今回は結構重大な秘密が明かされます。
二部構成でお送りします。

前半:【神威による空間転移1〜共通の次元空間〜】
後半:【共闘の第十局・拾漆〜同じ眼〜】

597『時空間忍術の秘密』

1.時空間忍術の秘密(1)

「こいつの術が…一つ?」

全ての攻撃が透過してしまう術。
そして透過したかと思えば実体化する術。
それはカカシによれば"一つの術"だったようです。

「よく分かんねーけど、
 やっと攻撃が当たったってばよ!」

カカシとの協力攻撃で、
どうにか螺旋丸を当てることができたナルト。

「分析にかけてはお前の右に出る奴はいないな。
 簡単にでも奴の術の説明を頼む。
 術の事を知っておくのと知らないのでは、
 闘い方も変わる。」

その通り名の通り多くの術を見切り、体得してきたコピー忍者カカシ。
ついにトビの術についてもある程度見切ったようです。
カカシはその術の正体を語り始めるのです。

「…術のネタは本当に簡単だ…。いいか…
 あの吸い込んでしまう術同様…
 すり抜ける術も同じ時空間忍術だったのさ。」

その術の正体はやはり"時空間"系の忍術.

「順を追って説明する…。
 まず奴の面に付いた傷…、
 あの傷跡はオレの雷切のクナイで付いたものだ…間違いなくな。
 そして右肩のものは傷跡から、
 ついさっきの螺旋丸を喰らってできた傷だと分かる。
 この二つの傷に共通しているのは、
 ナルトの体が奴の体をすり抜けている最中に
 重なり接触していた部分であるということだ。」

雷遁をまとったクナイが面につけた傷。
透過するはずの螺旋丸が接触した傷。
さらに、

「そしてこの二つの傷にもう一つ共通していることがある。
 それは…、オレの神威の術で、
 時空間へ飛ばしたクナイと螺旋丸によってできた傷ってことだ。」

これらはカカシの万華鏡写輪眼による時空間忍術《神威》によって
ある空間へと転移されたもの――
すなわちこれらが時空間へと飛ばされた際に、トビと接触したわけです。
これが何を物語るのか、カカシは結論付けます。

「つまりこのことから奴の時空間忍術は……、
 オレの神威の時空間と繋がっている!

そう《神威》によって展開される時空間と、
トビの術によって展開される時空間は、
"全く同じ"の時空間であったというわけです。

「ちょっ…、ちょっと待て!
 どういう事だ?
 なぜ奴の瞳術とお前の瞳術が繋がってる!?」

"全く同じ"時空間というのがミソです。
これにはガイもビーも疑問をはさまずにはいられません。

「時空間忍術って皆どいつがやっても繋がってるもんなのか!?」

この問いにカカシは明確に解答します。

「イヤ…そうじゃない。
 おそらく奴とオレだけだ。」

展開される時空間は個人差がやはり存在するようです。
後日この時空間忍術の仕組みについて詳しく考察を述べようと思いますが、
この展開される空間は、現在次元より高次元の空間である可能性があります。
机の上に紙を置いて、その紙の上に鉛筆で線を引いてあげます。
この紙(二次元)と引かれた直線(一次元)、そして手と鉛筆(三次元)には
( )に書かれた次元関係があります。
(紙も直線も原子による三次元構造をとるので、厳密には三次元ですが、
 ここではその次元に近似できるとして考えて下さい。)
さて、さっき引いた線と重ならないようにして、もう一つ線を引いてみましょう。
私たちは何の驚きもなく処理しますが、紙側から見れば、
突然やってきた鉛筆(ただし紙と接触している平面部分のみ感知できる)が線を引き、
突然消えて、再び別の場所に線を引いた、と感じるでしょう。
紙(二次元)では三次元の高さ方向が感知できないので、
まるで突然現れては消え、再び現れたように感じるはずです。
これと似たようなことがこの《神威》によって起こっていると考えられます。

ここで断っておくと、少し難しい書き方になりますが
一次元というのはある一方向の矢印(ベクトル)、
二次元というのは二方向の矢印(ベクトル)、
三次元というのは三方向の矢印(ベクトル)の大きさが変化することで、
許されうる方向と大きさの矢印が存在できる範囲で表される"空間"を考えています。

しかし展開される亜空間が個人によって異なるとして、
トビと全く同じ空間を共有するとすれば、
その理由は一つしかありません。
もちろんカカシも気づいています。

2.時空間忍術の秘密(2)

「そんなことより何でオレのパンチじゃなくて、
 消したクナイが当たるんだってばよ!?」

とナルト。

「そうだバカヤロー!
 時空間が共通していたとしてもだ、
 だからってすり抜ける奴に攻撃を当てんのは、
 無理だろコノヤロー!」

ビーもナルトに同じくです。

「そのすり抜けるという考えが間違いだったんだ。」

ナルトもビーも"すり抜ける"ことに囚われて
術の本質が見えていないようです。
この術の本質――全貌をカカシが語り始めます。

「…お前の攻撃がすり抜けているように見えたが、
 実はお前の体と接触した奴の体の部分が、
 時空間へ移動しているだけだったのさ。」

部分次元転移――
非常にシンプルですが、おそらく制御するのに高等な技術が必要でしょう。

「つまりお前のパンチがすり抜けた奴の左面の部分は、
 すり抜けたというよりも、
 この空間に無くなり時空間に移動し存在していた。実体としては。」

つまり現在の実空間から異空間への転移を行うと、
当然実空間で存在していたはずのものは異空間へと移るので、
実空間では何もない虚無の状態となり、
そこを通過する物体はまるで空を切ったように感じるのです。
考えられる制御困難についてですが、
異空間に存在が移るということは飛ばす部位によっては、
術者自身に生命の危険が及ぶと思われます。
たとえば心臓だけ異空間に飛ばした場合、
その間、実空間に存在するトビには、心臓がなくなったに等しいわけですから。
この辺りが術の仕組みを解した上での弱点を突く攻撃となるわけですね。
ただ異空間で移行中に螺旋丸を喰らった際も、
ショックで術の制御を乱すことなく、
痛めた箇所も無事、実世界に還ってきているようなので、
ある程度のオート制御のようなものが組まれているのでしょうが――

「それとほぼ同じタイミングでオレが神威で
 クナイを時空間へ飛ばしただろ。
 お前に手を伸ばし…、捕まえようとした勢いで前に移動した
 奴のちょうど横……、オレの飛ばしたクナイが
 時空間に移動し終り、面に傷を付けたんだ。」

トビの面に傷がついた一部始終をカカシは説明します。
螺旋丸のときも同様の行程を経て、
トビに接触しダメージを与えたのです。

「…そういうことか。」

ようやくナルトとビーも事の顛末について納得します。