いよいよ本題です。

螺旋丸がナルトの掌の上で
あたかも静止しているように見える理由を、
ベクトル解析を用いて説明します。

そもそも螺旋丸の修行の第一段階に"回転"が課され、
第三段階ではこの"回転"をとどめる"制御"を行いますが、
"回転"をどのように"制御"すればいいかが見えてきます。
けっこう理論通りとなって面白いところです。

1.螺旋丸モデリング(1)

螺旋丸はチャクラを圧縮、球状に保ちつつ乱回転させ、
対象にぶつけることで攻撃する形態変化の忍術です。

ここで螺旋丸について以下のようなモデルを考えます。


乱回転が球状を保つことから、以下のように定義する。

【定義1】
ある時間Tに対してある回転軸をもち、
この回転軸を中心とするような循環するベクトル場をもつ

【定義2】
この螺旋丸内部のチャクラ分布は流動的である


【定義1】は少しイメージしにくいかもしれないのですが、
以下の球体を見て下さい。



この球はある時間において、
ある中心軸をもった回転をしていたのに、
急にその回転軸が変わり回転方向が変化します。
これが"乱回転"です。
球状を保つようにするために、
チャクラはどのように運動しているかというと、
回転軸を中心に以下のような循環する"ベクトル場"
(ある座標に対してあるベクトルが決まる)を持つでしょう。



(図1)


(図2)

さて、その具体的なベクトル場について考えます。
ここでエネルギー体であるチャクラは、
チョウジなどの倍化の術を考えれば、
凝縮すると質量のようなものをもつと考えられます。
(原子や分子が集合するようなイメージです。)
この球が乱回転してしまうような不安定性から、
螺旋丸全体がつくる重心(系の重心)も不安定です。
球状を保つためにはその回転方向の回転軸上
(法線ベクトル上)にあると考えることができます。
しかも回転軸を常に螺旋丸の中心を通るように制御しなければ、
不安定なものを安定させることができません。
系の重心とはすなわちチャクラの移動によって
起こると考えることができますから、
ここに【定義2】を示すことができます。
このような不安定性は言い換えれば、
"中心付近よりも外側の回転する力が強い"
="循環を表すベクトルの大きさは外側程大きい"
と考えることが出来ます。
(中心付近の循環ベクトルが外側よりも内側で大きければ
 回転軸は安定して、乱回転が起こりにくいと考えられる。)
このような条件を満たす簡単なベクトル場として、
中心軸を常にZ軸とする、


\mathbb{F} = -y \mathbb{e}_x+x \mathbb{e}_y+0\mathbb{e}_z

を考えましょう。ここで、
\mathbb{e}_x,\mathbb{e}_y,\mathbb{e}_z はx,y,z軸方向への単位ベクトルであり、
\mathbb{F}はある座標におけるベクトルを表したものです。
これは上に示した図のような循環となります。\mathbb{F}は、

\mathbb{F} = (-y,x,0)

と簡略に表すことができます。

2.螺旋丸モデリング(2)

乱回転しつつも螺旋丸が静止した状態は
(図1)のように循環ベクトルが保たれてる状態です。
この場合表面を貫くベクトル場の総和を考えて見ましょう。
ここで【掌の上の螺旋丸1・面積分の導入】*1で導入した
積分の考え方を使います。

計算しなくても、ベクトル場を見ると、
必ず逆方向をむいた一対のベクトルの組ができること、
およびこのベクトル場は球面に接するようにあるので、
(面を貫くベクトルがないので)
総和は0と分かってしまうのですが、
一応計算によっても示します。
螺旋丸の半径を u 、原点を螺旋丸の中心とします。


x^2+y^2+z^2 = u^2

が曲面Sの方程式となります。
いま対称性より Z \geq 0 を考えると、
曲面S上のある点の位置ベクトル\mathbb{r}

\mathbb{r} = (x,y,\sqrt{u^2-x^2-y^2})

ですから \sqrt{u^2-x^2-y^2}=\sigma とおくと、
この位置で曲面Sを表す2方向の(接平面)ベクトルは、

\frac{\part \mathbb{r}}{\part x}=(1,0,-\frac{x}{\sigma})
\frac{\part \mathbb{r}}{\part y}=(0,1,-\frac{y}{\sigma})

となって、この面を貫く矢印の総和は、

\begin{eqnarray} \int \int_{\qquad S} \qquad \mathbb{F} \cdot \mathbb{n} dS &=& \int \int_{\qquad S} \qquad \begin{vmatrix} -y & x & 0 \\ 1 & 0 & -\frac{x}{\sigma} \\ 0 & 1 & -\frac{y}{\sigma} \end{vmatrix} dxdy \\ &=& \int \int_{\qquad S} \qquad \{ \( \frac{-yx}{\sigma} \)+\( \frac{xy}{\sigma} \)+0 \} \, dxdy \\ &=& 0 \end{array}

となります。
下の半球面でも同様に0で u を半径の変数と考えると、
どの螺旋丸の半径においてもこれが成立するので、

\int_{\qquad 0}^{\qquad \qquad \qquad u} \qquad 0 du = 0

結局螺旋丸自体のベクトル場の総和も0となります。したがって、
螺旋丸全体の回転がある回転軸に常に従うなら
たとえ乱回転(回転軸が変化)しようと、
ナルトの掌の上で静止しているように見える
(小さな台風を掌の上にとどめることができる)というわけです。
これが自来也から課された螺旋丸の"回転"の要訣であり、
乱回転の"制御"の段階にあって重要になってくるものです。
第一段階では自来也から水風船を割るように指示されましたが、
第三段階ではそれを圧縮、留めるようにすることを、
ナルトは要求されていました。
第一段階の水風船を割るには、
ただ乱雑にチャクラをかき乱して水を動かすことで、
ゴムの膨張限界をこえて水風船を割るということが重要になってきます。
はじめナルトは平面的な回転しかできず(乱回転させられず)、
水風船を割るのに苦労していましたが、
実は制御段階においては、この発想が重要になってくるといえます。
上述のベクトル場の総和が0になるようにすれば、
螺旋丸は制御できているといえるでしょう。