大変遅くなってしまいました。
申し訳ありません m(_ _)m

593『復活の大蛇丸

1.復活の大蛇丸(1)

大蛇丸に会うってどういう事?
 それに"全てを知る人間"って何なの?」

虚をつかれたような表情で訊き返す水月ですが、

「…お前らには関係のない事だ。」

と言ってサスケは突き跳ねます。
しかめっ面をする水月に対して、
重吾は何か知っていそうな表情をしています。

「何だよ…。訳分かんないね。
 ンなことより…、大蛇丸を復活させるなんてダメだ。
 その巻物の力を使うのに大蛇丸にお願いするつもりなんだろうけど…
 時間かければ君にだってできるようになるって。

 そう思ったからこそ君を探してわざわざこうして…」

水月
どうやら巻物の内容は忍世界を揺るがすことができるほどの
"力"について書かれているようです。
そして、それはサスケでもできるようになるものだそうです。
大蛇丸といえば不死の研究をしていました。
もしかしたらそれを突き詰めたものなのかもしれません。

大蛇丸でなければできないこともある。」

そう言って聞かない様子のサスケ。
重大情報をわざわざ届けに来たのに、
完全に水月の骨折り損です。

「サスケ。君はさ…、言ってみれば、
 大蛇丸の一番お気に入りの弟子だったわけだろ?
 なら君にだって…」

水月にとって辟易とする順位は、
サスケよりも大蛇丸の方がはるかに高そうです。
というよりも、何度もサスケに無下に扱われながらも、
水月がサスケを慕っているところらしきを見るに、
ただの打算的な関係を続けたいとは本心では思っていない節もあります。
サスケとは仲間で居たいということなのでしょうか。

「…水月…お前……、
 大蛇丸をナメすぎだ。」

とサスケ。

「バッ、バカ!
 ぜんぜんナメてなんかないよ! むしろその逆だって!
 君が大蛇丸を倒せたのは、
 たまたま奴の両腕が屍鬼封尽で使いものにならなくなってただけさ!
 君の方こそ奴をナメてる!
 仮に奴が復活したとしても、おそらく両腕は使えないだろう!
 でも、だからってヤバイ!
 また君の体狙われるよ!
 奴がこの戦争を知ったら乗っからない訳がない!
 奴も木ノ葉を潰したいんだし!
 そしたらボクら鷹も一戦交えなきゃならないじゃないかよ! いいのォ!?」

必死に説得を試みようとする水月ですが、
サスケは涼しい顔をしています。
水月にとって大蛇丸は"畏怖"の対象そのものなのでしょう。
ところで大蛇丸と一戦交えるかもしれないということは、
木ノ葉への復讐を"邪魔するもの"としてという意味なのでしょうか?
サスケは自分の手で木ノ葉へ復讐したいと願っていることは水月も重々承知でしょうし。

下剋上は成功したんだしィ…もうボクらの時代なんだって!
 今さら大蛇丸なんて誰も見たくないし!
 引っ掻き回されたくもないしさァ!」

散々の説得も、どうやら効果はないようです。

「少し黙ってろ。水月
 それよりそこのカブトの体の一部をえぐって持ってきてくれ。」

とサスケ。

「…人の言う事を聞かないのに、
 人が言う事聞くと思う?」

拗ねるように不満をこぼす水月

「ならオレがやる。」

代わりに重吾が動きます。

「ハァ…。やっぱこんな感じかァ…。
 重吾はホントそれでいいの?
 大蛇丸が復活しちゃうんだぜ?」

何も考えていないかのような重吾を見て、
深いため息をつく水月ですが、
重吾には彼なりの信念があるようです。

「サスケの意志は君麻呂の遺志だ。
 俺はそれに従う。」

そういって重吾はカブトの体に手をかざします。
するとまるでアメーバのように、引き寄せられる細胞群が
ひとつの塊をつくります。

「ゲェ〜!!
 君もだけど…、だいたい何なのコレ?」

見ためのおどろおどろしさにげんなりといった感じで水月が訊ねます。

「オレの里ではこれを仙人化という…。
 元々オレの変化もそれだ…。
 ただしオレのコピーは呪印化と言ってたがな。」

自然エネルギーを取り込み、身体が変化する重吾の術。
何を隠そう、仙人モード(あるいはそれに近いもの)だったと考えると、
いろいろと腑に落ちるところです。
そして呪印として簡略化、簡易版としたのは
大蛇丸の為せる業だったといったところでしょうか。
イタチの媒体となっていたアンコの呪印に、
重吾がえも言われぬその塊を押し付けます。
そしてサスケが《解邪法印》を行うと、
呪印から大蛇がするすると顔をのぞかせ、
やがてそれは人型へ、大蛇丸となります。

2.復活の大蛇丸(2)

「……まさか、…君たちの方から私を復活させてくれるとはね。」

口から邪悪な笑みがこぼれる大蛇丸

「ど…ども、お久しぶりっス…」

その迫力に怯えるように竦む水月
仙人モードのままぴくりとも動かないカブトを見やり、
しばらく無言のまま佇みます。

大蛇丸、アンタにやってもらいたいことがある。」

と、その一言でようやくサスケに注意を向ける大蛇丸

「そんなこといちいち説明しなくてもいいわ…。
 アンコの中でずっと見てたから…。
 呪印は私の仙術チャクラを流し込んだもの…。
 それは分離した私の意識でもある。」

そう呪印は仙術チャクラだったのです。
それも不完全な仙人モードを披露していた自来也と比べて高度なもの。
やはり三忍の中では大蛇丸は頭一つ飛びぬけている感があります。
大蛇丸を超えたと自負していたカブトですが、
やはりそれでもカブトよりはるかに先にいっていたことが窺えます。

「なら…戦争の事も知ってるのか?」

サスケの質問に、首を縦に頷きます。
あらゆる情報を呪印を通して見守っていたということなので、
現在の状況を、ともすると、誰よりも把握しているかもしれません。

「もちろん…。
 ただそれについて一つだけ言っておくわ…水月。」

サスケの質問だったのに、自分を名指しされてビクッとする水月

「私…この戦争に興味ないから。」

先ほどの会話をを聞いていたことを裏付けるように、
そう言ってのける大蛇丸
ただ、一同にしてみれば予想外の答えです。

「もう他人が始めてしまった戦争だしね…。
 未だに興味があるとすれば…
 サスケくん…アナタのその若い体ぐらいよ…!
 …と言っても、今の私にはそれを奪えるほどの力はないしね。」

大蛇丸にしてみれば、
なにかの芝居を見続けていたような気分だったのでしょう。
自分が主体的に起こしたイベントではないからか――
あるいはトビの自惚れた慢心を嫌ってなのか――
とにかく大蛇丸にとってこの戦争は興ざめする見世物だったのです。
サスケの体を狙う大蛇丸の発言に、
ほら言わない事かという表情の水月に対して、
きわめて冷静に振る舞うサスケが対照的です。

「奴らに会ってどうするつもり?」

突き出された巻物。大蛇丸は逆に訊ね返します。
"奴ら"ということは全てを知る人間というのは複数いるのでしょう。

「オレは…あまりに何も知らない。
 奴らに全てを聞く。」

とサスケ。

「…全て…?
 そんなこと知らなくてもいいじゃない…
 君はまだ子供なんだから。」

大蛇丸は言います。
全てのやり取りを見ていたうえで、
あえてこう言うのは何か大蛇丸に秘めた考えがあるのか、
少し考えさせるような発言です。

「そうじゃない。
 今はもう子供じゃない。
 …子供ではいられない。
 そもそもの始まりは何だったのか…
 オレはどうあるべきであり、
 どう行動すべきなのか…。」

とサスケ。
イタチの本当の真実と、その生き様に触れ、
もう一度自分を見つめ直そうとしています。

「復讐を迷っているの?」

すかさず大蛇丸は核心をつきます。
首を横に振るサスケ。

「違う。復讐自体を迷っているわけではない。
 イタチと再会し、前にも増して木ノ葉への憎しみは強くなった。
 …ただ…、汚名を着せられ死してなお、
 木ノ葉の忍として里を想い…、
 里を守ろうとしたイタチのその気持ちとは…。
 イタチとは…? 一族とは…? 里とは…?
 そして…全てを知り自分で考え答えを出し、
 己の意志と眼で成すべきことを見据えたい。」

確かに迷いがないと言えば嘘になるでしょう。
何回か振り返る機会はあった――
でも今までサスケはそういった時、機会をあえて見て見ぬふりをしてきたのです。
しかし此度、イタチの本当の気持ちを知り、
自分が為すべきこと、果たすべきこととして考えていた"復讐"。
それだけがその"道"ではないことが見えてきたのです。
憎しみは晴れない――でも、サスケの眼にはまた光が宿っています。
自分の命など惜しくないかのように力にまかせて前へ突き進んでいた
ほんのつい先ほどまでとは大違いの変貌ぶりです。

「(…イタチにあやつられ…
  私やトビに利用されていた時とはもう違うようね…。
  …なぜか不思議な感覚…)」

サスケの精神的な成長は大蛇丸も認めるところです。
そしてそれに対して、どこか嬉しいような、
まるで親心のような感覚がわいてくることに不思議さを感じていると見えます。
物言わぬカブトに手をかざし、
そこから自分のチャクラを集める大蛇丸
自分を慕い、自分を追いかけ続けてきた一人の人物の結末を見て、
大蛇丸もどこか心持が穏やかではないのか、
カブトを殺めることはありませんでした。

「今のアナタ…悪くないわね。」

大蛇丸

「いいわ。協力してあげる。付いてきなさい。」

いまのサスケの行く先を見てみたくなったのでしょう。

「…場所はどこだ」

急き立てる様子のサスケですが、
一方の大蛇丸は落ち着いています。

「フフ…。アナタもよく知ってる場所よ…。
 さぁ行きましょう。」