639『襲』

1.襲(1)

柱間・扉間をいとも容易く突破したオビト。
そのままナルトたちがいる方へ向かってきます。

「サル! 四代目! 飛べ!!」

ヒルゼンとミナトに合図を送る扉間。
どうやら扉間はすれ違いざまに
オビトに起爆札を仕掛けていたようです。

「(これは二代目様の手順!!)」

すぐに身を退いたヒルゼン。

「兄者!!」

弟が仕掛けたのを兄も心得ています。

「うむ!」

木遁で束縛し、うまく間合いを確保した後、

「ミナトよ!
 離れるのじゃ!」

ヒルゼンの合図とともに

「二代目様は手が早い!」

ナルトやサスケたち共々《飛雷神の術》で
ミナトもその場を離れます。

「やはりこの程度では死なんか…。
 穢土転生の術はワシが作った。
 それに合った戦術もな…。
 己の体でやるのは初めてだが、こうやるのだ。」

二代目火影・扉間が作り上げた禁術《穢土転生の術》。
さらに、その先。

「(出るか…!
  二代目様考案の…互条起爆札!!)」

それは起爆札が起爆札を口寄せし続ける、
口寄せの禁忌を穢土転生という状態で撥ね退けた
一点集中して爆破攻撃をしかける《互条起爆札》という術。
術に派手さはないものの、
確かな破壊力と緻密に練られたものを感じさせる術です。

「十尾の人柱力だろうが何だろうが、
 火影様達が戦っておられる。」
「我々も行くぞ!!」

士気が高まる忍連合軍。

「焦るな今は――」

功を焦っては命がない。
ダルイは止めます。

「皆の者!
 うかつに近づいてはならん!!」

柱間も声を張り上げ、
冷静になるように呼び掛けます。
術が終わり、煙が徐々に晴れていきます。
何事もなかったように姿を見せるオビト。

「(速い上に堅い…。
  そして一瞬で塵にする攻撃!
  オオノキの塵遁に似ているが…、
  形が流動的で攻防に応じて変化し、
  常に保持できる。
  おそらく4つ以上の性質変化を組み合わせている…!
  血継限界…、血継淘汰のさらに上…
  だが形態変化には持続時間がありそうだの。)」

己の穢土転生の体を活かし、
オビトの不気味な攻撃を検証する
術のプロフェッサー・ヒルゼン。
尾獣玉のようなものが常にオビトにまとわりついて、
これが傘状に変化したり、槍状に変化したり
自在になることで様々なものを塵芥へとしてしまう術。
それは塵遁に似ていながら
さらに上位の術であると、ヒルゼンは見出しました。

2.襲(2)

「父ちゃん!
 三代目のじいちゃんも父ちゃんの術で
 飛ばせなかったのかよ!」

保護者が出てくると、急に頼りなくなるナルト。

「オレ自身かオレのチャクラが
 間接的にでも触れていなければ飛ばせない……。」

とミナトは説明しますが、
最も言いたい事はサスケが続けて言います。

「喚くなナルト…。
 火影達は穢土転生だ…。
 死なないのを分かっていて、
 敵の出方や能力を分析するため、
 あえて突っ込んでいったんだ。
 …あの戦い方を見て心配より分析しろ。」

専らその通り。
ミナトもサスケを評価しながら頷きます。

「穢土転生が回復するまでには、
 少し時間がかかるけどね。」

一方で、柱間も事態の深刻さを考慮し、
もう一度攻撃を仕掛けにいきます。

「こうなってはやはりワシが…」

その進路に立ちふさがるように

「もう待ったは無しだ、柱間!」

といって割り込むマダラ。
柱間は何も言わず覚悟を決め、
マダラの方を見すえます。

 「まずはオレが出てスキを作る!」

さて、今度はミナトが様子を見るために、
オビトへ攻撃を仕掛けにいきます。
こちらに向かってくるオビトですが、
突如体が膨れ上がり、墜落してしまいます。

「(そうか…。人柱力としてまだ、
 うまく十尾がなじんでないんだ!
 …この状況のうちに…倒す!
 オリジナルもここに――)」

死に体に見えるオビト。
今こそが好機。ミナトは急ぎます。

「久しぶりの螺旋閃光超輪舞吼参式をやる!」

影分身と自信が三本ずつクナイを用意します。
そして、いざ攻撃。その時――。

「ガマ吉。下だ!!」

攻撃を感知したナルト。
ガマ吉に飛ぶように指示。
間一髪、オビトからの攻撃をかわします。

「下を通って…!?
 上半身だけを……!!」

まさかの地中からの奇襲攻撃。
不意をつかれてミナトも、
唖然とした表情で振り返ります。
容赦なく宙空のナルトを狙って
槍状にした攻撃チャクラが飛んでいきます。
それを《須佐能乎》の腕が食い止めます。

「サスケ…」

共に肩を並べて戦っていたものの、
実際に助けられたことで、
昔の第七班を思い起こさざるをえないナルト。

「…お前じゃない……。
 過去を切るのは……オレだ。」

そう言って《万華鏡写輪眼》を力強く見開くサスケ。
以前のようにその言葉が指し示す"過去"には、
ナルトは入っていませんでした。
自らの意志でナルトを守ったのです。
しかし間髪入れずに猛烈なスピードで
ナルトを掴みにかかったオビト。

「間に合え!!」

不意を突かれ続けていますが、
たとえそうだとしても、
今度こそは攻撃を成功させなくてはなりません。
息子の為に、ミナトは飛びます!