一日遅れです...m(_ _)m

618『全てを知る者たち』

1.全てを知る者たち(1)

「ここは手つかずのようね。」

大蛇丸一行が辿り着いたのは、
うずまき一族の家紋が屋根に刻まれた
寺院のような場所。
木ノ葉の里の外れにあるようです。
崩れかけの堂の中に入ると、
いくつもの般若の面が飾られています。

「あったわ。」

そう言ってその中の一つの面をつかんだ大蛇丸

「何か気味が悪いね…。
 見つけたんなら、さっさと行こうよ。」

水月。邪気のようなものにあてられたか、
堂から一刻も早く出ようと促します。

「そうね。行きましょう…。
 全ての秘密が眠る場所へ。」

大蛇丸
一行はその場所を後にします。



サスケや大蛇丸にとっては懐かしい木ノ葉の街並み。

「……ここも…
 ずいぶん変わったな。」

高台に上り、感傷に浸るようなサスケ。
そんな面持ちは彼にしては珍しく、
水月が不思議そうに見やります。

「私が木ノ葉崩しをやる前と同じね…。」

大蛇丸

「何が?」

と汲みとれなかった水月が訊き返します。

「たとえ彼や里が変わってしまったとしても、
 ここは彼の故郷に変わりない。
 感傷に浸り、過去をなぞることで、
 己の決意を再確認する時間が必要なのよ。」

大蛇丸は言います。
いかに憎しみを抱こうと、
そこが"故郷"であるという厳然たる事実は変わらない。
そこには思い出があり、それと向き合うことで、
自分が何をすべきか再確認する――
傍からみれば儀式じみた行為ですが、
それは決意を揺るがないものにするための覚悟でもある、
というわけです。
大蛇丸も木ノ葉崩しのときかつてこのようにして
感傷に浸った様子が言動から窺えます。
そして師であった三代目火影猿飛ヒルゼンに手をかけた。
彼はそのときに涙を流しました。
大蛇丸のように、いかに人の道を外していても、
変わることができないものも彼の中にはあったのです。
それをふとよみがえらせ、
目的に向かおうとする心を鈍らせる
故郷や家族といったもの――
それを厭い疎むか、折り合いをつけるかは別にして、
少なくとも向き合っておかなければならないものなのでしょう。
サスケも大蛇丸も、そうしようとしてそうするのでなく、
本能的に、無意識的にそうしてしまうといった感じでしょうか。

「ふぅ〜ん。ならアンタはもういいの?
 感傷に浸りつつ木ノ葉崩しの決意っての。」

水月は訊ねます。
かつて全てを壊そうとして為せなかった
木ノ葉の里を再び目前にして、
大人しくしている大蛇丸の心中を、
興味本位で聞いてみたいといった感じの表情です。
しかしそれに対して何も答えず、
笑みを浮かべるだけの大蛇丸

「…あのさよく考えたらボクら、
 アンタの部下でトップメンバーだったでしょ。
 んで今…、それが木ノ葉の中にいる……。
 里の強者共は戦争でいないとなると、
 これってアンタにとってチャンスじゃないの?」

とそんな大蛇丸水月は、
さらに突っ込んで聞いてみます。

「フッ…そうかもね…。
 でも一つ違ってるわ。
 アナタ達はもう蛇じゃない。」

大蛇丸
彼らは自分に利用されるだけの存在じゃなくなった――
成長した、と感じているからの言葉なのでしょうか。
ところで、木ノ葉崩しにしても、
木ノ葉の里が憎かったから、
自分が四代目火影になれなかったから、
といった大蛇丸にしては幼稚な動機では
説明がつかないかもしれません。
実際に現在の木ノ葉の里は、
忍連合を結成した他国が攻め込んでくる心配もなく、
彼らを簡単に中に入れてしまうほど警備が手薄です。
今、里を崩そうと思えば簡単でしょう。
なのにそんな気配もない。
水月が不思議がるのも分かります。
木ノ葉崩しが何を意図していたのか――
自分の師であり最強の忍である
三代目火影を超えることで、
忍のさらなる高みを目指そうとしたか、
あるいは決して短絡的でないそれなりの理由があったはずです。
こうしてサスケたちの目的に同調するのも、
単なる興味本位やつけ込もうとする糸口を探すというより、
何やら保護者的な心情を感じるのは気のせいでしょうか。


2.全てを知る者たち(2)

南賀ノ神社の石碑。
がれきに埋もれたその地に再び訪れた彼らは、
石畳の下に隠された階段から地下へ入り、
うちはの石碑の前に辿り着きます。

「なら始めるわよ…。
 少し離れてなさい…。」

今回はうちはの石碑の内容が目的であったというよりは、
これから始める儀式の場所にここを選んだようです。
おもむろに先ほどの般若面を被ると、
皆を遠ざけさせた大蛇丸
そしてある印を結びます。
それは最強の封印術・《屍鬼封尽》でした。
巻物にはこの《屍鬼封尽》を解除する方法が
記されていたのです。

「その巻物に書かれていることをするには、
 まず死神の面が必要なのよ。
 それは木ノ葉の外れにある
 うずまき一族の納面堂にある。
 そしてまずは屍鬼封尽の死神を
 己に憑依させ導き出す。
 死神の腹を裂けば封印は解ける。
 ただ私が人柱になる必要はあるけどね。
 これで死神の腹の中にあった私の両手を
 取り戻すことができる。
 そうして私に両手の力が戻れば穢土転生ができる……。
 そう……あの4人を…。
 もちろんそうなれば必要なものがいるの知ってるわね。」

と事前に大蛇丸はサスケ、水月、重吾に言っていました。
屍鬼封尽》の死神の腹を裂くことができること、
そしてそれによって封印解除することができるとは驚きですが、
大蛇丸が《屍鬼封尽》について調べつくしているのも、
奪われた両腕を取り戻すためにも、納得できるところです。

「あぁ〜〜〜〜!!
 ボクらを穢土転生の生贄にする気っスねェ〜〜〜〜!!」

水月。《穢土転生》は生きた人間を媒体に使うのですが、
その対象が自分たちかと一瞬おののいたようです。

「フフ…それもいいけど、
 アンタなんかよりもっといいのがいるのよ…。
 今は目に見えないけどね……。」

大蛇丸水月たちを媒体にする気はないようです。
それもそのはず――

「重吾、サスケ、水月
 準備なさい!!」

うまく屍鬼封尽の死神を宿し、
自分の腕を奪還した大蛇丸は、
重吾に前もって伝えておいたことを促します。

「重吾。アナタがサスケに呪印仙力を与えなさい…。
 そうすればトビがサスケの監視役に付けていたゼツが、
 そのチャクラに呼応して表へ出てくるはず。」

重吾に取り込まれた自然チャクラが
サスケの中に渡されることで、
サスケにつけられていたゼツが、
目論み通り胞子から咲き出てきました。

「お前たち柱間細胞は実験で知り尽くしてるのよ……。
 もちろん感知する方法もね。
 …やはり6体…トビはずいぶん慎重を期していたようね…。」

自分の存在が気づかれたことに驚くトビですが、
初代火影・柱間の研究をしていた大蛇丸にとっては、
その存在を感知することは然して難しいわけではありません。

「カブトからチャクラを吸い戻した時、
 彼の情報は私に蓄積される…。
 彼はちゃんとサスケに付けられていた
 ゼツ6体を調べて知っていた。
 私は彼ら4人の個人情報物質(DNA)を持っている…。
 私も蓄積が好きでね…。」

そう《穢土転生》の媒体にされるのは、
柱間のホムンクルス、ゼツで十分というわけです。

水月・重吾。残りの2体を任せるわよ…。」

差引きの2体は水月と重吾に任せます。

「OKっスよ。
 大蛇丸様ァ!!」

すっかり"様"付けまでして、
協力的な水月が滑稽ですが、
取り押さえられたゼツは無理矢理口を開けさせられます。
そう《屍鬼封尽》の人柱となった体を捨て、
ゼツに乗り移るためです。

「さぁ来るわよ!!
 全てを知る者たち……。
 先代の火影達が。」

一行の前に現れたのは、
穢土転生された歴代の火影たち。
圧巻の光景です。
全てを知る者とは彼らの事だったのです。