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1.接触
一つわだかまりがあります。
それは、デイダラ戦の後に、
どうして急にイタチが自らサスケに接触するようになったのか、ということです。
それまでは会っても全く見向きもしないような素振りを見せていたのに、
「一人でうちはのアジトに来い。そこで決着をつけさせてやる。」
――と、影分身を使ってまで自ら誘います。
「そしていつかオレと同じ“眼”を持って、オレの前に来い」
そう言い残して月日は経ち、ついに兄弟対決の決着となる日が来ました。
「お前にはオレの死に様が見えてるらしいが…
万華鏡写輪眼を持つオレに勝てはしない。
お前の目的は残念だが幻に終わる。
なぜならお前は万華鏡を持ってはいない。」
ところがサスケは万華鏡写輪眼を開眼しなかった。
そしてイタチはそれを知っていたのです。
しかし、それでもサスケと戦う必要があった。
万華鏡写輪眼以外の目的であったということになります。
そう、眼を奪おうとしていたのは“見せかけ”に過ぎなかったのです。
「貴様など…殺す価値も無い。…愚かなる弟よ……。
このオレを殺したくば恨め! 憎め!
そしてみにくく生き延びるがいい………
逃げて…逃げて…生にしがみつくがいい。」
自分を憎ませてまで、達成されるべきイタチの本当の目的。
「お前に術をかけていたのだ。オレを殺すため…
いやお前からオレを遠ざけるためとでもいおうか…」
弟、サスケを守ること――マダラから守ることだった。
しかし一族事件の日以来自分がついていてやることは何らかの事情が許さなかった。
そこでとった方法は、自分を憎ませること。
そして最終的には万華鏡写輪眼をも手に入れ、
マダラ以上の力を手に入れて欲しいと思っていたのではないかと考えられます。
そう、つまり一族事件のあの日以来、
弟にマダラの手が伸びることをイタチは危惧していたことになります。
当時、マダラはイタチに眼をつけていたはずです。
しかし、イタチは何らかの形でいずれは弟へと
マダラの手が伸びていくのを察知していたのではないでしょうか。
そして、そのことを防ぎたかった。
マダラからサスケを守りたかった――とするなら、
デイダラ戦でトビがサスケに接触したのを機に、
イタチが動き始めたのも納得がいくでしょう。
トビがサスケに手を伸ばす前に、
どうしてもサスケにマダラのことを伝える必要があった。
そして“仕掛け”を施し、マダラを亡き者にする必要があったのです。
明らかにイタチとマダラの間には軋轢があります。
2.軋轢
「忍の世の為、木ノ葉の為、
そして何より弟のお前の為に全てを懸けた――――
兄うちはイタチの生き様を!!」
がイタチのスタンスだったとするなら、
トビの立場はいったいどういうものでしょうか?
暁の最終目的は世界征服。
暁を牛耳る立場にあるならば、
暁の目標=トビ(マダラ)の目標といっても差し支えはないかもしれません。
「忍は戦う為に存在する。国の為に命懸けで働いた見返りがこの有り様だ。」
ペインも言っているように、“暁”という組織は結局、
忍が忍として真っ当に働けるように、そういう場を提供する組織であろうとしています。
つまりは“忍の世の為”という理念が根底には存在するのです。
だとするならマダラの思想にも“忍の世の為”という考え方があるはずです。
ところが同じく“忍の世の為”という考えをもつイタチとは軋轢があった――
それはサスケを巡ってそうであった、というのはもちろん考えられますが、
もう一つ、“忍の世”という概念自体がイタチとマダラとでずれていたと考えられます。
「今のマダラは負け犬だ…。うちはの本当の高みを手にするのは奴じゃない。
…あの男、マダラを超え、本当の高みへと近づくのはこのオレだ。」
負け犬――、イタチはマダラをそのようにとらえていました。
己の力を追い求めるあまり、弟の眼を奪ってまで万華鏡にとりつかれたマダラ。
本当に大切なモノなど何も分かっていない――そう思っていたのでしょうか?
「一族などと…ちっぽけなモノに執着するから、本当に大切なモノを見失う…。
本当の変化とは規制や制約…予感や想像の枠に収まりきっていては出来ない。」
イタチにとって本当に大切なモノ――、それは紛れもなくサスケでした。