いよいよ前回までの長かった前フリが、
繋がっていきます。

1.一次元波動方程式の解(1)

前回*1登場した、
波動現象をあまねく表す波動方程式


\( \triangle - \frac{1}{v^2} \frac{{\part}^2}{\part t^2} \)\mathbb{U} = 0

についてですが、螺旋丸は球形ですので、
ここでようやく【掌の上の螺旋丸2・極座標ラプラシアンの導入】で導入した*2
極座標形式のラプラシアンの出番で、

\( {\triangle}_{\small r,\theta,\phi} - \frac{1}{v^2} \frac{{\part}^2}{\part t^2} \)\mathbb{U}_{\small r,\theta,\phi} = 0

を解けば螺旋丸の波動現象をうまく記述できるでしょう。
そこで螺旋丸モデルとして以前設定した*3
以下の球体の動きを考えます。



この球体の回転は、ある時間だけ決まった回転軸に沿った回転をします。
その時間(仮にτとします)だけを取り出して考えてみると、
この球全体が同様の回転をしているので、
球の中心部分を含み回転軸(Z軸にとる)に
垂直な断面(xy平面の大円)を考えると、



チャクラはこの大円上を円運動しているといえます。



この螺旋丸球の半径をLとして、
0 \leq R \leq L となる半径R部分では、
渦や乱れがあっても、ストークスの定理によって、
一番外側部分が円運動をしていればよいので、
必ずしも大円全体で一様に円運動しているとは限らないといえます。
(この事は乱回転を生み出す要因=回転軸をかえる要因ともいえます。)
このストークスの定理の説明は次回に譲るとして、
では螺旋丸の基本となる外側のチャクラの円運動について、
波動現象を考えてみましょう。
この円運動は時間τだけの現象で、
したがって減衰する円運動といえます。
(半径は保ったまま、速度のみが小さくなる)
円運動は単振動として表せるので、
減衰振動の問題として置き換えて考えると
結局、この螺旋丸モデルの波動を考えるには、
次の一次元の波動方程式を解くことに帰結します。

\frac{{\part}^2 u(x,t)}{\part x^2} = \frac{1}{v^2} \frac{{\part}^2 u(x,t)}{\part t^2}

(*1)
この種の方程式(偏微分方程式)は解こうとすると、
色々な工夫が必要で一筋縄でいきません。
ここでは比較的簡単に解ける
フーリエ変換を用いる方法で解こうと思います。
コンセプトとしてはフーリエ変換したものを解き、
その解をフーリエ逆変換することで
元の微分方程式の解を得るものです。
ここで境界条件として螺旋丸の半径はL なので、

u(\pm L,t)=0

(*2.a)
がいえて、さらに時間τの初期を時刻t=0
その位置と速度の初期条件として、

u(x,0) = f(x)
\frac{\part u(x,t)}{\part t} \|_{\small t=0} = g(x)

(*2.b)
が設定より与えられます。
(波の伝播速度として与えられたvを、
 混同しないように。)

2.一次元波動方程式の解(2)

まず、フーリエ変換の以下のような性質を利用します。


\begin{eqnarray} \mathfrak{F}(\frac{dh(x)}{dx}) &=& \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{\qquad -\infty}^{\qquad \qquad \qquad \infty} \( \frac{dh(x)}{dx} \) e^{-ikx} dx \\ &=& 0 + \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{\qquad -L}^{\qquad \qquad \qquad L} \, \( \frac{dh(x)}{dx} \) e^{-ikx} dx \\ &=& \frac{1}{\sqrt{2\pi}} [ h(x)e^{-ikx} ]_{x=-\infty}^{x=\infty} +\frac{ik}{\sqrt{2\pi}} \int_{\qquad -L}^{\qquad \qquad \qquad L} \, h(x)e^{-ikx} dx \\ &=& ik \mathfrak{F}(h(x)) \end{array}

(*3)
ただしここで
h(x) \rightarrow 0 (x \rightarrow \pm \infty)
としています。
螺旋丸モデルでは有限区間として与えられているので明白です。
(*1)式の両辺をフーリエ変換をします。
このとき(*3)式の性質を利用します。

\begin{eqnarray} \mathfrak{F} \( \frac{{\part}^2 u(x,t)}{\part x^2} \) &=& \frac{1}{\sqrt{2\pi}} \int_{\qquad -L}^{\qquad \qquad \qquad L} \, \frac{{\part}^2 u(x,t)}{\part x^2} e^{-ikx} dx \\&=& \frac{(ik)^2}{\sqrt{2\pi}} \int_{\qquad -L}^{\qquad \qquad \qquad L} \, u(x,t) e^{-ikx} dx\end{array}

(*4)

\begin{eqnarray} \mathfrak{F} \( \frac{1}{v^2} \frac{{\part}^2 u(x,t)}{\part t^2} \) &=& \frac{1}{\sqrt{2\pi}v^2} \frac{{\part}^2}{\part t^2} \( \int_{\qquad -L}^{\qquad \qquad \qquad L} \, u(x,t) e^{-ikx} dx  \) \end{array}

(*5)
ここで、フーリエ変換によって周波数と時間の関数に移るので、

F(k,t) = \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{\qquad -L}^{\qquad \qquad \qquad L} \, u(x,t) e^{-ikx} dx

(*5)
とおけば、(*1)式の両辺をフーリエ変換し、
整理したものは(*4)(*5)より次のようになります。

\frac{{\part}^2 }{\part t^2}F(k,t) = (ikv)^2F(k,t)

(*6)
この方程式は偏微分ですが、
もはやtについての微分だけしか含まないので、
常微分方程式に帰着できて結局(*6)式はすぐに解けて、

F(k,t) = C_{a} e^{\small ikvt} + C_{b} e^{\small -ikvt}

となります。ここで(*2)式の初期条件より

F(k,0) = C_a + C_b =\mathfrak{F}(f(x))
\frac{\part F(k,t)}{\part t} \|_{\small t=0} = ikv(C_a - C_b) = \mathfrak{F}(g(x))

となるので、

C_a = \frac{ikv \mathfrak{F}(f(x)) +\mathfrak{F}(g(x))}{2ikv} \\ C_b = \frac{ikv \mathfrak{F}(f(x)) -\mathfrak{F}(g(x))}{2ikv}

したがって

F(k,t) = \frac{ikv \mathfrak{F}(f(x)) +\mathfrak{F}(g(x))}{2ikv} e^{\small ikvt} + \frac{ikv \mathfrak{F}(f(x)) -\mathfrak{F}(g(x))}{2ikv} e^{\small -ikvt}

(*7)
(*7)式をフーリエ逆変換します。
x \rightarrow x \pm vtとおく置換積分
(*3)式の逆に気づくことで、解は容易に求められます。

u(x,t)=\frac{f(x+vt) + f(x-vt)}{2} + \frac{1}{2v} \int_{\qquad x-vt}^{\qquad \qquad \qquad x+vt} g(\xi) d{\xi}

(*8)

3.一次元波動方程式の解(3)

さて螺旋丸では時間τの間に、
(*8)式で記述できる波動現象が起こっていると考えられます。
しかも回転軸が変わっても都度このように見なせばいいことと、
大円以外の断面ではこれを相対的に小さくした波動現象が
成り立つと考えればよいので、
減衰振動となるようなf(x),g(x) を具体的に与えれば
(*8)式は螺旋丸(外部)の波動現象を表すのに十分でしょう。