657『うちはマダラ、参る』

1.うちはマダラ、参る(1)

とうとう《輪廻天生の術》により甦ってしまったマダラ。
しかし起き抜けのもっとも隙があるときを狙わない手はありません。
突如、マダラの身体を黒い炎が包みます。

「旧時代の遺物がしゃしゃるな。」

サイの墨絵で描かれた鳥で飛来するサスケ。
万華鏡写輪眼を見開き《天照》の黒炎を操ります。

「オレに届きもせん砂利ごときが…
 それはこちらのセリフだ。」

しかし黒炎に包まれながらも、
まるでその熱さを感じることのないかのように
涼しげな様子のマダラ。
流石にマダラには《天照》すら全く効果の無い忍術です。
そんな最中、マダラが敢えて目を閉じたことに気付く柱間。

「サスケ!
 こいつにただ術をぶつけても
 意味はねェーってばよ。
 こいつは忍術を吸収すんだよ!」

ナルトが言ったのも束の間、
黒炎のエネルギーはみるみるうちにマダラに吸収され、
黒炎は徐々に消えてしまいます。

「!? それは!?」

黒炎に隠れていたマダラの胸腹部が露わになり、
驚愕する柱間。

「"相反する二つは作用し合い森羅万象を得る"。
 柱間。かつてうちはの石碑の前で
 お前に語ったのを覚えているか?」

とマダラ。

「相反する二つの力が協力することで
 本当の幸せがあると記されている石碑だと。」

マダラがどのようなことを考えていたか
結局分からずじまいだったあのやりとり。
それを思い起こすように、柱間は言います。

「だが…別のとらえ方もできると言ったな…。
 うちはと千手…
 両方の力を手にした者が本当の幸せを手にする。
 そういうとらえ方もできやしないか…? 柱間よ。」

露わになった柱間の一部。
それを見せつけるようにマダラは言います。

「里を離れてなおも色々と画策していたようだな。」

千手とうちは――
その強大な二つの力を協力するのではなく、
無理矢理得ることを望んだマダラの結論。

「イヤ…。これは部下の仲間が
 偶然仕組んだものだ。
 オレと同じ様な事を考えた輩がいたらしいな。」

カブトによって柱間を融合した状態で
再びこの世に甦ってきたマダラ。
しかし考え方に相違はないようです。

「だが…再び生を受けた事は計画通りのものだ。」

《輪廻天生の術》――
それによって生まれ変わることは、
マダラの当初の計画通り。

「順序が逆になったがまぁいい……」

印を結び穢土転生体の柱間の動きを封ずると、間合いをつめ、
柱間が何やらチャクラを吸収するかのように手を翳します。

「これが仙術チャクラか……
 …なんだ。この程度の力か…
 簡単に扱えそうだな。」

ぼろぼろとなった柱間から
勝ち誇るように顔を背けるマダラ。
その背後からサスケが剣を突き出します。

「それこそこちらのチャンスだ。
 これで確実に殺して
 あの世に送り返す事ができる。
 穢土転生のままが良かったと…
 悔やみながら逝け!」

甦ったばかりとはいえ、
やはり忍として最高峰だったゆえに
サスケの鋭い剣線も空を斬るばかりです。

2.うちはマダラ、参る(2)

「マダラが…、…生き返って…しまった…」

異変を察知したカカシにオビトが言います。

「オビト…
 コレデオ前モ用済ミダ
 輪廻天生ヲシタオマエハ死ヌ。」

と黒ゼツ。

「サテ最後ノ仕事ダ。
 左眼ハ返シテモラウ。」

ミナトもカカシも揃って止めようとしますが、
オビトの左半身に黒ゼツが完全に融合し、
何かする手立ても奪われます。

「オレガ取リ付イテイル間、
 少シハ長持チスルダロウナ
 コイツモ。」

と黒ゼツ。
そのあまりにも異様で不気味な生命体に、
ミナトも思わず訊きます。

「君は何者だい?
 人……ではないね。」

むくっとオビトの身体を起き上がらせると、
薄ら笑みを浮かべながら言います。

「オレハマダラノ意志ソノモノダ。
 マダラノ邪魔ヲスルモノハ排除スル。」

と黒ゼツ。
オビトの過去を知っている読書の我々は知っていますが、
カカシもオビトもこの事は初耳です。

「コノオビトモソウダガ、オ前達ハ、
 マダラノ計画ヲ甘ク見スギダ。
 ソシテオレノ事モナ。」

長次郎が取り押さえたかに見えましたが、
黒ゼツは強かにも次の行動を窺っていました。
マダラの命令があるまで、
地中を通りオビトのところで待機していたのです。

「オビトガ死ヌマデノ間、
 コノ体ヲ使ッテオ前ラト戦ウ。
 マダラノ策ニ裏目ニ行動シオッタ役立タズダ。
 最後グライハ役ニ立ッテモラワネバナ。」

見開かれる輪廻眼。
疲弊し生気もない右半身とは対照的です。

一方、サスケとマダラ。
サスケ刺突に向かったその刀を
白刃取りされて動きを止められます。

「…だが…殺すには惜しい眼だ。
 どうだ…同じうちはの生き残りとして、
 オレと組む気はないか?」

と訊ねるマダラに、
キッとした目で睨み返すサスケ。

「勘違いするな。
 お前は死んだ人間だ。」

とサスケ。

「まあいい…。
 どのみちお前に残された時間は少ないぞ。」

とマダラ。
《火遁・灰塵隠れの術》で辺りを熱気を帯びた
灰で覆ってしまいます。

「(マダラはかつての力を取り戻している。
  マズイ…。奴が次に狙うのは――)」

マダラの狙いに気付く柱間。
横たわる忍連合軍の忍たちを足蹴にし
チャクラを吸収して広い荒野を見渡すマダラ。

「さぁ、次はお前らをいただくぞ。
 畜生共。」

見据えたのは尾獣たちです。