先週分はアップロードのし忘れでした。

4/7付の記事にしてあります。

626『柱間とマダラ其ノ弐』

1.柱間とマダラ其ノ弐(1)

「本当の夢って何だ…?
 オレたちの目指したモンは
 この里にあるんだろーが!」

柱間が見ているものとマダラが見ているものと
もうこの頃から別のものだったのですね。

「お前は…見えないのさ…。
 さらにこの先が…。先の夢が。」

夢か現か。
マダラの理想は夢の中にあるようです。

「だったら…、その先の夢ってのを教えてくれ。
 この里の夢とつながるなら…
 導き役としてお前の力が必要だ…。
 上役としても…。そして…友としても。」

柱間が見ているものは現。
彼が捉える夢とは達成すべき目標。
マダラのいう夢は"幻"にあるのです。

「フッ…。つながりなどない。
 そしてお前には決して届かない。
 オレの後を追いかけても無駄だ…。
 お前なら知ってるだろ…。
 オレの後ろに立てる奴など居ないと。」

そう言って再びマダラは柱間の前から去るのです。
握ったはずの手はいつしか遠く。

「そう言ってマダラは里を出た…。
 2人で届いた場所…。
 マダラとオレが望んだ里に
 マダラは居なくなった。」

柱間にとっては、"里"こそ実現したかった形のはず。
マダラと道を違える理由など理解できなかったかもしれません。

「だが世界ではかつての対立したライバル
 うちはと千手が手を組みつくり上げた
 忍連合体である里システムを
 皆、高く評価して真似ていった。
 マダラとオレの夢が叶ったのだ。
 忍の子供たちも戦うことではなく、
 学ぶ事…遊ぶ事を知り…、
 酒の味を知るまで生きていけるようになる…。」

仇敵同士が手を組む。
それは一段と大きな勢力への変貌――
対抗するには自分たちも力をつけるしかありません。
こうして小さな"一族"だったコミュニティは、
いつしか大きな"里"という連合体へ変わっていくのです。
そしてそれはかつての戦乱のときには見られなかった
"平和"な刻<とき>を生み出したのです。
それこそ、柱間が目指したものだった。

「だがマダラはかつての夢を潰すかの如く、
 木ノ葉の里を襲って来た。」

しかしそれでも、
マダラが目指す高みはそこにはなかった。
柱間がつくりあげたものを否定せんと、
再び柱間に挑むのです。

2.柱間とマダラ其ノ弐(2)

辺りをめちゃくちゃにするほどの激闘――
柱間は《頂上化仏》により
九尾がまとった《須佐能乎》の鎧を引っ剥がします。
そして畳み掛けるように尾獣を抑えつける
《廓庵入鄽垂手》が木龍から飛び出します。
九尾の額を抑えつける木遁の掌は、
九尾を簡単に沈静化させます。
九尾を封じ込められたマダラは
万華鏡写輪眼を駆使し応戦します。
いつしか満月が輝く頃となっていました。

「今度は…お前が届かないのさ。」

お互いに手の内を知り尽くしているとはいえ、
互いの力を全て出し切っての激闘は
もはや立つ事すら儘ならない披露困憊状態にします。
マダラに至っては写輪眼状態を維持することもできません。
死力を尽くして、柱間との最後の斬り合いにいきます。

「立っているのはオレだ…。
 …あの時とは逆だな。」

地面に突っ伏すように倒れ込む柱間を見て、
マダラは余裕の表情を見せます。

「くっ……。
 …届いたばかりの夢を…
 守りたいんだ…オレは。
 …これ以上は……」

と柱間。しかし言葉を遮るように、

「…ずいぶん落ち込んで見えるぞ…柱間。
 今度こそ開き直りではないか…?」

とこぼします。
マダラを友として
築き上げ守っていきたかった里とその未来。
しかし柱間は決意します。
どちらがより重いものか、守るべきものか――
選択しなければならなかったのです。

「…木遁分身…。
 …オレが後ろを…とられるとは…。」

それは友との別れ。
マダラの背中を白刃が貫きます。

「オレはオレたちの…
 イヤ、オレの里を守る…。
 何があろうとも。
 里を守ることが何より人を…
 忍を、子供を守ることになると
 オレは今でも信じる…!
 たとえそれが…友であろうと、兄弟であろうと…、
 里に仇なす者は許さぬ。」

それが皆のためであると信じて――

「…変わったな…柱間。
 …本末転倒だな…。
 それが…里の…闇になる…いずれ…」

そう言ってようやく斃れたマダラ。
柱間の実力と決意の固さを認めることはあっても、
理想を共有できることはなかった。
何かを守ろうとすれば何かを犠牲にする。
その理<ことわり>が続く以上、
敵同士が腑を見せ合うことはできないはずだ、と。

「オレはこの時覚悟を決めた。
 今を見守るために耐え忍ぶ覚悟を、だ。」

しかし現を見る柱間は、
道を違えた友を殺めてまで、
築き上げたものを守ることにしました。
友の、何人もの忍の犠牲の上に成り立つものを
守り続けるための終わりなき戦い――
それを耐え忍ぶことを決意したのです。
完璧とはいえないけれども、
明らかに昔よりは一歩前進したことを
自負していたから決意できたのだと思います。

「そうして…
 マダラとオレとの戦いは終った。」

一方でマダラは完璧を求めすぎて、
結局今ある"現実"を破壊、否定しようとした――
終末の谷での友との戦いに、
柱間はひどく虚しさを覚えたことでしょう。

「…今、マダラがどう復活したのかは分からぬが…、
 オレは確実に友を殺した…。…里の為に。
 そう…里とは――、
 始まりに…マダラとオレが望んだ里とは…、
 一族と一族をつなげるものだった。
 無秩序から秩序を形づくり、
 それを保つための大切な要だった。
 子供たちを守り無駄な争いを避け…、
 平和を実現するものだった。
 だが…君の兄…、イタチが背負ったような
 膿を生み出してしまった。
 マダラの言った事は正しかったのかも知れん…。
 この状況を見すえていたのかも知れん…。
 …この状況を作りあげてしまった忍とはオレだ。
 そしてそれをよしとした忍もオレでしかない…。
 …そして思う…。
 忍とは目標に向け耐え忍ぶ者だと…。
 ただ何を目標に置くかで忍も変わる…。
 マダラとオレのように…。」

と話を締めくくった柱間。
平和を目指しても結局のところ、
戦いは終わらない――
それを耐え忍び次なる目標を立て、
今の状況を昔に比べてより良くしていく――
それこそが今も昔も変わらぬ真理であり、
後代というつながりに託されたもの。
サスケたちが考えていかねばならぬことのはずです。