586『イザナミ発動』

1.イザナミ発動

カブトはイタチを刀で一閃し、胴体を切り離します。
そして大蛇丸の術で脱皮するように移動し、さらにイタチの背後をとります。
サスケからの飛刀を蛇で受け止めますが、
サスケの須佐能乎の腕が宙空にある自分を捕えようとしていることを察知すると、
カブトは攻撃の手を止めてさらに上空、天井へと回避します。
さらにサスケは《火遁・豪火球の術》によりカブトを追撃。
対するカブトも《水遁・大瀑布の術》で対抗します。
大波がサスケの攻撃の手を緩めさせますが、
その水飛沫に隠れてイタチが現れます。
イタチは攻防の隙に穢土転生の術の特性により
切断された上半身と下半身が塵芥により回復(?)していました。
しかし見切っていたようにカブトがイタチを刀で一突き。
ただ何か様子がおかしいことに気が付きます。
イタチの左眼の瞳孔の様子が万華鏡写輪眼ではなく、
萎縮して梵字のようになっています。
刺突いたイタチは幻像。カラスが辺りを飛び交います。
イタチはそのカラスの身代わりを縫って、
奪い取った刀で正確無比にカブトを一閃。
カブトの右の角を斬りおとすのです。

「同じことを…
 さすがに手の内が読めるよ。
 言ったハズだよ。この体の回復力がある限り手傷を負わせても無意味。
 視界を断ったボクに幻術は一切効かない。
 君らに勝ち目は無い。」

とカブト。

「お前の運命はすでにオレに握られた。
 それを成すうちはもう一つの禁術…それが――イザナミだ。」

しかしカブトの運命はすでにイタチに握られていると言います。

「なら…その運命!
 確かめてみたいね!!」

カブトはイタチの言葉全てを待たずして、
イタチ目がけ突進します。
カブトの掌底をイタチは刀身で受け止め、
お互いに衝突のあと間合いをとります。

「サスケ。オレから離れるな。」

サスケの近くへ回避したイタチはサスケにそう言うと、
カブトの方を静かに見据えます。

「まるでデジャヴだね。
 もう飽きた…。さっさとこの戦いを終わらせよう。」

左肩に鍾乳洞から滴がポトリと落ちます。
カラスの羽根を踏みつけ、悠然と構えるカブト。

「お前の運命を握っているのはオレだ。
 だがお前の運命を決めるのはお前自身だ。
 オレが言ったことを思い出せ…。そして考えろ。」

そう助言めいたものを伝えるイタチですが、
カブトは聞く耳持たずです。

「何を言ってるかまるで分からないねェ…。
 言葉遊びはもういい…。
 全てを手に入れるボクこそ本当の強者!
 それだけはハッキリ分かるよ!!」

カブトは大蛇丸の大蛇をイタチの方へと飛来させます。

己を許し、本当の自分を認める者…
 それこそが本当の強者だ!!

イタチは《須佐能乎》を発動し、
大蛇の首根っこを摑まえます。
しかしその大蛇の開かれた口からカブトが現れます。

「負け犬が!! ホザくな!!」

出てきたカブトを今度はサスケの《須佐能乎》が捕えますが、
さらにその捕えたカブトの口からカブトが――!
マトリョーシカのように出てきます。
イタチの須佐能乎を破って、腕に噛みついたカブトは、
刀を奪って背後からイタチを突き刺します。
その瞬間弾けるようにカラスが舞います。

「(…これはっ。これは…どういうことだ!?)」

攻防の瞬間、カブトが何やら違和感を覚えます。
握られるはずの刀が、重力に逆らうように宙に浮いて取れません。
あえなくイタチに刀を取られてしまい、
右の角を斬られます。

「(なぜだ!?
  もうすでに角は切られていたハズ…!!
  どうやって…!?
  視界は断っていた。どんな幻術にもかかりようは無い!
  しかしこれは…!)」

その違和感は確信に変わります。
先ほど斬りおとされたはずの右の角。
しかし確かに今の攻防で右の角が斬りおとされた感触がありました。
すぐさまカブトは自分が幻術にあることに気が付きます。
しかし視界は断っており、警戒していた月読などの幻術にはかかっていないはずです。
どこからともなく現れた《火遁・豪火球の術》
それを必死に水遁で防ぐカブト。
鍾乳洞から滴り落ちる水滴がカブトの左肩を濡らします。

「ボクに何をした!?」

その感触には覚えがあります。

「お前はオレの瞳術にハマッた…。イザナミだ。」

何かがおかしい――
カブトもさすがに気が狂いそうになっていきます。

「イヤ…。そんなことはどうでもいい!
 このボクがやられるハズはない!
 ボクにできないことはない!!」

一歩踏み出した足に、また覚えのある感触が。
カラスの羽根を先ほどとまるで同じように踏んづけたのです。
イタチに斬りかかり、どうにかイタチを突き刺したカブト。
しかしそのイタチは変わり身。
黒いカラスが辺りを埋め尽くします。
その隙を縫って現れたイタチが右角を斬る――
斬られた感触ははやはりある。

「言ったハズだ…。
 お前の運命はオレが握っていると。」

と冷静にイタチ。
一方で唖然とするばかりのカブト。

「奴はこの輪廻から逃れることはできない。
 運命を決める術…。これがイザナミだ。」

まるで時間が巻き戻ったかのように繰り返される同じ光景<イベント>。
それがイザナミの正体だったのです。
カブトの頭に置かれたイタチの手――
その光景通り、もはやカブトの運命はイタチの手の内なのです。