新年あけましておめでとうございます。
本年も『NARUTO-ナルト-』に触れて、
考えさせられたこと、勉強したこと、思いの丈(!?)を
去年の反省も踏まえつつ、
つらつらと書きあげていければと考えております。
例年通り長文駄文ですが楽しんでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。


さてさて、『NARUTO-ナルト-』はついに大詰めに入りました。
最大のテーマの一つになっている"つながり"
その本当の意味がとうとうナルト本編で語られます。
ここはおそらく重要中の重要回といえるでしょう。
いろいろ散りばめられてきたストーリーが
ここに結集していると私は感じています。

615『繋がれるもの』

1.繋がれるもの(1)

「"仲間は絶対、殺させやしない"
 と言ったお前のその言葉…、
 さあ…辺りを見て…、
 もう一度、言ってみろ。」

残酷な現実をナルトに突きつけるようにして、
オビトは言います。
ナルトの眼の前には、
忍連合の仲間たちが、無数に横たわっています。
ある者は苦悶の表情を浮かべて天を仰ぎ、
ある者は一瞬の出来事に気付かぬまま地に伏せ、
血の湖が岩肌を赤く染めています。
その光景に言葉を失うナルト。
自分の信念を、自分の言葉を忘れかけます。

「もう一度言ってみろと言っているんだ!!
 …冷たくなっていく仲間に触れながら、
 実感しろ…。死を!」

これでもかというくらいオビトは
現実の残酷さをナルトに叩きつけます。
ナルトの言葉が、希望に輝かせた目が、
何もわかっていない愚鈍さが、
現実を知らない幼稚さが、
オビトにとって辟易とするのでしょう。

「これからコレが続く…。
 お前の軽い言葉も、理念も偽りになる。
 理想や希望を語った結果がコレだ。
 これが現実なんだ。

オビトはなおも続けます。
この世界には絶望しかない。
"死"という絶対的な事象が、
人間の矮小な想いなど粉微塵にしてしまう――

「…ナルト…この現実に何がある!?
 父も母もいない…師の自来也も…。
 そしてお前が対立する限り、
 これから仲間もそうやって次々いなくなる…。
 お前を認める者が存在しない世界だ…。
 その先に待っているのは…
 お前もよく知る最も恐ろしい…孤独だ!

死という事象によって引き裂かれることで、
残された者には何が残るのか――
希望などありはしない。
そこにはただただ悲しみと憎しみと絶望があるのみ。
現実はそうやって人を孤独へと追いやっていく――

「現実に居る必要がどこにある?
 いいかげんこっちへ来い! ナルト。」

そうして手を差し出すように語るオビト。
思わず自分の手を見るようにして、
手をかざしてしまったナルト。
それは無意識にオビトの言葉を
認めてしまっている自分がいたからだったのかもしれません。
その様子を見て、傍らにいたヒナタが
ナルトの頬を叩きます。
我を忘れていたナルトは、
ハッとヒナタの方を見ます。
真っすぐにナルトの方を見つめるヒナタの眼差し。

「さっき…ネジ兄さんが言った。
 "ナルトくんの命は…一つじゃない"って意味…
 分かる…?」

ヒナタは唖然とした様子のナルトに語りかけます。

「仲間は絶対殺させない。
 その言葉も信念も偽りじゃない…!
 それを胸にちゃんとやってのけたの……
 ネジ兄さんは…!!」

何も瞞<まやか>しじゃない。
ヒナタは強く言います。
ネジの想いは矛盾していない。
自ら選択して、
その信念を貫いて立派に生き抜いた――
その先に待ち受けるのが死であっても。

「ナルトくんだけじゃない…。
 皆がそうやってその言葉…想いと同じものを胸に、
 お互いに命を繋ぎあってる
 …だから仲間なの。
 その言葉と想いをみんなが諦め、棄ててしまったら、
 ネジ兄さんのした事も無駄になる…。
 それこそ本当に仲間を殺すことになる…!
 もう仲間じゃなくなってしまう。…そう思うの。」

その言葉が、信念が、
"死"によって報われていないように見えても、
一つ一つは繋がっている。
"仲間"という意味、重み。
そしてそれが"孤独ではない"ということ。

「…だから…私と一緒に立とうナルトくん…。
 まっすぐ自分の言葉を曲げない。
 …私もそれが忍道だから!」

つながっていること――
それこそ自分の言葉を、
信念を曲げていないことの答え。
自分の言い回しをヒナタに言われて、
ナルトも忘れかけていた我を取り戻していきます。

2.繋がれるもの(2)

「一つじゃねェーだろーが!
 ワシもいるの忘れんな!!」

九尾が内側から語りかけてきます。

「…分かってる。
 オレだって繋がりは…
 仲間は絶対棄てたかねェ…!
 でも…実際ネジは…。」

と落胆するように語るナルトを見て、
業を煮やしたように九尾は言います。

「それ以上グダグダ言ってみろ!
 ぶんなぐって今度こそお前の体をいただくぞ、コラ!」

と、九尾がどれだけ親身になっているか分かります(笑)

「これも忘れたか!?
 てめーの父と母はお前が生まれて、
 すぐネジと同じことをした!
 お前に仇であるワシまで封印し、
 未来を託して死んだ。
 てめーの命は生まれた時からすでに、
 二つの命で繋がれてんだよ!!

と九尾。
そう――"つながり"の本当の意味。
この世に生を受けたことこそ、
すでにつながりの中にあるのです。
命とはまさにつながり
今、生きていることこそ、
それはつながりの中にあること。
つながりの形はいつも一つとは限りません。
必ずしも"仲間"なんて甘い意味ではないでしょう。
"食物連鎖"の一環であったりもするでしょう。
でも、そこに存在するということ自体、
すでに意味を持っています。
そして"存在した"というだけでは"生きた"ことにならない。
現実は必ず生あるものに"死"という終止符を打ちます。
どんな形であるにせよ、
それは残されたものには受け入れがたいものですが、
生あったものは必ず残されるものへ何らかの"もの"を残します。
厚情の財産だったり、優しき強い想いであったり、
形があってもなくともそれは残されたものに
この残酷な現実を生き抜く強さを与えてくれます。
託す者と託される物。
形あるものは朽ちていく――それが現実だと言うのなら、
託された者は、その現実を受け止め、
それを託した者が"生き抜いた"ことを示していく必要があります。
それを為せることこそまさに本当の意味での"つながり"。
"生き様は死に様"とは"つながり"に他ならないのです。
ナルトも母クシナ、父ミナトに未来を託されました。
その想いを、父と母が在ったことを否定しないために、
ナルトは立ち上がらなければいけません。

「(動かず、ナルトの出方を窺うか…
  ずいぶん気になるようだな。)」

オビトの様子を窺うマダラ。
かつてこの現実に絶望したように、
オビトにもそれを感じます。

「もういい…」

とオビト。
十尾に尾獣玉を足下に向けて放たせる気です。

「…!! 焦るな…!
 それでは十尾が傷つく上、お前も…!」

と今度は少しマダラが慎重になっています。

「少々構わん!
 十尾の表皮は強い!」

少々自爆気味の攻撃ですが、
絶対的な力によって何もできない現実を、
ナルトに知らしめてやる必要があると考えたようです。
逸るオビトは、早速尾獣玉を練り始めます。
そうはさせまいとビー。
サイの墨で描かれた鷲から十尾の方へ飛び移り、尾獣化。
至近距離で尾獣玉を放ち、
十尾が練り溜めている尾獣玉を誘爆させます。
誘爆のダメージと十尾に弾かれるダメージを受けながらも、
なんとか無事だったビー。
心配するオモイ、カルイに

「心配無用♪
 連合を守るオレなりのクロウ♪」

と言ってのけます。
彼らが時間をつくっている間に、
ナルトはようやく自分の信念と言葉を取り戻します。

「(そうだ…。父ちゃんと母ちゃんだけじゃねェ…。
  そうだろ…今までだって。)」

頬に添えられたヒナタの手をとり、
ナルトは立ち上がります。
父や母だけじゃない…
自分に託してくれたみんなの命と想い――
その重みはよく理解っている――

「ヒナタ…。
 ありがとう!」

そう言って、ヒナタの手を強く握りしめます。

「(オレの命は一つじゃねェ…!!)」

つながり――
いつだって、自分が立っていられるのは、
立ち向かっていける、
自分を奮い立たせてくれる
"つながり"があるから――

「…お前がオレの横にいてくれたおかげだ…。」

傍らにいてくれるから。
信念を思い出させてくれるから。
一緒に戦ってくれるから。

「(そして…ネジ…
  ありがとうだってばよ…)」

そんなみんながいてくれたことに感謝しながら、
"未来"を見据えるようなナルト。

「ナルトくんの手って…
 大きくて…強くて…、
 …何より…とっても安心する……。」

愛する人を傍に感じながら、
ヒナタも今一度奮い立ちます。

「行くぞヒナタ!!」
「う…うん…!!」

残酷な現実を突きつけられ
オビトが絶望に堕ちたのに、
ナルトが堕ちなかった決定的な差こそ、
このつながれた手の中にあります。
ナルトにとっては幸運、
オビトにとっては不運、
そういう見方もできるでしょうが、
思えばナルトも"孤独"を味わっているのです。
突きつけられた現実に"諦めなかった"ことが、
このような形を迎えた最大の理由かもしれません。