さて色々謎の多いトビですが、
過去 ナルト世界の謎を紐解く では、
【トビについて1】*1でトビとオビトについて
【トビについて2】*2でトビとペインについて
【トビについて3】*3でトビとシスイについて
を考えてきましたが、今回はトビとダンゾウについて掘り下げて考えてみます。

1.トビとダンゾウ

まずはトビを見てみましょう。
トビは一見その理念に矛盾してそうな行動をとっています。
例えばデイダラの前でいかにも小物ぶった態度をとりながら、
実は暁の裏側を掌握する人物であったということや、
トビとゼツの立場が上下する矛盾性*4
木ノ葉の里が誕生したときの大昔の人物であるうちはマダラであったり、
鬼鮫の前でその仮面を取って見せたとき元・水影であったり――と。
とにかく枚挙に暇がないくらいの“謎”を塗り固めた人物だと言えるでしょう。

一方でダンゾウですが
【暗部1・“根”について(i)】*5で、
木ノ葉を合理主義的な側面で支えてきた人物だと見て取りました。
【うちはマダラ5・ダンゾウとの関連の有無】では*6
サイの任務に際して大蛇丸暗殺を試みないこと、
百歩譲って別の機会を狙っていたとしてもサスケ暗殺はトビの言動に反することから
あっさりトビ=ダンゾウを否定しましたが、
これらはトビ(=マダラ?)の言動によっては覆されないこともないとはいえません。

2.トビとダンゾウの一致点

トビとダンゾウの一致点を考えてみましょう。

 1.右眼
まずは右眼です。ダンゾウは包帯で右眼を隠していますし、
トビは仮面で右目のみの穴を開けて、その奥から覗かせる写臨眼を強調しています。

「写輪眼の本当の力が…このうちはマダラの力が。」

トビは左眼の写臨眼を使わないのでしょうか?
あえて左眼の写臨眼を封印して力を抑えている、というのはこの台詞から考えにくいでしょう。
とすればあの右眼の穴のみ開いたあの仮面は、
右眼だけに存在する写臨眼の力をうまく活用するためにある、と考えられます。
カカシもそうですが写臨眼が見開かれるとき、
もう片方の眼は閉じておいた方がいいようです。
右目の視力が2.0、左眼の視力が0.01だったら、
左眼を閉じて右眼だけで見た方がよく見える――というよりは、
眼が捉えた映像を視覚情報として脳が処理しやすくするため、といったところでしょうか?
片方から鮮明な、もう片方からぼやけた映像が絶えず入ってきていたら、
混乱するのは想像するのに難しくありません。
――このように考えると、カカシのように普段写臨眼を使わないようにするため、
ダンゾウも左眼が何らかの理由で写臨眼の力が弱っていて、
力の強い右眼を温存するために包帯で隠していると考えるのも自然です。


 2.九尾について
トビ=ダンゾウについて、もっとも一致するところ――それは九尾(ナルト)です。
といっても九尾の力だの、ナルトが人柱力だのということよりも、
九尾に対する行動および言動が、と言った方が良いでしょう。
トビは九尾の人柱力に対して急がせているようでいて、
その実、あまり急いでいません。

「話は終わりだ…他のメンバーに残りの人柱力を急がせろ。」

とペインに言っておきながらも、ペインが斃れた後、鬼鮫には

鬼鮫……お前は八尾を探せ。」

居場所が分かっている九尾よりも八尾詮索を先にさせています。

「…また外道魔像とシンクロさせるコマが必要だな…」

もちろんペイン――長門とは別で尾獣を集める目的がトビにはあるようです。
ならば九尾捕獲も早い方が良いはずなのですが……

「貴様らの相手はまた今度だ。」

サスケ捜索を任された木ノ葉の忍達。そのメンバーの中にナルトもいました。
しかし適当にあしらって時間稼ぎしていただけで、捕獲することはしませんでした。
九尾は一番最後に外道魔像に封印しなければならない事情があるとしても、
こうも九尾捕獲の機会を延ばし続けるのは不自然です。
そしてペインの木ノ葉襲撃。
待ってたとばかりに、五代目火影の失墜、六代目火影がダンゾウとなる構図。
どうもこの辺りはきな臭いと言えるでしょう。

「これで九尾は閉じ込めておける。」

そう言って連絡蛙の息の根を絶ったダンゾウですが、
暁のペイン襲来は九尾の人柱力であるナルトを狙っていることを逆手にしてのこと。
ペインによって里に被害が出ることをうまく利用して五代目火影の信用を失墜させ、
火影交代を目論んだのは果たしてその場で思いついたことなのでしょうか?
事前に知っていたら――と思える節もあります。


ペイン襲来を知ってダンゾウは地下へ潜るシーン。

「姫も火影になった女だ。カツユの術を使用する以上全滅はない。
 …それなりの死傷者は出るであろうが。ワシにとっては必要な犠牲だ。
 ワシが火影になるためのな。」

過去に輪廻眼と対峙し己の暗部の部下を長門の外道魔像でやられた割には、
ペインの戦闘力を見誤っている台詞のようにも取れます。
この後、九尾も妙木山から駆けつけて来てしまい、
神羅天征という凄まじい術で里は甚大な被害を受けるわけですが、
逆にペインのことをよく知っていて、
ペインが及ぼす甚大な被害も想定内であった――ともとれます。

「だが“暁”に九尾をくれてやる訳にはいかぬからな。
 その可能性は排除した。我々はほとぼりが冷めるまで地下に潜る。」

もしも《火影になるまでは暁に九尾はやらない》という意味だったらどうでしょう。
トビがダンゾウであったなら、この度重なる九尾捕獲の機会の延期とは――

「オレは少し別の用がある。」

外道魔像の事情から人柱力集めとは別件と思われるトビの“別の用”。
火影任命だったらどうでしょう?
元・水影でもあり、火影にもなったら、
2つの里を牛耳る権力をもつことになります。

もう一つ。これは全く本編とは関係ない話ですが、巷では有名な話だそうです。
かつて加藤段蔵という戦国の忍が日本にいたそうです。*7
その通り名は鳶(飛び)加藤。鳶=段蔵ですが…。


ところで上の論法で九尾をひたすら隠す理由は、
ペインに里を襲わせることが最大の目的です。
しかしペインの襲撃中まで九尾を隠す必要はないはずです。
もしもペインが九尾を攫っていくことに成功したならばそれはそれで、
九尾をとられてしまった失態に対する責任案件として五代目火影の立場は
やはり追い込まれることになり、ダンゾウの六代目就任計画に支障はきたしません。
では九尾を匿い続けることにした理由はいったいなんでしょうか?
やはりトビ≠ダンゾウであって、九尾は里の兵力として、
あるいは他国への抑止力としてとっておきたかった――
と合理主義ダンゾウという線がもっとも自然といえますが、
トビ=ダンゾウだとするなら、トビとしての裏の顔(すなわち暁の目的)よりも、
ダンゾウとしての表の顔を重視したためだと考えられます。
そして暁の構想、計画が最終段階に入り、
ダンゾウも火の国と里を完全掌握できる段階に入って、
はじめて九尾捕獲が実行される――と。
そうすればダンゾウ自ら混乱の収拾に大きな抑止力を働かせることができます。

3.うちは関連での不可解

ただトビ=ダンゾウであった場合、うちは一族関連の出来事に対して、
ダンゾウの言動は不可解なものとなってしまいます。
ダンゾウはトビの話からうちは一族抹殺の指令を下した一人であるといえます。
そしてサスケにその真実を語るわけですが、
木ノ葉上層部を恨むように仕向けたのは、この論法でいけば、
トビ=ダンゾウであり、いくらサスケを手懐けるためとはいえ、リスクが大きい気がします。
何より、以前にサイを使ってサスケを暗殺しようとしていますから、
サスケを手懐けようとするトビと矛盾展開であるのは冒頭で述べました。(*6)
ところで、

「お前を守ると約束していた三代目火影が死んで、
 すぐにイタチが木ノ葉に姿を現したのは、
 ダンゾウを含む里の上層部に“オレは生きている”と
 忠告するためだった。」

というのはすぐ近くにトビとして存在したダンゾウを
イタチが見抜けなかったということになります。

「さすがのイタチにもオレの全ては知られていなかった。」

という台詞がある通り、イタチの前でうまく正体を隠し続けられたのは確かなようです。
――が、逆にここまで木ノ葉の内情に詳しいことと、
またマダラに関連する経緯話は、齢72歳のダンゾウです。*8

「今より八十年以上も前の話だ。
 かつて世界は戦いの絶えない戦国時代だった。」

とある通り、マダラの全盛期、木ノ葉の成り立ちを知っていても
おかしくはない人物ですので、怪しいといえば怪しいといえるでしょう。
しかしダンゾウがトビであるならば、
もっとも不可解であるのが、ダンゾウがここまでマダラを装う理由。

「オレはお前と同じ…うちは一族の生き残りであり…
 うちはイタチの真実を知る者だよ。」

生粋のうちは一族でありながら、右眼だけの写臨眼に頼る理由も、
先ほどは左眼の弱体化という形を考えましたが――