私信ですが、非常に多忙な時期に入ってまいりました。
記事が遅れまして申し訳ありません。
掲示板の方の返信も滞っており、重ね重ね申し訳ありません。

578『絶望の弱点』

戦争編も長く、局面ごとに区切ってきてもう第十局目に突入しました。
扉絵に告知されているように、

  • ナルト、ビー、カカシ、ガイ VS 仮面の男
  • マダラ VS 五影
  • カブト VS サスケ、イタチ

に焦点があてられています。
<トビ>と表記せず<仮面の男>と表記してあります。

1.絶望の弱点(1)

「追いついたぞ!
 こんなところでいったい…」

イタチの後を追ってきたサスケ。
イタチの他にもう一人何ものかが佇んでいるのを見つけます。

大蛇丸……なのか!?」

大蛇丸特有の蛇がサスケを睨んでいます。

「クク…少し違う…。」

聞き覚えのある声。
サスケはすぐにカブトだと分かります。

「戦争協力の見返りがこのタイミングで、
 自らボクの前に来ちゃうとはね…。
 ラッキーだよ…。」

願ってもない好機に奮い立つかのように喋りだすカブト。

「!? どういう意味だ?
 なぜお前達がこんなところで…。」

軟禁に近い状況にあったサスケには現状は理解できていません。
カブトとトビが協力関係にあることなど、特に。

「ややこしい状況だよね…。
 ボクが簡単に説明しようか…。」

そう悠長に構えるカブトに対して、
どんな隙も見逃さないとばかりに、

「説明してろ…。そのスキに穢土転生は止めさせてもらう。」

とイタチ。

「この術に弱点は無い…。リスクもない…。
 イタチ…。君の方にはそれを説明したいんだけど…。
 とにかく、君が動くにもサスケくんが、
 おとなしくしてないと思うけどね…。
 焦ると止められるものも止められないかもよ…。逆に…。」

イタチの実力はもちろん理解しています。
しかし顕示欲の強いカブトは、
戦況や穢土転生の術の素晴らしさを説明せずにはいられないようです。


一方、マダラと応戦する五影たち。

「さて…。次はどいつにするかな。」

そう言ってマダラは須佐能乎の剣で貫かれた綱手を一瞥します。
そのときマダラも予想だにしなかった光景がその眼に映ります。
綱手はまだやられていませんでした。
手負いとは思えないほどの暴れっぷりを見せつける綱手
自分を貫く須佐能乎のチャクラ塊を叩き割り、引き抜くと、
その引き抜いた一部を恐ろしい勢いでマダラに向かって投げつけます。
投げつけられたチャクラ塊を同じく須佐能乎のチャクラ塊で防ぎ、
マダラはまた綱手を岩壁に叩きつけますが、手ごたえを感じません。
《百豪の術》は綱手を常に驚異的な回復状態にしていて、
ほとんど致命的なダメージも印も結ばず一瞬にして回復してしまいます。

「印を使わぬ再生体…。そうか。
 それが第四項のお前の術の本当の能力という訳か…。
 柱間の能力と同じだな…。」

どうやら《百豪の術》は柱間の能力でもあったようです。
投げつけられたチャクラ塊を吸収しながら、
柱間の片鱗を綱手からようやく見出したマダラ。

「これでスキをつくったつもりだったんだがな…。」

やはり甘かったかと言いたそうに綱手はもらします。

「オレの術でオレを殺れるか。」

と余裕綽々の様子のマダラですが、
綱手の意図を汲んでこの隙をオオノキはもちろん見逃しませんでした。

「ワシの術なら殺れる!」

背後から《塵遁・限界剥離の術》を放ちます。

「ボケたかオオノキ。輪廻眼は全ての術を吸収する…。
 オレにその手の忍術は通じない。
 オレを殺るなら直に殴り倒し封印するしかないと
 分かっているだろう。」

死ぬ少し前に万華鏡写輪眼を超えて輪廻眼に辿り着いたマダラですが、
その効力を熟知しているといった様子です。
ペインの術である《封術吸引》も当然範疇としています。
規模も桁外れで、塵遁ですら吸収してしまいます。
ただし《封術吸引》のためか、《須佐能乎》が解除されています。

「さっきはワシの塵遁でお前の左肩をかすめた…。
 これで殺れない訳ではない…」

と豪語するオオノキですが、

「あれか…。あれは柱間の顔をお前らに見せつけたくてな。
 お前らの志気を下げてやるつもりだったんだが、
 …逆に上げてしまったようだな。」

態とかすめさせただけ、とマダラは語ります。

「一つ質問をする…。
 木遁分身で私達五人を出し抜いたのには変わりはないが、
 見方を変えれば、
 分身をして身代わりを出さなければいけないほど、
 追いつめられたとも言える…。違うか?」

とマダラの余裕の裏にある現実を指摘する綱手

「さすがに五対一だからな…。」

やや間をあけて、マダラは素直に答えます。
士気をあげるためにも、
マダラに自分たちが通用していることを示し、
全くの余裕というわけでないことを、
綱手は証明してみせたということになります。

「五対一でも勝たなくてはならないの!
 卑怯とは言わないで下さいよ…。
 それだけアナタの強さを認めてあげてるってことですから。
 アナタはうちはマダラです。」

ややマダラの力に呑まれている感があったメイですが、
綱手の問答もあり、手ごたえを確信しました。
やや強気の発言で自らを奮い立たせます。

「卑怯とは言わぬ。
 五人で一人…。遊ぶにはちょうどいい数だ。」

そう言って《多重木遁分身の術》で分身体を二十五体つくり、
各影に五体ずつつけます。
マダラとしては自分の状況をそっくりそのままお返しした感じです。
さすがにマダラが多重分身してくるとは考えておらず、
影と言えど、目を丸くして言葉に詰まります。

「これで五対一だ。
 …卑怯とはぬかすなよ。お前らは五影だ。
 さて…一つ質問をする。
 そいつら分身が須佐能乎を使う、使わない…。
 どちらがいい?」

皮肉めいた言い方でそう尋ねるマダラ。
五影たちを弄ぶかのようです。

2.絶望の弱点(2)

場面は再びサスケ、イタチ、カブトの三つ巴の状況に移ります。

「で、君はうちは一族の仇であるイタチをまた倒したい。
 ボクがこの世に転生させちゃったからね。
 つまりサスケくんとボクにとって、
 今のイタチは邪魔な存在ということになるよね。」

サスケが目の前に現れた状況は好ましいといえ、
与し難いイタチも同時に存在するというリスクを抱えるカブト。
状況としては最悪サスケさえ手に入れれば、
トビとの協力関係を断ち、穢土転生などどうなろうと知ったことではないはずです。
だから穢土転生をちらつかせてイタチを抑えておきつつ、
利益だけをかすめ取る方法を狡猾に考えているはずです。

「…どうだろう。ここは一つ協力して、
 このイタチを倒そうじゃないか?
 同じ蛇の力を持ち、同じ師を…」

サスケを懐柔するように話しかけるカブトですが、

「アレを師と呼ぶ気は無い…。
 それにお前は何も知らないようだな。
 オレは今イタチと話をする為にここまで追って来た。」

サスケにはカブトに味方する気はさらさらないようです。

「なら君は今…どっちの味方だい?」

とのカブトの言葉にサスケは手裏剣を以て答えます。
それを、余計な手出しはするなと言わんばかりに、イタチは弾き落とします。

「なぜだ!? こいつは大蛇丸と同じ…。
 だとしたらオレの敵だ!
 そして今はアンタの敵でもあるんだろ!」

とサスケ。
サスケがはっきりと"大蛇丸は敵である"と言葉にしたことに、
カブトは不穏な笑みを浮かべています。

「…分かった。話は後でしてやる…。
 代わりにまずはこいつを倒す…。ただし殺すな。」

イタチはサスケを諭すように言います。

「穢土転生の術者を殺してしまっては術は永久に解けない。
 まずはこいつをオレの月読に掛け、
 その術を止める方法を聞き出す。
 …そして月読にはめたままこいつを操り、
 オレがこの術を解く!」

イタチらしくなく今からする行動を口にします。
それはサスケをとどめておくためですが、
カブトに全容が知れることを気にするより、
サスケを抑えておく方がはるかに動きやすいと考えたからでしょう。

「…流暢にボクの倒し方を喋ってくれちゃって…。
 口ほどうまくいくといいけど、
 この術には弱点もリスクもないって、さっき…」

無駄だと言いたげなカブトの言葉を遮って、
イタチは言い放ちます。

「どんな術にも弱点となる穴がある。
 この術の弱点とリスクは…このオレの存在だ!」

万華鏡写輪眼がカブトを睨みつけます。
普通では破れない穢土転生の術を、
転生状態を保ったまま、なおかつ術者の操り状態から逃れたイタチの存在。
先ほどまで薄笑いをしていたカブトも真剣な表情になります。

「…イタチ…。アンタはいつもオレに、
 今度だ、後でだ、と嘘をつき、あげく死んだ…。
 だから今度こそ――約束を守ってもらう!」

イタチの為すことを承諾したサスケ。

「性格は死ぬまで変わらないが…、オレは一度死んでる…。
 そのつもりだ。」

一方でサスケとの約束を承諾したイタチ。

「兄弟で仲間ハズレですか。面白い。」

大蛇丸を師と仰ぎ、狂信しているカブトにとって、
サスケから大蛇丸を引きはがし十拳の剣に封印したイタチは、
いわば師の仇というわけでもあります。
とことん応戦するといった感のカブト。
いま新しい戦いの幕が上がりました。。