今回も重要回だっただけに、
早く記事を書きたかったのですが、
ずいぶん遅くなってしまいました…
次号が出る前に、もう一度、
見つめなおしていただければ幸いですm(_ _)m

616『忍び舞う者たち』

扉絵には武者姿のナルト、サスケ、サクラ。
それぞれが戦乱の世の中を懸命に戦う様を描いているようです。
忍び耐える――
それはただ我慢するだけのことではありません。
誰かの為に何かを為したい、
あるいは他の誰かが自分の為に何かを為した、
そういった"仲間"たちを胸にとどめておくということ。
それを知り、強く成長して、一歩を踏み出せるか否か――
ナルトたちが試されています。

1.忍び舞う者たち(1)

「(ここにいる全員…感知タイプじゃない。
  にも関わらず、チャクラを感じてる。
  …このチャクラは…。)」

遠くにいるサスケ一行に異質の何かを感じさせるチャクラ。
それはナルトから放たれる九尾のチャクラでした。

「(少し気になっているようね…。
  ナルトくんが…。)」

サスケはその正体にそれとなく気づいていても、
前を向き自分の道を歩もうとします。
それを見守る大蛇丸
彼らの目的地も、もうそろそろでしょう。


「うまくワシのチャクラを変化させ渡せたな…。ナルト…。」

一方、戦場ではナルトが回復した九尾のチャクラを、
ヒナタに分配します。

「コツは分かった……。
 一緒に頼むぜ、九喇嘛!」

それは九尾のチャクラの性質を分析したシカクのアイデア
人柱力でない者たちにも、
九尾のチャクラが力となって身に纏いつきます。

「ずいぶん待たせちまったからな…。
 影分身も少々大丈夫だ。」

と九尾。

「す…すごい。
 こんなチャクラをナルトくんは…」

ヒナタは分配された九尾のチャクラを肌で感じ、
ナルトの凄さを実感するように言います。
ナルトは多重影分身によって、ヒナタだけでなく、
忍連合のメンバー皆に九尾のチャクラを渡して回ります。

「ナルトのガキ…、
 九尾のチャクラを渡してるのか?」

九尾のチャクラ、それは皆に受け渡しても有り余るほどのエネルギー。
九尾にしてこの量なので、十尾とは如何ほどのものなのか、
想像を絶するほどのものです。
逆に言えば連合軍皆が120%の力を発揮し会わせてこそ、
この十尾というかつてない災禍と戦うことができるといえましょう。

「小娘がナルトの力を受けて、
 ずいぶんと強くなったな…。」

日向流柔拳の基本、《八卦空掌》で十尾の尾を弾き返して見せたヒナタ。
その様子を見て、マダラは若干楽しそうにもらします。
先ほどまで虫けらと見なしていた存在が、
俄かにでも力をつけて余興を与えてくれたことに、
無邪気な子供のように素直に心を動かされたように感じます。

「シカマル! いの!
 準備OK!?」

《倍化の術》で十尾の進行を食い止めるチョウジ。
シカマルもいのも九尾のチャクラがわたり、
いよいよ作戦発動です。
親子の死の際のやりとり――

「もしその作戦が上手くいかなかったら?」

迫りくる死の時に全く動ぜず、
冷静に子であるシカマルに伝えるシカク。
冷静さを保てないでいたシカマルとは対比的です。

「生きててめーが指揮を取れ…シカマル。」

言葉をむりやり呑み込もうとするシカマル。

「ヘッ…。オヤジとして面と向き合ってやれたのは、
 暇潰しの将棋ぐらいだったな…。
 お前には何も…。」

と歩んできた人生を自省するように我が子に言葉をかけるシカクですが、
シカマルは首を横に振ります。

「充分だ。
 オヤジの…背中、見て育ったからよ。」

面と向き合ってなくても、
その姿はしっかりと焼き付けています。
その背中を目指して、育ってきたのだから。

「フン…」

と短く満足げに鼻を鳴らすシカク。
一方、いのにも父親であるいのいちから、
最期の言葉が送られます。

「いの…。お前は山中家の紫の花紋…
 萩の花言葉通りに育ってくれた。」

いのは頷きます。

「……"前向きな恋"…でしょ――」

サスケを恋い慕う気持ち――
山中家では父娘の仲が良かったのでしょう。
娘のサスケに対する恋心を
父親のいのいちも知っていたのです。
そして、犯罪者だからといって、無下に止めはしなかった。

「萩の花言葉はそれだけじゃない……。
 父さんが何より誇りに思うのは、
 お前の友に対する…"想い"だ。
 お前は……キレイな萩の花を咲かせて見せてくれた…。」

皆からいじめられていたサクラを庇ったエピソードも、
しっかりいのいちは聞いていて、
それを誇りに思っていたようです。

「さて! そろそろ時間だ…。
 最後に言い残したいことはあるか、シカク…。」

といのいち。

「ん――母ちゃんに伝えといてくれるか、シカマル。
 あっ! その前に母ちゃんには見つからねーよーに、
 物置の左棚の木箱の中の――」

と妻への言葉を考えようとしたときに、
焦りだすシカク。

「全部分かってるよ…。
 心配すんな…。」

と力強く答えるシカマル。
最後まで恰好良くとはいかないけれど、
忍としてその立派な勇姿を見せてくれたことを称えるかのように――

「オレ達はいつもお前達の中に居る」
「忘れんなよ!」

いのいちとシカクの本当に最期の最後の言葉。
悲しみを振り切り、その想いを咲かせるため、
シカマルといのは術を練ります。
いのが《心転身の術》で十尾を捉えます。
そして、その間隙をぬって、
《影真似の術》で完全に十尾を封じていきます。
十尾とつながるマダラやオビトにも術の影響があるようです。

2.忍び舞う者たち(2)

ネジの死を泣くリー。

「リー…。もう泣くな…!!
 リーよ…。我らがネジの想いを捨てぬかぎり、
 ネジは我々の中で繋がり生きている…!」

ガイがリーを宥めます。

「……お前らにいいことを教えてやる…。
 その繋がりが今のオレを作ったのだ。
 それは強い呪いでもあることを知っておけ…!!」

つながりがあるからこそ、
それを失った時の強い絶望と孤独、湧きあがる憎しみが生じて、
いまここに自分自身は存在する、とオビト。

「ナルト…。オレが言ったんだよな、お前に…。
 「仲間は絶対殺させやしない」と…。
 アレはな…オレ自身に言い聞かせた戒めでもあるんだ。」

そんな彼を複雑な想いで見上げるカカシ。
自戒の言葉とその意味を語り始めます。

「…オレは今まで多くの仲間を守れなかった。
 だから今度こそ仲間を守ると口にする…。
 だがその度に仲間を守れなかった事実を見つめ直すことになる。
 その"傷"と…、一生向き合っていくことになるんだ…。」

自らの無力の念を刻み付けてきた"傷"と向き合い、
生きていくことの重みをカカシはナルトに問いかけます。

「だから忍び耐える者…。
 忍者なんだろ、オレ達は。
 忘れさせてなんかくれねーよ。
 …そもそもその傷が、
 仲間がここで生きてるってことじゃねーのかよ…。
 夢の中で自分が傷つかねーよーに作った仲間なんて本物じゃねェ…。
 それって本物の仲間を消すってことだろ…。
 呪いだろーが何だろーが、
 オレは本当のネジをここに置いてときてェ!!」

と自分の胸を指さし答えるナルト。
"傷"があるからこそ、"痛み"があるからこそ、
想っていたそして想われていた仲間の絆が存在する確かな証。
それを大事にするからこそ、
いつまでも生き続けているのです。
その"つながり"のせいにして、夢の中に逃げ込み、
自分の弱さをひた隠すのは仲間を殺すこと。
"強く"ならなければならない。
それが成長するということ。
そもそも忍とは忍び耐える者。
そのような道を歩むべきプロのはず。
そんな誇りを胸に、もう一度ナルトは前を見据えます。