396 『自己紹介』

1.自己紹介(1)

仮面の奥から覗かせる不気味な写輪眼。
カカシ、ナルト、キバ、シノ、ヤマト、ヒナタ、サイが
めいめいに驚きの表情を見せます。

「こいつ…一体何者だ!?」

カカシがその眼をもって正体を見極めようとするのを遮るように手を翳すと

「じゃあな」

と言ってトビは空間に呑みこまれる様に、次第に姿を消していきます。
この消え方はカカシの万華鏡写輪眼による強制空間転移に
どことなく似ているようにも思えます。
やはり写輪眼の力なのでしょうか?
一行もサスケのもとへ急ぎます。
四時の方向――クロックポジションでは12時(0時)を正面としますので、
東南東の方角に黒い靄をとらえます。
ヒナタの白眼が、黒く燃え盛る炎が森を焼いている様子をとらえます。
カカシは“天照”の火であることに気づきます。

2.自己紹介(2)

トビの眼下には平行に横たわったサスケとイタチ。
暗雲、そして雨。イタチは何をもとらえていない虚ろな眼をしています。
息絶えているようです。しばらく経ってトビが到着します。

「遅かったな。」
「アンタじゃないんだから、そんなに速く移動出来ないよ。

トビは相当な速さで移動できるようです。

「見てたならちゃんと撮ってあるんだろうな?」
「安心シロ全テ記録シテアル」
「後でじっくりと見せてもらう。
 イタチの死体は持っていく。すぐに行くぞ。」

ゼツは再生機器のような録画・再生機能を持っているようです。
あわせてトビがサスケとイタチの戦いを見る必要があることを暗に仄めかしています。
つまりあの戦いにはトビにとって何か重要な、
変化のようなものがあったはずなのです。

「ニオイを確認した! 奴らもうサスケの所に着いてやがる!」

一方全速力で追う木ノ葉一行は、キバがサスケと、トビ、ゼツの存在を察知します。
しばらく進むと行く手を猛々しい黒い炎が塞いでいます。

「これが“天照”か…初めて見る。」

カカシは天照の存在は知っていたようですが、
実際に目の当たりにしたのは、今回が初めてのようです。
ヤマトの土遁・土流割により、
大地を褶曲、分割し、道を切り開きます。
カカシは万華鏡写輪眼になり、一行はサスケのもとへと急ぎます。
しかし、一足遅く、項垂れる一行。ナルトは歯を噛みしめます。

3.自己紹介(3)

サスケは意識が戻ると、暗い洞窟のようなところにいることに気がつきます。

「手当てはしておいた。お前が勝った。」

闇の中から聞こえる声。
サスケの脳裏にはイタチの死に様が浮かび上がります。
達成感はなく、やるせなさが残る、何か虚ろな表情で、
その目を声のする闇の方へと向けます。
イタチの死を願っていたとはいえ、やはり本望でなかったのでしょう。

「一度会ったな。前は敵としてだが。」

闇の中より姿をあらわしたトビ。暁のマントは脱いでおり、
その黒装束は闇と同化し、仮面だけがぼぅっと浮き出ています。

デイダラの事なら気にしなくていい。
 オレはお前の敵じゃない。」

デイダラ戦のときにあの場にいたのもやはりこのトビ。
トビがおどけていた理由、トビの二重性の謎は深まります。

「オレはお前にあることを伝えるためにここへ連れて来た。」

しかし、サスケの眼はうつろなまま、やがてそっぽを向いてしまいます。

「興味まるで無しか…。こういう風に言ったら、少しは聞く気になるか…?
 うちはイタチについてだ。」

イタチという言葉にサスケが反応します。

「そう…お前は兄の事を知ってるようで何も知らない…」

相変わらず眼に輝きがないサスケに、トビはおもむろに自分の仮面に手をかけます。

「仕方ない…自己紹介から始めようか…
 オレはお前と同じ…うちは一族の生き残りであり…
 うちはイタチの真実を知る者だよ。」

少しだけ外された仮面から見えるトビの素顔。
マダラと目元の皺は似ているものの、マダラとは少し違う――
オビトと同じく細い一直線の眉を持っているけども、どことなく違う――
ゼツの発言にある、“そんなに速く”という言葉から、
瞬身の“シスイ”が思い起こされます。
彼ならばうちはイタチの真実を知っていた――の可能性は高いですが、
いくつかの矛盾と不自然な点はあります。*1 *2
サスケの左眼だけが驚きの表情を隠せないまま写輪眼になります。