すみません。
仕事が忙しく、
昨日は更新できませんでしたので、
本日の更新となりますm(_ _)m


608『カカシの決意』

.カカシの決意

オビトは《神威》によって亜空間から手裏剣を呼び寄せます。
それを《土遁・土流壁》で防ぐカカシ。

「くっ…。……なぜだ…!?」

とカカシ。

「…もう口を閉じたらどうだ。
 口先だけのクズは。」

呆れたように言うオビト。
《神威》でカカシを吸い込みます。
亜空間に閉じ込められたカカシ。
あのとき、自分を奮い立たせてくれた
オビトの言葉を思い起こします。

「オレは"白い牙"を本当の英雄だと思ってる……。
 …確かに忍者の世界で、
 ルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる…。
 けどな…仲間を大切にしない奴は、
 それ以上のクズだ。」

そのときの言葉こそいまのカカシの原点なのです。
「リンを見殺しにした…」
正体を明かした時にそう口走ったオビトを見て、
カカシはやはりリンを守れなかったことが、
オビトをこんなにしてしまったのだと気づいています。

「(確かにオレはクズだ……。
  だがオビト…お前はずっと、
  オレにとって英雄だった……)」

オビトの言葉が礎であり、
カカシにとっての忍道だったのです。
自分はそれを本当の意味で貫き通すことは
できなかったかもしれない――
それでも、戦友の残したその言葉の重みこそが、
忍としていられる唯一の心の拠り所だったのです。
それが根底から覆されようとしている――
カカシが揺らがないはずがありません。

「…同じ眼だ…
 やはり出てきたか…」

亜空間で少し頭を冷やしたカカシ。
オビトが使った逆の順――
《神威》で再びオビトの前に現れて見せます。

「……オビト、なぜそうなった…。
 リンが…関係してるのか…?」

分かっていながらも、
訊ねずにいられないカカシ。
それに対して、この期に及んだ、
カカシの言葉が琴線に触れ、
一瞬険しい表情を見せるオビト。

「クズは口を閉じていろと言ったハズだ…
 死ね…」

と冷淡に言い放ちます。
カカシは息を切らせながら、
オビトに自分の思いを打ち明けます。

「オレは…お前との約束を守れなかった。
 そう…。オレはクズだ。
 だがお前は……木ノ葉の英雄だ……。
 …お前まで、そうなる必要はないだろ…。」

カカシにとってまだ目の前のオビトが、
自分の知っているオビトだと
思いたくない気持ちが強いのでしょう。

「ククク…。これが現実だ…。
 託した側も託された側も…。
 …この世界で生き永らえた忍は皆、クズになる。
 オレ達がいい例だ…。カカシ。」

自分も"クズ"だと認めるような発言をするオビト。
それに対してカカシは目を丸くします。
オビトにしてみれば、絶望とはこういうことでしょう。
いかに自分が力をつけようと、
どんなに守ろうとしてみせても、
自分など遠く及ばぬところで悲劇は起きてしまう――。
本当はリンを死なせたくなかった。
カカシを裏切り者にしたくなかった。
でも、現実は違う。
握りしめた水塊が掌から逃れて流れてしまうように、
止め処なく流れていく時間と事象は、
矮小すぎる存在である自分から、
何もかもを奪い去ってしまうのです――。
オビトは恐ろしいのです。
塵屑に等しい己の存在が――。
だからこそ、何もかもが思いのままである
夢幻の世界にこそ"ありもしない世界"を望むのでしょう。

「この世界のクズを生む輪からは皆逃れることはできない。
 だからオレはこの世界を創り変える!」

結局のところ、人は自然という枠組みの中から見れば、
ちっぽけでクズに見える存在かもしれません。
でも――

「おめーらムカつきすぎて…、
 文句が思いつかねェ…。
 だから代わりにオレのこと一つ教えとく。
 オレはクズじゃねェ!!!
 この先、クズにもならねェ!!
 …オレは…させねェ…
 オレの仲間は絶対殺させやしねェ!!!

九尾の力をさらに解放し、
マダラの木遁による抑圧をぶち破って、
仲間たちの危機を救ってみせたナルト。
世界を創り変える?――おこがましい。
本当に大切なことは、
現在を精一杯生き抜き輝くこと。
呪われた世界で諦めず明日を信じて輝き続ける命。
決してクズなんかじゃない。
否定することなどできないのです。

「(すまん…ナルト…。
  オビトの言葉をお前に教えたオレが…また…
  ブレるところだった…!!)」

ハッと我に返ったように、
カカシは目の前の敵を見据えます。
苦境を跳ね返すように
ガイの意地の《昼虎》、
カカシの渾身の《雷切》が決まります。

「オビト…。…かつてのお前の意志は今でも…
 オレの隣に居る!
 今のオレにできる事は今のナルトを守ることだ。」

もう過去にばかり目を向けていても仕方ない。
戦うべきときは、守るべきときは現在。
カカシもついに目が覚めます。