万華鏡写輪眼が三人いることに意味があるかどうか。
前回【写輪眼対比6・『三人』いると…】*1では
何らかの術の発動について意味があるとしました。
今回はイタチやトビの目的の観点から、この三人に意味があるかどうか検討していきたいと思います。

1.マダラの目的

まずはマダラに関する断片的な情報を整理してみます。
写輪眼の力を極め、みるみるうちに、うちは一族の先頭として、
一族をまとめる地位にまで上り詰めたマダラ。
初代火影となる千手一族のリーダーと組み、木の葉を組織。
そして最終的には、初代火影と覇権をめぐって争い、
敗れたマダラは暁を隠れ蓑に身を潜めた――
というのがイタチが語ったあらましです。
そしてもう一つ。万華鏡の力を使うあまり、
盲目となっていくその眼に絶望したマダラは
取り憑かれた様に弟の眼を奪い、永遠の万華鏡写輪眼を手に入れました。

「その瞳力とワシ以上に禍々しいチャクラ…
 かつてのうちはマダラと同じだな…」

ナルトの内面にある世界に干渉し、
そこに封じられている九尾を見破ったばかりか、
力を押さえ込むまでの瞳力を見せたサスケ。
九尾はその姿に、かつてのうちはマダラを感じています。
その二人を繋ぐキーワードは“禍々しさ”。
復讐に取り憑かれていたサスケと、
万華鏡写輪眼の力に取り憑かれていたマダラ。
二人の眼光はあまりにも禍々しく似通っていたのでしょう。

九尾すらその“眼”で手懐けていたマダラ。
世界を征服し忍の理想の世をつくりだすことを理念とする暁を組織し、
九つの尾獣を集めはじめます。

「全てが本来の形に戻るのだ…
 写輪眼の本当の力が…このうちはマダラの力が。」

マダラにとって、それは元に戻るために避けて通れない道のようです。
しかし、そんなマダラがサスケに接触してくるのはなぜでしょうか?

「次の脱皮で蛇のままか、それとも鷹に変わるか。見モノだ…サスケ。」

彼の野望の達成にはサスケが鍵となっているらしいことが、読み取れます。

2.三人

トビの素顔はマダラとは少し違います。
もしもトビがマダラだとするなら、
トビの肉体にマダラが何らかの形で
憑依しているようなものと考えられます。
本来の形に戻る…うちはマダラの力を全て出し切れない“トビ”は、
サスケを理想の器として考えているということでしょうか?
あるいは、サスケの眼にこそ鍵があるのかもしれません。

「お前もオレと同じ。万華鏡写輪眼を開眼しうる者だ。」

サスケには万華鏡写輪眼を開眼する素質があったことをイタチは見抜いています。

「お前が開眼すれば、オレを含め万華鏡写輪眼を扱う者は三人になる。
 そうなれば……クク、お前を生かしておく意味もある。」

自分を憎ませてまでイタチはサスケを守ろうとしました。
生かしておく意味がある――
流れから万華鏡写輪眼が“三人”いることに意味があるようにとれます。
しかし、イタチはサスケの眼に天照を仕組んでトビ(マダラ)を亡き者にしようとしたように、
仮にサスケが万華鏡写輪眼を開眼していたとしても、
マダラが倒されれば三人でなくなりますので、
この三人が揃うことは真にイタチの意志ではなかったことになります。
――考えられるとすれば、トビ(マダラ)の意志。
ですが、結局はトビ(マダラ)もイタチを失い、
代わりにサスケが手に入ればいいようなことを仄めかしています。

「いい感じだ…写輪眼の力を十二分に発揮していた…。
 …アレはイタチ以上の目になる…。」
「機は熟した。奴も覚悟は決まってるだろう…
 そう長くはないからな。」

トビ(マダラ)も、こと三人いることにこだわってはいません。
“本来の形”にもあまりつながりはなさそうです。
であるとすれば、この三人とはいったい何だったのでしょうか?

「いくらアンタでも警務部隊を一人で殺れるハズがない。」
「…ちゃんと気付いたか。」

もう一人の存在に気づかせるため…。
優しい兄を“演じていた”と言い切るくらいに、自分を憎ませ続けることで、
サスケを守ろうとしていたイタチ。
幼すぎて今は明かせない――という事情があったのでしょう。
そのもう一人の存在をにおわせることで、イタチへの憎しみだけに縛られることなく、
うちは一族とはどういうものか、サスケの客観的な姿勢を喚起しようとしたのではないでしょうか?
いずれは対峙するであろうマダラという存在を理解させるためだったともいえます。