1.深まるシスイの謎(1)

550話『別天神』において、
シスイが万華鏡写輪眼を開眼していたことが
明らかになりました。
かつてイタチが兄のように慕っていたシスイ。

「自己犠牲…。
 …陰から平和を支える名も無き忍…。
 それが本当の忍。
 シスイがオレに教えてくれたものだ。」

本当の忍とはどうあるべきか、
彼に教えられたところによるものが大きいと言えます。

「シスイは片眼を里を守る為に使えとオレに託し、
 眼の存在を隠すよう頼み死んだ。
 後、眼をめぐる戦いが起きぬよう、
 己の眼を潰したように見せかけ、己の存在を消した。
 オレはその手伝いをした。
 シスイが最後にオレと会った時は、
 すでにダンゾウに片眼を奪われた後だったが…。」

同じく550話『別天神』で、
シスイは眼をめぐる戦いが起きないように、
――そのときすでにダンゾウに片目を奪われていたようですが、
イタチにもう片方の眼を預けて、
己の眼を潰したと見せかけ存在を消したといいます。
このときイタチは"手伝い"をしたようですが、
イタチの万華鏡開眼はこのときで間違いないでしょう。


(i)万華鏡写輪眼について
少し脱線しますが万華鏡写輪眼の開眼について、

    • 最も親しい友を殺すこと

が挙げられていました。実際、225話『闇の中』で、
イタチが一族事件を起こし弟サスケと対峙したとき、

「兄さんがシスイさんを殺したのかよォ!?」

と問いかけられたイタチは、

「そのお陰でこの"眼"を手に入れた。」

と返しています。
この流れを見てみると、おそらくこのとき、
既に開眼者であるシスイが
イタチに万華鏡写輪眼を開眼させる方法を教え、
イタチが実際にそれを行った結果、得られたわけですから、
イタチは万華鏡写輪眼はこのようにしてだけ得られるものだ、
と解釈してしまっている節があるのではないかと思われます。
しかし実際はカカシやサスケの開眼では"親しい友"を
しかも"殺す"ことに限らない可能性を秘めているので、
万華鏡写輪眼開眼の条件はまだ完全ではないと言えます。
もっとも、401話『幻術』においてトビも、

「呪印からの解放…、
 そして最も親しい者の死…
 お前に万華鏡を開眼させるための戦い
でもあった。」

と語っていることから、その条件についてはやはり、
"最も親しい者の死"である可能性が非常に高いです。
過去の記事ですが【写輪眼対比13・サスケの万華鏡写輪眼(ii)】*1では、
"罪の証"のような強烈な心へのインパクトが、
万華鏡写輪眼開眼に寄与していると考えましたが、懐かしいところです。


(ii)ダンゾウについて
もう一つ気になることがあります。
ダンゾウに眼を奪われたというシスイですが、
復讐心に駆り立てられることなく、
あえて自害することで戦いを避けるようにしています。
無論、忍とは自己犠牲にあるべきで、
それによって無駄な戦いが生ずることを避けた
と考えるべきなのでしょうか。


任務に疲れた。
このままでは うちはに
未来は無い。
そして、オレにも…。
これ以上“道”に
背くことは出来ない

シスイの遺書と思われるものに綴られた文章。
眼を失っていたというシスイですので
イタチが"手伝い"のときに、
筆跡をコピーして書いた可能性はありますが、
シスイの言葉、すなわち遺言であると考えてよいでしょう。

【変貌と疑惑5・シスイの遺書】*2では、
その意味深な文章について、
特に"道"についてあれやこれや思索しました。
結局この"道"とはダンゾウ含む木ノ葉中枢を指している
と考えるのが筋が通りそうです。
遺書にあるようにシスイは、
「このままではうちはに未来はない」ということから、

    • うちは一族事件が起こされること

を知っていて、そしてそれが

    • うちは一族がクーデターを画策していること

に起因することも知っていたと考えることができます。
その上であえてどっちに牙を向けることもなく、

    • ダンゾウに片眼を奪われていた

という事実は何を指すのでしょうか?


シスイが里の平和を望んでいたというイタチの言葉に
嘘が無かったのであれば、シスイは自分の片目を捧げてでも
木ノ葉中枢と一族の衝突を回避させようとしていたはずです。
それは端的には彼のモットーである"自己犠牲"に通じています。
そうすることで時間を稼ぎ、
どうにか木ノ葉中枢の転覆を謀ろうとしている一族を
思いとどまらせるべくいろいろ動いていたのかもしれません。
もし私利私欲でダンゾウがシスイの眼を
文字通り"奪って"いたなら、
うちは一族の謀反によって木ノ葉に戦争の火種が生ずることを
阻止するという大目的があったとしても、
イタチは木ノ葉中枢の命令にきっと背いていたはずです。
そんなシスイの姿をイタチは知っていたから、
単に"一族想い"という言葉で彼のことを片付ける同胞に、

「見た目や思い込みだけで…、
 人を判断しない方がいいですよ。」

と牽制したような言い方をしたのでしょう。
しかし、結局ダンゾウに片目を捧げるも
一族を宥めることはままならず、
一族抹殺の事態を避けることができなかった――
それゆえに"任務に疲れ"てしまった、
というストーリーが考えられます。
"一族会合の日をわざわざ選んで自害する"という理由も、
彼の思いを理解してもらえない一族のことを考えれば、
ある程度納得がいくところです。


2.深まるシスイの謎(2)

しかし、ここのところ
やたらとシスイの名前が挙がっていることに、
事はそう単純じゃなさそうな気配もあります。

「お前が開眼すれば、
 オレを含め万華鏡写輪眼を扱う者は三人になる。」

225話『闇の中』でイタチが言った万華鏡写輪眼の第三者
それはいったい誰なのかはずっと後で、
サスケとイタチの決闘のときになって明かされます。
それは"シスイ"ではなくて"マダラ"でした。
385話『万華鏡の秘密』にて、

「一族を皆殺しにしたあのタイミングで、
 アンタはもう一人の存在を口にした…。
 アンタが殺さなかったうちは…
 そいつはつまり協力者だってことだ。
 いくらアンタでも警務部隊を
 一人で殺れたハズがない。」

とのサスケの詰問に、
イタチはサスケがちゃんと気づいた事を称えるとともに、
もう一人の名前を挙げます。

「うちはマダラだ。
 木ノ葉隠れ創設者の一人…。
 万華鏡写輪眼を最初に開眼した男だ。」

とうちはマダラの名を挙げます。
木ノ葉創設者のマダラなどとっくに死んでいるはずだ、
と憤慨するサスケにイタチはつづけます。

「マダラが死んでるというのは、
 お前の勝手な思い込みだ。」

サスケにマダラという存在が、
未だ常識を超えて存在していることを主張しています。

「マダラ…一体何者だ?」

と訊ねるサスケに、

「その眼で九尾を手懐けた最初の男。
 オレの相棒であり師であり、不滅の男。
 そしてこの万華鏡写輪眼のもう一つの秘密を
 暴いた唯一の男。」

と話しています。
イタチにとって"マダラ"とは相棒であり師であったといいます。
一方のトビも、400話『地獄の中で』にて、

「事実あの頃…、このオレも戦争の機を窺っていた。
 千手の木ノ葉にも、うちはにも恨みがあったからな。
 だがイタチはそれすら気付いていた。
 オレの存在に唯一気付いていたのだ。
 イタチはオレに接触を求め、ある条件を出してきた。
 うちは一族への復讐の手引きをする代わりに…、
 里側には手を出すなというものだ。
 同胞をこの手にかける手伝いをすると…」

と言っていますので、イタチとマダラの関係に
整合性はとれているといえます。
しかし、よくよく考えてみると、ここまでイタチに
トビをマダラと確信させる理由はなんだったのでしょうか?
万華鏡写輪眼の秘密や、里の興隆、
うちは一族についてよく知っているからでしょうか?
その恐るべき時空間忍術でしょうか?
目の前にいる仮面の男がマダラだと確信させる何かがあったはずですが、
それは語られていません。

見方を変えて、そもそもそんな根拠や道理が無くても、
シスイの瞳力があれば、イタチをここまで信じさせることができます。
イタチはサスケとの決闘時(385話『万華鏡の秘密』)で、

「…人は誰もが己の知識や認識に頼り、
 縛られ生きている。
 それを現実という名で呼んでな。
 しかし知識や認識とは曖昧なモノだ。
 その現実は幻かもしれない。

 人は皆思い込みの中で生きている。
 そうは考えられないか?」

とも言っています。
しかし当の本人すら気付いていないまま、本人が言っているように、
イタチの"マダラが存在する"という認識も幻であったとしたら?
――もう一度550話『別天神』に立ち返りましょう。

「シスイの瞳力は対象者が幻術にかけられたと
 自覚する事なく、操る事ができる最強幻術を生む。」

シスイの瞳力は、さんざん恐れられていますが、
幻術にかけられたと自覚することなく、
相手を操ることができる幻術。
前章ではシスイを、復讐心を忘れ自己犠牲に貫徹し
平和を望んだ正義の忍のように扱いましたが、
もしもですよ、
木ノ葉と一族の両方に復讐を遂げようと思う人物がいるなら、
シスイほどおあつらえ向きな人物はいません。

「シスイの瞳術は相手の脳内に入り、
 あたかも己の意志であるかのように
 疑似体験させ操る術だった。
 操られている事にすら気付かない…
 瞳術でも最高クラス!」

459話『サクラの決意』で、
ダンゾウの右目にはシスイの眼があることが
青によって確かにされています。
550話『別天神』でイタチがナルトに託した烏の左眼にあるのも、
別天神の術の発動から確かにシスイの左眼といえるでしょう。

ですがその左眼をイタチに渡す時点までは、
その幻術を使ってマダラを装っていたとしても、
(イタチだけ"気付いて"接触しているという不自然さも解消)
南賀ノ川入水自殺のとき、左眼を渡す前に幻術にかけ、
自分が死んだと見せかけることも可能です。
イタチのことや木ノ葉のことを知りすぎているのも、
シスイであったなら納得できます。
仮面を一瞬とって見せた姿もどことなく似ている?気もします。
過去の記事ですが【トビについて3】*3も考慮して、
トビ=シスイ…と持っていきたいところですが、
重大な矛盾点や疑問点が生じます。
1つ目はナルト誕生時にもこの仮面の男は動いていたこと。
シスイはイタチより年上とはいえ、さして歳が離れているとは思えません。
ナルト誕生時、仮面の男の体格は確かにミナトに張り合うくらい大人でした。
とはいえシスイは青やビーといった他里の人物に、
その能力や名が知られているので、
第三次忍界大戦の戦場で活躍していたことは窺えます。
この第三次忍界大戦の終結と九尾事件はわりと近いので、
つまりそれくらいの年齢であったとすると、
九尾事件当時齢4歳であったイタチに仮に大幅に10歳くらい足して、
シスイが14歳ほどであったにしても、
者の書にあるトビの身長175.0 [cm] なので
少し高すぎなような気がします。
2つ目はトビ=シスイならいま仮面の奥から覗かせる
右目の写輪眼は結局誰のものか、ということ。
その写輪眼がマダラのものであって、
シスイの身体がマダラに乗っ取られているとすれば、
辻褄は合うのですが…ムリヤリですね。
3つ目はマダラや里の初期のことについて詳しく知りすぎていることです。
これも2つ目の疑問に随伴する形ですが、
仮にマダラに乗っ取られていたとしても1つ目の矛盾に突き当たります。
4つ目は入水自殺のシスイの遺体。
特に言及されていませんが、やはりシスイの水死体があったから
警務部隊は本格的な捜査を行っていたのではないかと思われる点、です。
さすがにメモ書きと会合に来なかった程度で、
大事にはならないでしょうからね。
やはりトビ≠シスイという方向性は固いような気もします。
とはいえ、なぜかシスイという人物には何かあるのでは、
とも思えてしまうのです。