551 『長門を止めろ』

1.長門を止めろ(1)

長門の人間道の術にかかり
ナルトは魂を抜き取られるような感覚に襲われます。
引き寄せられる"万象天引"の術、
強い斥力で遠ざけられる"神羅天征"の術、
口寄せの術、忍術チャクラを吸い取る餓鬼道の"封術吸印"の術、
どれも見たことはありますが、

「ペインの術、全部使えるみてーだけどもよォ!
 こ…この術は知らねーぞォォ!?」

シズネらが苦しんだ人間道の術を、
ナルトは先の戦いで見ることないままだったのです。
螺旋丸を使って、なんとか術から逃れようとするナルト。
しかし、もちろん暖簾に腕押しとはこの事です。

「だーそうだ!
 忍術を吸い取るってさっき確認したばっかじゃん!
 オレのアホ!!」

吸収され長門に同化してしまう螺旋丸。
長門は完全に操られ、ナルトの声も届いていません。
続いて地獄道を発動。
背後に禍々しい閻魔が現れます。
これはナルトも見たことがあります。

「(人間道で魂を引き抜き、一旦殺して、
  地獄道で魂と肉体を隠し持ち帰って
  ボクの元で生き返らせる…
  マダラに見つかる事なく
  人柱力を僕のものにできる方法っと…。
  さて…、他にどんなのがあったけなぁ…)」

とやたらペインの能力に詳しいカブトの策略。
穢土転生の術者は、操る対象の能力について、
対象が甦ったときに同時にその情報も得ているのでしょう。
九尾チャクラモードとはいえ、
魂を引き抜こうとする人間道の術に苦戦するナルト。
気が抜けているというか、
何か本気で戦おうという感じにはなれないのでしょう。
そこへ、ビーが助けに入ります。
しかし接近するビーに修羅道の術が炸裂。
からくりの腕がビーを引き止めます。
それだけでなく砲門が開き、ビーも一転ピンチです。

「ナルト。九尾との綱引きを思い出せ!!」

とナルトにアドバイスを残し、
自らは砲撃に備えます。
そのとき巨大な何者かの攻撃によって、間一髪、
ナルト、ビーと長門が引き離されます。
イタチの万華鏡写輪眼、須佐能乎です。

2.長門を止めろ(2)

「そうだ……。
 まだ、星にして捕えるってのもあるな…。」

しかしイタチの加勢で形勢を立て直したものの、
まだ優勢に立ったわけではありませんでした。
"ペイン"という死体を操ってるわけではない
長門本来の術の威力。
ナルトがビーやイタチに警戒を促します。
邪悪な笑みを浮かべるカブトは、
もちろんそんな事は把握済みです。
長門に地爆天星の術を放たせます。

「こ…この術を前にやられた!
 マジヤベーんだってばよ!!
 これも食らったら終わりだ!」

長門の手を離れた瞬間から、
地上のあらゆるものを引きつけ飲み込む黒い塊。

「食らって終わりなら、
 お前は何で生きてる?」

と冷静に返すイタチ。

「アハハハ。
 なら大丈夫♪ この勝負♪」

と思わず吹き返すビー。

「笑ってる場合じゃなーい!!
 何でこの状況で余裕ぶっかませんだァァ!?
 捕まったら二度と抜け出せねー!
 すげー力で引き付けられんだぞ!!
 前ン時は九尾の暴走でたまたま…!」

と冷静さを欠くナルトですが、
イタチは状況分析を冷静にしつつ、
絶体絶命下で最適な判断を下そうとします。

「余裕でいるんじゃない。
 分析には冷静さがいる。
 さっき長門が投げた黒い塊が中心の核になってると見ていい。
 おそらくアレを破壊すればいい。
 三人各々の最強遠距離忍術で一斉に中央を攻撃する。」

核となるものを砕いてしまえば良い――

「こんな状況じゃうまく中央を狙えねーってばよ!」

しかし物凄い吸引力にまさに浮き足で地面をまともに踏みしめられない状況で
正確に中央を狙うことはできないと考えるナルト。

「狙わなくても当たる。
 中央からのこの強すぎる吸引力を、
 逆に利用する算段だ。
 どんな術にも弱点となる穴は必ずある!」

一切合切をそのコアが引きつけるのですから、
イタチの言う通り、結局はどこを狙ってもコアに到達するでしょう。
ナルトもだいぶ成長して強くなっていますが、
イタチやビーに比べて判断力、分析力に乏しい発言をまだしています。
――というよりも、
ナルトは孤立無援の状況下では、自分でなんとかしようとしますが、
より強力な助っ人が現れると状況分析や判断を任せてしまう傾向にある

と言えますね。
イタチの須佐能乎から投げ放たれた巨大手裏剣"八坂ノ勾玉"を筆頭に、
ナルトの風遁・螺旋手裏剣、ビーの尾獣玉が、
地爆天星のコアへ向って一直線に向っていきます。
生半可な攻撃は当然この星に飲まれてチャクラの藻屑になりうるでしょうが、
すさまじいエネルギーをもったそれぞれの忍術は、
重なり合うことで核が破壊され、吸引力を失った星は、
解き放たれたかのように大規模な爆発を起こし崩壊します。
その様はまるでごく小規模の"超新星爆発"といった感じです。
地爆天星の崩壊と同時にイタチは須佐能乎の十拳剣をふるいます。

「すまないな…イタチ。」

正気に戻り、そう長門は告げます。

「元へ戻ったか…。
 十拳剣だ…。すぐに封印する…。
 何か言い残す事はあるか?」

イタチの言葉に微笑み、そして口を開きます。

「ナルト……。
 オレは師匠の所へ戻って、
 お前の物語を見ておくと…するよ…。
 オレから言わせりゃ…お前は三部作目の完結編だ。
 …一部が自来也…完ペキだった…。
 だが…二部作目ってのはたいがい駄作になる。
 オレのようにな……。
 師にも認めてもらってない。」

平和への物語は山あり谷あり。
第二部で谷底に落ちても、
最後の最後第三部で盛り返す。
長門はナルトににこっと笑います。

「シリーズの出来ってのは三作目…完結編で決まる!
 駄作を帳消しにするぐらいの最高傑作になってくれよ…ナルト!」

その言葉に力強くナルトは親指を突き立てるのです。


余談ですが、長門が言ったこの力強い言葉。
ここで多くの読者は私を含め思ったのではないでしょうか。
NARUTO-ナルト-』は第三部まである!?と。
ないかな?