563 『五影集結』

1.五影集結(1)

「ちょうどいい……。
 これぐらいでなければ、試しがいがない。」

五影が結集したにもかかわらず、
焦ることもなくむしろこの状況ですら楽しんでいるようなマダラ。

「二人を回復する!!
 雷影、水影! 少しの間、時間稼ぎをたのむ!!」

綱手は先ほどまで先代影と戦っていたオオノキと我愛羅を回復させます。
一方メイとともにタッグを組んだエーは、
溶遁の術にあわせてマダラが回避したところを狙って拳打を当て、
メイの溶遁の海へ沈めます。さらに重ねて包み込むように溶遁。
しかしマダラは万華鏡写輪眼・須佐能乎による絶対防御によって、
強力な溶遁も全く効果がありません。
サスケに続いて2回目にこの須佐能乎を見るエー。
術の特性を知っているからか、
絶対防御に怯まず雷遁を纏った脅威の手刀、雷虐水平で切り崩しにかかります。
須佐能乎に亀裂が入ったところに、メイによる溶遁の術の集中砲火。
マダラに攻撃させる隙を与えない猛攻です。

「(…こ…こんなとこに居るのが場違いな気がしてくる。)」

忍連合の一介の忍程度では思わず気後れしてしまう、
スケールの大きな忍術の応酬です。

「…やって…ねーよな。…たぶん。」

と木ノ葉のジャケットを着た顎に長い黒ひげを携えた忍。
彼がゲンマ・ライドウとともにいた四代目火影護衛小隊の一人でしょう。
これだけの術を受けてもマダラは倒れていない――

「ああ…辺りをこんなにした奴だ。気を抜くな!」

と壊滅状況の辺りを見回すようにゲンマ。

「割って入るタイミングが無いぜ…」

ライドウも手出しできません。

「お前達はオレと一緒にもう一人の方を狙うぞ!
 協力しろ!!」

ドダイたちは起き上がってきた無(カブト)に狙いを定めます。

綱手のバアちゃん。大丈夫なのか!?
 額の印の術使うとババアになって倒れちまうだろ!?」

と心配そうにナルト。

「今回はペインの時とは番う…。
 自分一人の…しかもこの程度の傷を治しただけだ。
 まだまだチャクラはタップリ残してある!」

綱手。どうやら天送の術によるダメージはそれほど大きくなかった様子。
創造再生も1〜2割程度で抑えられたのでしょう。
それを聞いて、ナルトは分身ですが自分も回復するように頼みます。

「その必要はない…。」

綱手は言います。理由を聞きたがるナルトに、
綱手に代わってオオノキが答えます。

「…この戦争は、もうお前を守るだけのものじゃねーんじゃぜ…。」

ナルトは当惑したような表情を浮かべます。

「雷遁の瞬身に溶遁の血継限界か……。
 攻めはなかなかだが…」

ちょうどその時、粘度が高くいつまでも滴り落ちる溶遁を
須佐能乎が振り払ってマダラが出てきます。
といっても須佐能乎も完全ではなく、部分的にダメージを受けています。
ほぼ完全形態ともいえるマダラの須佐能乎をここまで破壊するとは、
さすがに影だけの実力を備えています。

「溶けにくい男は好きなんだけど……、
 アナタは遠慮したいわね。」

とメイ。須佐能乎をボロボロにしたところで、
マダラ本体は依然無傷なのは変わりありません。

「ワシのスピードでもガードしてくる。
 もっとスピードを…。ガードを崩すパワーを上げねば…!」

とエーのスピードをもってしても、
マダラは的確に対処してくるようです。

「守りはどうだ。」

攻めに転じたマダラの須佐能乎。
巨大なチャクラの勾玉が手裏剣のように飛んできます。
それに対して、オオノキと我愛羅によって巨大な岩と砂の人形が築き上げられ、
二重防壁となりガードします。

「この戦争はもう皆で守りあう戦いじゃぜ!」

とオオノキ。

「ならオレだって、ここでマダラを!!」

と参戦を申し出るナルトですが、
取り合ってもらえません。

「砂と岩の二重防壁か……。
 これもなかなかだな。」

冷静に分析するような口調で、マダラは一旦間を取ります。
ここぞとばかりに、一気呵成を仕掛けるべく動くオオノキ。

「来るぞ!! ここからは攻めに回る!!
 水影!! 雷影!! すぐ耳を貸せ!!」

自重を軽くしてエーの背に乗っかるオオノキ。
そのタイミングにあわせてメイが霧隠れの術を発動します。

2.五影集結(2)

「(霧隠れ…。
  これで輪廻眼の視界を鈍らせるつもりですね。)」

無(カブト)は、濃霧を発生させた意図をとらえます。
エーの体を軽くすることで、スピードアップを図るオオノキ。

「(土影め。雷影自身を軽くして、さらにスピードアップしたか…。
  だがそれだと…)
 あの時と同じだ。」

スピードはあったが体重が軽すぎたオオノキの一撃を受け止めたカブトとしては、
恐れることはないと判断しました。
物理的な解釈をしてみると、質量をm、速度をvとして、
衝撃で与えるエネルギーは運動エネルギーすなわち\frac{mv^2}{2}
大きいほど大きくなります。
質量を4分の1にした場合、同じ衝撃を与えるには速度は2倍にすれば良いのですが、
オオノキと違って、エーのような大きな前面面積を持った体では、
その前面面積に比例して空気抵抗は大きくなり、
単純な場合、速度が2倍になると空気抵抗は4倍になります。
つまり速度を上げた分だけ攻撃のロスも大きくなってしまう場合がありえます。
カブトが経験したのはまさにこのことでしょう。
ですがさすがのオオノキもこのことは折込済みです。
マダラに攻撃がヒットする瞬間、速度はそのままに、
超加重岩の術で質量を跳ね上げ、衝撃力を飛躍させます。
須佐能乎ごと吹き飛ばされるマダラ。

「聞けナルト…。
 …ワシはな…今回この戦争、
 …初めはただ暁を倒すためしかたなく手を組み忍連合に乗った。
 が…お前達と共に闘い…前と違う感情をワシは感じとる。
 今ワシは忍連合の土影としてここにいたいのだ…!」

ナルトに言い聞かせるように訳を話し始めるオオノキ。
最初は忍連合などオオノキにとって暁を倒すという名目のもと、
ただ自身の里、国を繁栄させるため利益を狙って利用するものだったのです。
しかし、段々とその感情は揺らいで、
一忍として一人間として、捨てていた己を取り戻し、
この戦いに身を投じる覚悟が生まれてきたのです。

「そして同じように…かつてバラバラだった忍の里々も、
 連合として一つになり変わろうとしている…。
 ならば…憎しみを生んできた忍の世の無秩序<システム>だって…
 もしかしたら変われるかもしれん!!」

繰り返されてきた過ちや憎しみの連鎖――
誰もが見て見ぬふりをしてきた問題。
それに向き合うことができるようになった――
いや、向き合ってみようと思うことができるようになったのです。
この忍連合によって。

「こっちのマダラはワシらにまかせい
 …必ずケリをつける!!
 それがこれまでの憎しみの呪いを止める一歩となる!!
 マダラと同じようにかつて憎しみを生み出してきたワシらには…
 そうしなければならない責任がある!!
 ここは安心してワシらにまかせろ!!
 ……じゃから、あっちのマダラはお前にまかせる!!
 それがこれからの希望を進める一歩となる!!」

過去を振り返り、その一端を担った自分に責がある。
ならば今こそその責を償うとき。オオノキは意気込みます。
続けて綱手

「古い奴、新しい奴…。
 そっちのマダラにも勝つことがこの戦争の終りを意味する!
 私たちはこの戦場でお前を守る!
 だからお前も向こうで戦い、私たちを守れ!!」

ナルトばかりを戦わせるわけにはいかない――
五影の意地みたいなものもあるでしょう。

「分身ナルト…。お前に五影からこの言葉を預ける。」

"授ける"のではなく"預ける"――
その意味するところはもちろん"両者の"勝利です。
片方だけでは意味がないのです。

「勝つぞ」

五影からの言葉を受け取ったナルト本体。
戦場へと向う仮面の男を不意打ち。
いよいよこの戦争のクライマックスへ突入です。