今週も遅くなりました。m(_ _)m

579『兄弟、共闘』

扉絵は木ノ葉の里でいびきをかいて気持ち良く寝そべる九尾を
微笑ましく見守るナルトです。

1.兄弟、共闘(1)

「ボクみたいなインテリは、
 じっと見つめられるのに慣れてなくてね…」

フードを目深に被り、何やら構えをとるカブト。

「幻術対策か…」

カブトの傍らにいる蛇が何かを感知するように、
様子を窺っています。

「あの蛇達の動き、
 オレ達をちゃんと感知してるぞ…」

蛇がただカブトに寄り添っているだけでないことを見抜いたイタチ。

「蛇は体温感知と舌で匂いを口内に送り嗅覚感知もする。」

とサスケ。
人間や哺乳類のような体温を一定に保つ機構がある恒温動物と違い、
蛇の属する爬虫類の多くは変温動物であり、
外部環境に体温が左右されます。
したがってその意味で微弱な温度感知を得意とするのでしょう。
一方で舌を頻繁に出し入れすることで、
舌についた微小な化学物質から匂いを感じ取っているという記述もあり、
この辺りは実際の蛇の生態をうまく利用していると考えられます。

「ずいぶん勉強したな…。
 まるで蛇博士だ。」

イタチもこのことは知らなかったのでしょう。
そうサスケに言います。

「調べたさ…。大蛇丸を倒す為にな。」

とサスケ。大蛇丸を倒す為に、蛇の特性を勉強したようです。

「でもただの蛇博士じゃあ、
 このボクは倒せないよ!
 ここはボクのフィールド…
 自然がボクの味方をする。」

と警告するカブト。
まるでその言葉を裏付けるように、
カブトに付き従う蛇たちが巨大化していきます。

「地の利か?
 トラップでもあると見ておけよ、サスケ…。」

自然が味方する――その意図するところは不明ですが、
とりあえず何かあると踏んで、地の利の警戒を促すイタチです。

「…トラップ?
 …そんなものじゃないよ。」

嘲笑うかのようにカブト。
巨大化した蛇たちが二人に勢いよく襲い掛かります。

「それが須佐能乎だね!」

イタチ、サスケともに須佐能乎を発動し絶対防御を敷きます。
蛇の首を掴んで動きを止めたイタチに対して、
首を斬り落としたサスケ。

「手荒いぞ、サスケ!
 殺すなというのは分かってるな!」

とのイタチの言葉に、

大蛇丸の力を手に入れてるようだしな。
 そうそう死にはしねーよ!」

とサスケは答えます。
多少手荒い程度でちょうど良い――
そう考えたサスケはイタチの静止を振り切って
すぐに本体と思われるフードに覆われたカブトの首を獲りにかかります。
フードを引きはがすと出てきたのは三匹の大蛇。
身代わりのようにカブトの衣から出てきたこの蛇たちは、
洞窟の岩柱の陰に素早く身を潜めます。

「インテリも度が過ぎてるな。
 顔の次は姿まで隠して引きこもりか。」

そのうちの一匹に刀を投げつけ、胴体の一部を切り裂きますが、
サスケは手ごたえを感じていない様子です。

「脱皮して逃げるだけか?
 大蛇丸の残りモノを移植しただけの劣化版だな。」

サスケの辛辣な言葉。

「サスケくん…。君…ボクのことナメてるよね…。
 まぁ…確かにボクのビンゴブックの手配凶度はボク以下だったし。
 大蛇丸様に比べればたいしたことないしね。」

カブトは少し癇に障ったのか、サスケにそう答えます。

「確かにそれで隠れてるつもりなんだとしたらな。」

と言いつつも、サスケもそこまで甘くは見ていないようです。
万華鏡写輪眼を見開き、フィールドに潜むチャクラを見通します。

「サスケ。気をつけろ。
 チャクラがあちこちにある…。
 どれが本物かは分からんぞ。」

同じくイタチもその写輪眼で見通しますが、
どれが本体かはイタチを以てしても判別できないようです。

2.兄弟、共闘(2)

「流動的に肉体変化する能力だよ。
 体の体液を使って分離する…。脱皮に見えるのはそのせいだね。
 これは鬼灯一族の肉体変化能力を調べ応用し生まれた技術だ。
 君も知ってるだろ? 水月だよ。
 彼は人から水へ、…水から人へ変化する。」

得意げに説明を始めたカブト。
イタチが須佐能乎で掴んでいた蛇が
まるで液体をつかんでいたようにどろどろと溶けていきます。
水月の水化の術――カブトはそれを応用し、
自らの技術として取り込んでいたのでした。

「そしてかねてよりボクが持ってる圧倒的回復力…。
 と言ってもこれは元々うずまき一族の女のからだを調べ得た回復技術…。
 君のよく知る香燐だよ。」

香燐がうずまき一族だと聞いて意外そうにするサスケ。

「うずまき一族の血を継ぐ者は髪が赤いのが特徴でね…。
 生命力はゴキブリ並だよ。

とカブト。ナルトのように髪の色が違う場合や、
赤い髪でもうずまき一族の血を引いていない場合もあるでしょうが、
香燐はご多分にもれずに"うずまき"の血を引いていたようです。

「さぁ…そうなると気になるのはもう一人の君のお仲間だけど…。
 イヤ…、もう仲間ではないのかな…?」

と薄ら笑いを浮かべるような話しぶりで続けます。

「とにかくあの三人を選んだ君はお目が高いよ…。
 この忍世界で才能の無い者は存在すら否定されるけど…、
 才能が無いなら無いである所から奪い己に付け足していけばいい…。」

呪印の元となった重吾に話が及びます。

「…どうやら重吾の能力も持ってるようだな…。
 …大蛇丸から呪印をくらってたか?」

とサスケ。しかしカブトはそれを否定します。

「違う…。あんなものはただの付け焼き刃さ。
 その力だけは己から体に修めた…龍地洞でね。」

とカブトは答えます。

「龍地洞だと!? まさか…!」

イタチは"龍地洞"に心当たりがあるようです。
それがいったい何か、カブトはご丁寧に解説してくれます。

「そう見つけたのさ…!
 妙木山…、湿骨林と並び伝えられる伝承のその場所を!
 大蛇丸様だけじゃない。このボクも行きつき…、
 白蛇仙人の元で修行し身に付けた!
 ついに大蛇丸様を超えたんだよ。このボクが!」

嬉々として語るその内容は驚愕とするものです。
龍地洞とは妙木山と並び称される聖地のようです。
妙木山が蝦蟇なら、龍地洞は蛇。
もう一つ聞きなれない湿骨林とはおそらく蛞蝓の里でしょう。
そしてその龍地洞と呼ばれる場所で修行したというカブト。
自然が味方するというその意味――

「チィチィ」

サスケの須佐能乎が放った矢を事もなくかわしたカブト。
大蛇から出てきた手が指を振ります。

「感知能力が今までの比じゃなくてね…。
 自然エネルギーがボクの味方をしてるのさ。」

カブトの中に溢れ漲る力。
それは自然エネルギーがもたらすもののようです。

「いいかい…。元々重吾の一族は、
 自然エネルギーを体に取り込む特別な体を持っていた。
 それがあの暴走の秘密さ…。急に強くなり荒々しくなる。
 大蛇丸様は重吾の暴走自体に目を付けたんじゃなく、
 一族の力の由来に目を付け、調べていたようだ。
 そしてついにその力の源を探り当てた…。そこが龍地洞だったのさ。」

重吾が突如何かに取り憑かれたように暴走する理由。
それは自然エネルギーを意図せずに取り込み、
その制御できない有り余るエネルギーに突き動かされるためのようです。
そして大蛇丸は重吾の暴走の機序を解き明かし、
自然エネルギーを取り込む特赦な体、
重吾の一族の能力の由来を調査して龍地洞を探り当てたようです。

大蛇丸様は直ぐにもその力を得ようと試みた…。
 が…それに耐えうる体をまだ持っていなかった…。
 だから……、このボクのように完ペキな仙人仕様には、
 まだ成れなかったんだよ、彼も!」

蛇から出てきた人型は、鱗に覆われ、
蛇と人間を融合したようなカブトの姿でした。

「…そうかやはり…、
 仙人モードの力を…。」

とイタチは悪い予感が的中したといった表情を浮かべます。

大蛇丸と同じだ。出来損ないの蛇が!」

サスケは仙人モードがいったい何なのか知らないのでしょう。
強気な姿勢を崩していません。

「蛇博士なら分かって欲しいなぁ…。
 ボクはもう蛇ではない…。
 …完全な仙人の力は蛇を脱皮し…、
 龍へと昇華したんだよォ!!」

《仙法・白激の術》を放つカブト。
自来也やナルトしか扱えないと思われた仙人モード。
まさかカブトが扱えるとは驚きです。