今回は結構重大な秘密が明かされます。
二部構成でお送りします。

前半:【神威による空間転移1〜共通の次元空間〜】
後半:【共闘の第十局・拾漆〜同じ眼〜】

597『時空間忍術の秘密』

3.時空間忍術の秘密(3)

さて、術の仕組み、トビに攻撃が当たった理由が解消されれば、
残る疑問はなぜ共通の時空間にリンクするのかです。

「でも…どうして奴と瞳力が繋がってる?」

とビー。
トビはあえて口を閉ざすように何も語らず、
こちらの様子を窺っています。

「カカシ…奴は…」

ガイは言いかけて、カカシの言葉を待ちます。

「その眼をどこで手に入れた!?」

もし全く同じ時空間にリンクすることがあるとしたら、
それは自然一つしかありません。
全く同じ瞳術――それが意味するのは全く同じ眼をもつこと。
そう、カカシの戦友、そしていまは亡きはずのうちはオビトの眼です。

「…どこでか…。
 フッ…、あえて言うなら前回の大戦の時だ。
 神無毘橋の戦い…、
 お前が写輪眼の英雄と呼ばれるようになった、あの戦いでだ。」

疑惑は確信へと変わります。
トビ自身が、カカシの持つ写輪眼であることを認めたのです。
しかし、それ以上にカカシは驚いています。
どこで手に入れたという問いかけに
あえてと言葉を挟んでから答えるトビ。
それはもともと持っていたかのような口振りとも捉えられます。
そして神無毘橋という言葉が出てきたときに、
カカシはもしかして――という思いが強くなります。

「……お前は…」

カカシやガイのことを知っているような口ぶりも、
さらに確信の念を強めます。

「言ったハズだ!
 …簡単に口を開くなと!
 口先だけの男に成り下がったお前の言う言葉に
 何の価値も意味もない!
 後悔しても遅いのだよ。
 現実は…ただ残酷に突き進むだけだ。」

まるで昔のカカシをよく知るようにトビは語ります。

「現実を見てきたお前には分かってるハズだ…。
 この世界で願いなど何一つ叶いやしない。
 だからこそ、無限月読という夢へ導くのだ。
 墓の前で英雄が哀れに言い訳をする必要のない世界を創る
 と言ってるのだ。」

慰霊碑に名を刻んだオビトに、
申し訳ないように言葉をかけるカカシ。
それをトビは知っているのです。
もう人違いでは済まされません。
カカシはあまりの出来事に呆然自失するような様子です。
肩で息する回数が増えていきます。

「てめー。まだそれぐちぐち言ってんのか!?」

当然、カカシの過去など思い当らないナルトは、
トビの言葉に腹立たしいというように啖呵を切ります。

「こっちも言ったハズだ!
 火影の夢は譲れねェ!!
 こちとら託されてるもんがいっぱいあんだ!!」

気迫と自信に満ちた表情で物言いです。
その様子に九尾も八尾も思わず微笑むのです。

「フッ…。託されているか…。
 しかしナルト…。
 …もし自来也四代目火影がお前に託したモノを
 お前が蔑ろにしたら…、奴らはどう思うだろうな?」

一方でその根拠のないかのような自信を揺るがそうとするトビの言葉。
しかし、ナルトはもう折れません。

「その憎しみをどうにかしたいとは思っとるんだが、
 どうしたらいいのかワシにもまだ分からん……。
 答えが見つからんかった時は…、
 その答えをお前に託すとしようかのォ!
 お前を弟子にしてよかったわい!」

憎しみへの答えをナルトに託した自来也の言葉――

「答えは自分で探すんだ。
 その答えはオレにも分からないよ。
 お前ならその答えを見つけられる。
 …オレはお前を信じてる。」

答えが見つけることができることを信じてくれた父・ミナトの言葉。
それらがナルトの脳裏を巡ります。

「託されたものを失敗したら…、
 お前は自分自身をどう思うだろうな?」

トビの言葉に、一瞬考え込むナルト。

「問題を先送りにし、希望という言葉でごまかしても…、
 虚しい現実が待つだけだ。
 託した側も託された側も…虚しいだけだ。」

かつての自分を映し込むかのようなトビの言葉。
厳しい現実にあえいできたからこそ、
究極の平和を為すために無限月読へ邁進するトビのその生き様を、
ナルトはここで否定して、間違いであると示すためにも、
根拠がない"希望"や"信じる"、"託し託される"といった
あいまいな言葉では何にもなりません。

「ナルト…代われ!
 …奴に一言、言っとく事がある。」

しかしナルトはもう一人ではないのです。
迷ったら助けてくれる存在が、
自分が信じる道を信じてくれる仲間がいる。
一人で答えを出す必要はないのです。
九尾がナルトと入れ替わり、トビに言い放ちます。

「悪いが…こいつはてめーの言葉には当てはまらねェ。
 ナルトは四代目の託したワシを…
 ダチにしたあげくワシの力を使いこなした!!」

仲良くなってまだ短いですが、
ここまで九尾に言わせられるのは、
九尾がナルトの半生を陰ながら認めていた背景があったと思われます。

「四代目はお前を倒す力として、
 ワシをナルトに封印したのだ!
 行け…ナルト!
 てめーは失敗なんかしねェ!!」

ナルトは理屈でどうこうという人物でありません。
なんとかしようと思って実際になんとかしてきたのです。
もちろんナルト一人の力だけではありませんが。
でも並みの"なんとか"より力があります。

4.時空間忍術の秘密(4)

さて【トビについて】ですが、ある程度の事実が与えられたので、
推測だけで述べてきた部分にある程度の根拠を与えることができます。
およそ5年前の記事【トビについて1】*1にて、
(※英訳の部分は誤訳かもしれないので根拠薄としておいてください)

  • なぜオビトの眼にこだわる必要があったのか

という部分ですが、オビトの眼をトビが持っていることは事実となりました。
神無毘橋での名も馳せていないうちはオビトの写輪眼を、
わざわざ覇者とならん者がいちいち求める必要などないことに留意すれば、
トビの正体が自ずと何者かは理解できるところでしょう。
しかし、遺志を継ぐ親族という可能性もありますが。

  • オビトの体は右半身がつぶれていた

という重大事実を忘れてはなりません。



(27巻160P・ 243『プレゼント』)

私の記事では珍しいですが、漫画よりスキャンさせていただきました。
(一部引用という形で。禁じ手ですがやむをえません!)
トビの眼がオビトの眼と確定したなら、
輪廻とか憑依云々はもう関係はありません。
このときのオビトは生きていた可能性が高いです。
実際、右頭を潰されたように見えていましたが、
即死しているわけではなく、カカシやリンと普通に会話しています。
この後岩忍が《土遁・岩宿崩し》を使うまでは、
意識も言葉もはっきりしていました。
この後、普通に考えれば死亡した可能性が高いのですが、
生存していた可能性は0ではなかったのです。(加えて右目も無事だった)
もしトビがオビトだったなら、何が彼をそこまで絶望へと追いやったのか、
久しく登場していないリンの安否についてや
なぜうちは一族を憎むようになったのかなども語られるでしょう。
でももしオビトが仮面の男として、九尾を操り、木ノ葉を襲ったとしたのなら、
この後1年*2もしないうちに、ミナトが手を焼くほど
オビトが飛躍的に強くなったことになります。
しかも体躯的にミナトぐらいの背丈になっていないと、
いろいろな描写の辻褄が合わなくなります。
(まぁイタチが11歳ぐらいのときに大蛇丸と対峙した描写は大人びていた前例がありますが^^;)
やはりオビトの写輪眼をこの仮面の男が持っているだけなのか――
謎は深まるところです。
やはり親族??