。
 サスケ君が納得しなければ、
 アナタ達を使ってここ木ノ葉を
 潰すことになりかねませんよ。
 …このタイミングで…。」

と脅しをかけるように先代火影たちを制します。

大蛇丸とやら、
 お前何か勘違いをしておる…。
 前回よりも穢土転生の術の精度を
 上げてしまった事が仇となったな。
 ワシらが本来の力に近いまま、
 この世に転生された今回…、
 貴様ごときの穢土転生に縛られるワシではないわ。
 そもそもこの術を考案したのはこのワシよ…。」

と無理矢理穢土転生の束縛を振りほどこうとする扉間。
術の精度があがった分、転生されたときの力は、
おそらく生前のものとほぼ変化ない程度のものと
なっていることを感じているからの発言でしょう。
逆に木ノ葉崩し時は術の錬度が低かった分、
柱間や扉間も全力は出せなかった、という事になります。

「…兄者、こうなっては致し方ないぞ。
 ワシは動く!」

扉間がそう言った次の瞬間、
まったく体が動かなくなるのを感じます。

「猿飛…、
 かなりの忍を育てたものだ。」

と感心したように柱間は言います。

「忍の神にほめていただけて…光栄です。」

大蛇丸

「ガハハハ!!
 オレの細胞を取り込み縛る力を上げておるのよ。
 扉間…、お前少し勘が鈍っておるぞ。」

と扉間を軽く諌めるかのように
柱間は言います。
しかし涼しい顔をしてはいますが、
柱間だけはいつでも呪縛を振り切って、
意のままにできることを大蛇丸は知っています。

大蛇丸とやら心配するな。
 その子を縛っておるわだかまり
 解いてやる方を先としようぞ。」

緊張の面持ちを見せる大蛇丸に柱間は笑いかけます。

「うちはの子がオレの話を聞き、
 どう選択するかは分からぬが、
 この子を今無視すれば後、
 必ず次のマダラとなろうぞ。
 それでは戦争が終り、
 勝ったとしても意味が無いの。」

切迫した事態に急かされることなく、
また己の絶大的な力に感<かま>けて驕ることなく
本質を見抜き、自らが現在為せる最善の行動を選択する柱間。
さすが忍の神と呼ばれるだけあります。

「さて…ではどこから話すべきかの…
 そうよの……。
 まず里と忍について語るには、
 うちはと千手についてからだの。」

そう言って、終末の谷での激戦を思い出す柱間。
満月の夜。
九尾と万華鏡写輪眼の術《須佐能乎》を
駆使して戦うマダラに対して、
《木遁・木龍の術》、《木遁・木人の術》と
己の木遁の術を最大限に駆使して応戦する柱間。
二人の戦いは千手とうちはの激突でもあった――
過去を振り返り、いま感じることを、
率直にサスケに語ろうとします。