560 『うちはマダラ』

1.うちはマダラ(1)

「じゃあ…目の前のあいつが本物のマダラで…、
 今までマダラだと思ってたのは、
 …別の奴だったってことか?」

とナルトの言うように、
今まで仮面の男がマダラであることを
疑うことすらしてこなかった――
得たいの知れない暁に所属、
不気味な仮面から覗かせる写輪眼、
非常に高度な時空間系の忍術に代表される技術や力、
時節語られる真実味のある昔話、
そして壮大な野望――
マダラがどんな人物であるか実際に見たことはなくとも、
誰もが聞きしに及ぶその姿を思い浮かべて、
それと違うことのない"マダラ"を演じてきた仮面の男。
ある意味、"トビ"の実力はマダラ相当のものと言えます。
しかし正しく百聞は一見に如かず、というわけです。

「額宛ては…"忍"か……。
 忍装束は五大国それぞれだがな。
 連合の新しい軍団か…?」

とマダラ。彼が存命の時代から、
五大国の忍里それぞれ特有の装束は、
大きくは変わっていないことが窺えます。

「これは戦争のようなんでな。」

昔では考えられない五大国が同盟を結ぶような現在の状況を、
無は受け入れられているようです。

「面の男が誰なのか……。
 暁を利用してきた土影のアンタなら、
 推測できないのか?」

とテマリ。

「…思い当たる人物はおらん。
 とにかく敵が何者であれ、
 止めねばならんことに変わりはない!!」

この忍の世界に長く浸かってきたオオノキですら、
仮面の男に該当するような、
言うなればマダラに匹敵するような人物は思い当たらないのです。

……あいつのすることだ…。
 何か考えがあってのことなんだろうが……。
 あまり計画通りに事が運んでないようだな。
 オレをこんな形で復活させるとは…。

とマダラは独り言を話しますが、
ここに色々な真実の欠片が散りばめられていますので、
それを拾い集めてみましょう。

    • 1.「あいつのすること」

マダラにはこの穢土転生のような術を使って、
自分を蘇らせるような人物に心当たりがあるようです。
それは"あいつ"と呼べるほどの近しい人物だということ。
近しい人物とは、親族に限らず、友達や同志も含みます。
その人物とはつまり、マダラに一定の理解があり、
逆にマダラも一定の理解がある人物
です。

    • 2.「オレをこんな形で復活」「計画通りに事が運んでない」

そしてこれがもっとも重要なことで、
マダラの口ぶりから分かる最大の事実は、
マダラの復活は前もって計画されていた
ということです。そしてその復活も穢土転生なんかではなく、
もっと完全に近い形の復活が計画されていたと考えられます。

「…穢土転生だと……!?
 輪廻天生の術ではないのか…!?」

それはマダラ自身が語っているように、長門の輪廻天生だったはずです。
さて仮面の男が語るマダラの過去が本当だとすれば、
当時マダラは一族皆からそっぽを向かれてしまっていた状況です。
しかし千手優勢という情勢に危惧を抱き、
うちはの興隆のためにマダラの意志を継ぐ者もいた――
この背景をマダラ側を援護するように語る仮面の男は
明らかにマダラよりの人物と分かるのですが、もっと言えば、
自ら"マダラ"と名乗るほどマダラに傾倒している人物
ということになります。
マダラがその復活計画を知っているということは、
マダラが仮面の男に依頼したか、
あるいは仮面の男がマダラに持ちかけたかは分かりませんが、
いずれにしろその復活を担うのに全幅の信頼をおけるような人物
であることは間違いなさそうです。
同時に、兄であるマダラのために、
自らの写輪眼を差し出した弟・うちはイズナくらい
マダラを狂信している人物です。

2.うちはマダラ(2)

「この穢土転生の術者は誰だ?」

自分が知っている"あいつ"がこの術者なのか――
マダラは"穢土転生"という形で自分を復活させた状況と、
"あいつ"の考えに興味がわいたように話しかけます。
それに無はつれなく「さあな…」と答えるのですが、
なにやら何者かが乗っ取るような異変を感じ、無の意識は消えます。
代わりに術者であるカブトの意志が入り込み、
マダラへ話しかけます。

「ボクはカブト……。
 の協力者です……。」

彼とは仮面の男、トビのことでしょう。

「穢土転生越しに語るとは……、陰気な奴だ。」

マダラは"あいつ"でないことに落胆するように、そう言い放ちます。

「アナタの穢土転生は特別製です。
 全盛期以上に仕上げておきました。」

カブトはマダラに言います。

「全盛期だと……。
 お前…、オレの全盛期を知っているのか?」

全盛の頃の力をもって復活している――
自分の力がどれほどのものか知っている素振りに
思わず訊き返してしまうほどの自信。
その力の強大さが計り知れないことが窺えます。

「いえ…。
 だから……ここで見せて下さい。
 うちは伝説の力を…。」

とカブト。その会話の隙を狙って奇襲をかける我愛羅の砂。
マダラはそれをあっさりと避けて
大軍の前に立ちはだかります。

「よかろう…」

腕組みをといたマダラは、
『火遁・豪火滅却』という巨大な炎の壁を放ちます。
それは何人もの水陣壁をあわせてようやく消火できるほどの大きさです。
炎の壁を陽動に、敵陣へ突進。
倒した一人の忍から刀を奪い、
すさまじい竜巻のような剣技で周囲の敵全てを斬り倒します。

「ナルト。分身はいいから、あのモードになれ!!」

九尾チャクラに包まれた形態を解いて、
通常の影分身を増やすナルトにテマリは言います。

「実はもうなれねーんだ!
 さっきのでチャクラ使っちまってる!」

しかしナルトは九尾チャクラモードが使えないといいます。
隙を見計らって砂を操る我愛羅
剣撃を砂の盾で弾き、
仲間の大刀の一撃のために隙をつくります。
しかし写輪眼によって一瞬にして金縛り状態をつくりだされ、
凄まじい体術をもって後方の敵を巻き込むように蹴り飛ばされ潰されます。
圧倒的すぎる力。そんな生半可な連携は児戯に等しいかのようです。
今度は上方の死角からナルトが超大玉螺旋丸。
無が塵遁が使えないと踏んで、オオノキも加勢。
土遁・地動核でマダラの下の地面を盛り上げ、
螺旋丸との衝突のタイミングを急激に速めます。
これには流石のマダラも防ぎきれないとみたか、
攻防一体の万華鏡写輪眼・須佐能乎を発動します。
暴れまくるマダラの須佐能乎。
その隙にナルトは仙人モードへと変化、
風遁・螺旋手裏剣を発動します。
オオノキの土遁・軽重岩の術で砂が軽くなり、
より多くの量の砂を操ることができるようになった我愛羅は、
ナルトを全面的にサポートします。

「(サスケのと同じなら、外部からの攻撃は効かない…。
  ならば…マダラの足元にある砂を使えばいい…。)」

以前サスケと戦い、須佐能乎の特性をよく理解している我愛羅
須佐能乎の内部にある砂を使って、
マダラを外へ引きずりだします。
そこへナルトが螺旋手裏剣を叩き込むのです。

3.うちはマダラ(3)

「多すぎるな……」

決まったかに思われた決定的な一打。
しかし全くダメージはありません。
輪廻眼を発動したマダラは、
なんと長門の餓鬼道の術のように、
螺旋手裏剣のチャクラを吸い取ってしまったのです。

「こ…これってば…?
 何で…?
 何でこいつが輪廻眼になんだってばよ!?」

ナルトだけではありません。
一同が驚愕します。

「やはり憶測通り…。
 写輪眼の行き着く先は…輪廻眼でしたか。」

淡々とカブトはいいます。
万華鏡写輪眼をこえて輪廻眼へと進化させていたマダラ。

「オレがこの眼を開眼したのは、死の少し前だ。
 カブトとか言ったな……。
 この体に何をした?」

輪廻眼が使えるようになったのは、
死ぬ少し前の段階で全盛期の若かりし頃でないはず。
マダラは訝ります。

「だから言ったでしょう?
 ……全盛期以上に仕上げておいたと…。」

ほくそ笑むようにカブトは言います。

「貴様…オレの体の秘密を…。
 …あのうちはの石碑を読めもしないお前ごときが、
 解読したというのか?」

うちはの石碑に記された秘密。
写輪眼をカブトが持たないというのは、
穢土転生越しに術者の何かをマダラが読み取ったから
理解できたことなのでしょうか?

大蛇丸様とボクの長年の実験データを元に
 仮説を立ててみたまでです……。
 そして今は……、
 アナタがその仮説を証明してくれる……。
 六道仙人……あの神の力の一端に触れることができる。
 ボクの造ったアナタの力で……。」

マダラの力。そして写輪眼から輪廻眼への転移。
満足げといった様子でカブトが口にした言葉に、
マダラは腹を立てたように言います。

「勘違いするな。お前の造った力ではない……。」

直径にして街1つ分はありそうな非常に巨大な岩塊が、
突如として空から降ってきます。
神に等しき力を目の当たりにした忍連合の一同は
何をしていいやら、ただただその場に佇むのみです。