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1.増援到着(1)
カブトが無に口寄せさせたのは棺桶。
そう穢土転生の術だったのです。
亀裂が入り崩れ去る棺桶。
「やっとか……。
長門のガキを……うまく成長させたようだな。」
立ち上る土煙とともに現れた人物。
「…まさか次の口寄せが……。ククク……」
そう言って無もその意外さに唖然とすることを通り越して、
思わず笑ってしまいます。
「……お前は、……確か……。」
どうやらこの人物も無のことを知っている様子。
つまり二代目土影である無と同世代に活躍した大昔の人物です。
穢土転生されるということは、この人物は既に亡くなっているわけですね。
しかし前述の台詞からこの人物が長門を知っているということは、
時系列的に矛盾のようなものが生じます。
考えられるのは、一度生き返るか降霊術のような形で長門と接触した可能性です。
"のようなもの"と記したように、この人物が非常に長生きして、
長門とコンタクトをとった後、つい最近死んだという展開も無きにしも非ず。
「この穢土転生の術者は戦争をよく理解している。
アンタまで利用するとはな……。」
と無。それを聞いて、穢土転生された人物は、
「…穢土転生だと……!?
輪廻天生の術ではないのか…!?」
と驚くと同時に、
自分の両の手をしげしげと見つめます。
この人物は長門によって輪廻天生の術――木ノ葉の人々を復活させた術ですが、
すなわち完全復活させられる予定だったのです。
―
「大丈夫か、ヒナタ?」
なんとか同士討ちを避けることができたナルト。
ヒナタの方を振り返り声をかけます。
「ナ…ナルトくん。」
もちろんヒナタはなぜここにナルトが居るのか呑み込めていない様子。
きょとんとした様子でナルトの方を見るだけです。
駆けつけてきたキバやネジも事態をうまく把握できていない様子。
ニオイが異なるし、チャクラの性質も違って見える。
「お前本当にナルトか?
お前まで白い奴の変化じゃないだろうな!?」
当然のようなネジの質問。
もちろんナルトは自身を本物と言い張りますが、
それをどう証明すればいいかはうまく説明できません。
そのときヒナタは言います。
「ナルトくんだよ…。
目を見れば分かる。
それに何より私を助けてくれたし…。」
目を見れば分かる――
姿・形は変わっているように見えても、
その目語するところは本質を表しているものです。
とくに自分が好意を持つほど関心のある人物なら、
尚の事、そのようなところには敏感でしょう。
「……ごめんね…ナルトくん…。
皆、疑い深くなってるの。」
とヒナタは言います。
「もうオレが来たからには防戦に回る必要はねェ!!
偽者は片っ端から見つける!
一緒にやるぞ、皆!!」
ヒナタの方を見やり、ナルトは言います。
しかし力強く頷くことはできず俯き加減のヒナタ。
「(守らなきゃいけない人に…守られてばかりで…。
やっぱり私ってダメだ……。)」
そんなヒナタの心情を読み取ったようにナルトは声をかけます。
「…気にすんな、ヒナタ……。
オレだってお前に2度も守られてばかりじゃ、
カッコわりーしな!」
ペイン戦のときに身を挺して自分を庇おうとしてくれたヒナタを、
思い起こしながらナルトは言います。
「わ…わたしは別に…。
そんな気にしてなんか…」
取り繕うようにヒナタは言いますが、
「目を見りゃ分かる。
いちいち落ち込むな!
お前は強えーんだから!!」
とナルトはさっき受け取った言葉を返して、
ヒナタを奮い立たせます。
「うん!(ありがとう。)」
2.増援到着(2)
大きな巻物に虎を描き虎視眈々と封印する機会を窺うサイ。
封印術・虎視眈弾<こしたんだん>は巻物に描かれた虎が
対象を巻物の中に一気に引きずり込む封印術。
再不斬の遺した断刀・首斬り包丁を手に奮戦するカカシとの連携で
見事西瓜山河豚鬼を沈めます。残る忍刀七人衆はあと3人。
「…ついに敵の増援だ……。
…またずいぶんな数だな。」
連戦で疲労してきたカカシ、サイ、ガイたちの前に白ゼツの群れが現れます。
「白いな…。
チャクラごと変化して成り代わってるってのはこいつらか!?
ここからは荒れるぞ、カカシ…!」
覚悟を決めたとき、ナルトが駆けつけます。
「今回は量より質で勝負だってばよ!!」
影分身による多勢での攻撃はチャクラも残り少ないのか
そういうわけにはいかないという様子のナルト。
その代わり、九尾のチャクラを使ったこの形態で
一気呵成に戦況を好転させる作戦です。
―
「って訳だから……
前とは違うぜ…君麻呂!」
侍たちが戦っている戦場にも到着したナルト。
「君を見てると時が経過したのが分かる。」
屍骨脈と呪印を解放した状態の君麻呂。
ナルトと戦ったときの様子を思い起こしながら語ります。
あの時はナルトは君麻呂になかなか一太刀を見舞えませんでした。
しかし、現在は違う――と、
九尾のチャクラに包まれたナルトを見て、
君麻呂もただならぬ雰囲気に成長振りを感じ取っているようです。
「大きくなったのは背丈だけじゃないようじゃな。」
返り討ちにあってしまったと思われる侍――
彼を傀儡として操るチヨバアも口をそろえたように言います。
―
一方、黒ゼツと対峙する水影たちのもとにも駆けつけたナルト。
猛烈な突進攻撃をしますが、勢いをつけすぎて、
黒ゼツとは見当違いの方向の木に激突。
「…何なの…?」
困惑気味の水影。
その変わらぬ様子にため息といった様子の先輩、
コテツとイズモが印象的です。
―
「ナルトが全ての戦場へ到着したようです!
第4部隊は敵を全て封印した模様!
第1第2合流部隊もほぼ全ての敵を発見!!
破竹の勢いで進軍しています!!
第3部隊も同じく優勢のようです!!
第5部隊も同じく優勢!
医療部隊は全ての敵を鎮圧しました!」
戦況が著しく好転した様子に、
ナルトの参戦を後押しした火影・綱手はしたり顔といった様子。
雷影・エーも無表情ながらに相槌を打ちます。
「後は人柱力を連れて迫って来ているマダラさえ抑えれば……
そこに残りの戦力を集中させて皆でいっきにたたく!!」
あとは詰め将棋と確信した最中、
青が我愛羅のいる第4部隊に異常なチャクラを感知します。
勝利に酔いしれていた第4部隊のもとに、
静かに姿を現す無。そしてもう一人。
「こ……こいつは…。」
目を丸くするオオノキ。
しかしナルトは誰だか分からないようです。
「来たな…。
うちは…マダラ」
オオノキの言葉で、目の前にいるのがマダラだと理解したナルト。
面をつけた状態のマダラならば面識がありますが、
面がない姿を見るのは初めてといったところです。
「どういうことだ!?」
しかし直に疑問を感じた我愛羅。
訊き返すナルトに答えます。
「よく見ろ…奴の目…。アレは穢土転生だ!
死んだ者をこの世に転生するのが穢土転生の術…なら、
奴は死んでたってことになる。」
疑問を感じたのは我愛羅だけではありません。
「ちょ…ちょっと待ってよ…!
確か本部の情報では別にマダラが人柱力と、
迫って来てるって情報があったよな…!」
自分たちが"マダラ"と認識していた面の男。
しかし実際のうちはマダラは死んでいた――?
「なら…、面をしている男は…、
いったい何者なんじゃ!?」
オオノキも面食らったように呟きます。
トビに啖呵を切って見せたカブトの切り札の一つ。
彼の前で召喚してみせたあの棺の正体はうちはマダラだった訳です。
それではマダラと名乗り、この戦争を引き起こした仮面の男は何者なのか?
長い長い伏線がようやく明かされていきそうです。