ジャンプが合併号なので、
次号までに3つほど考察の記事をあげたいと思います。
1つはうちは一族(主にシスイ)に関しての考察、
そしてもう2つは前回までで中途になっていた
【掌の上の螺旋丸】についての考察で、
こちらを先に終わらせたいと思います。

この回まではちょっと物理数学的で重たい内容が続きますが、
その意味付けを次回致しますので、あと少々お付き合いください。

1.ストークスの定理と線積分(1)

前回までで螺旋丸を波動現象としてとらえたとき、
それをどのように表すかについて、
一次元の波動方程式の解に(ムリヤリ)帰着させました。
その過程でストークスの定理というのが出てきましたが、
これを説明して、前回までのまとめをしたいと思います。
さて、ストークスの定理とは、以下のような式で表されます。


\iint_S \nabla \times \mathbb{F} \cdot \mathbb{n}dS = \oint_C \mathbb{F} \cdot d\mathbb{r}

(*1)

この式は
"循環の面積分の総和は、その面全体の縁を一周した線積分に等しい"
ということを表しています。
何が何やらですが、以下の図をまず見てください。




一つ一つの区画Sに区切ったとき、
それら一つ一つで循環が生じていても、
隣り合った部分の循環と打ち消しあったりする部分もあるので、
結局、一番外側の部分の循環が足しあわされた、
大きな循環(面全体の縁Cを一周)をすることに等しいことになります。
厳密的ではありませんが、これを示してみたいと思います。

2.ストークスの定理と線積分(2)

さて面積分については【掌の上の螺旋丸1・面積分の導入】*1で扱いました。
今回は(ベクトル)線積分について補足をしておきます。
まず、


\int_C \mathbb{F} \cdot d\mathbb{r}

(*2)
についてですが、これはベクトル線積分といいます。
対して、

\int_C f dl

(*3)
スカラー積分といいます。
スカラー積分とは例えばある地点Aから地点Bまで進む経路Cに、
バケツに入った水が所狭しとおかれていて、
それを拾い集めてスタートからゴールまでいったときに
水の総量はいくらか、を表すものです。
一方ベクトル線積分とは、
川のある地点Aから地点Bまで進む経路Cにおいて、
"水流"というベクトル場があって、
それらに流されないように頑張ってCを描くように
スタートからゴールまでたどり着いたとき、
進んだ方向に水がどれだけ逆らったかの総量と等しいことを表します。


さて(*1)式の右辺を見るとベクトル線積分となっています。
ここで、\oint は閉曲線を一周する積分を表すので、




このような循環経路Cを考えましょう。
このCは閉じていれば(円のように入り口と出口がない)、
どんな形状でも良いのですが考えやすいように
四角形をとっています。

(*1)式の右辺は内積をとって積分する形なので、




というようなベクトル場が経路C上にあるとき、
場の経路方向分のベクトル量、すなわち内積をもってきて、
足し合わせて一周することと等価です。つまり、



図で青い矢印を集めていくことになります。
進む方向に逆らう矢印はマイナス量とカウントし、
進む方向に順ずる矢印はプラス量とカウントします。
そうして一周したときにどれだけ正味の量があるかを
この式は表しているのです。
x,y,z方向に対して考えれば、

d\mathbb{r} = (dx,dy,dz)

という微小方向に分解できて、場の矢印についても、

F = (F_x,F_y,F_z)

と分解できるので結局(*1)式の右辺は

\begin{eqnarray} \oint_C \mathbb{F} \cdot d\mathbb{r} &=& \oint_C (F_x,F_y,F_z) \cdot (dx,dy,dz) \\&=& \oint_{C_1} F_x dx+\oint_{C_2} F_y dy + \oint_{C_3} F_z dz\end{array}

(*4)
と表すことができます。

3.ストークスの定理と線積分(3)

(*2)式の左辺の面積分


\iint_S \nabla \times \mathbb{F} \cdot \mathbb{n}dS

についても、同様に分解して考えることを考えます。
法線ベクトル\mathbb{n}について、x,y,z方向に分解します。
このときこのベクトルの量(絶対値)は微小面積分をもつので、
例えばx軸方向に法線ベクトルをもつ微小面積は dydz です。
したがってx,y,z軸方向に単位ベクトル \mathbb{e}_x,\mathbb{e}_y,\mathbb{e}_z があるとき、

\mathbb{n}dS = ( \mathbb{e}_x,\mathbb{e}_y,\mathbb{e}_z ) \( dydz \\ dzdx \\ dxdy \)

といえます。線積分のときと同様にベクトル場についても

\mathbb{F} =(F_x,F_y,F_z)

のように表せます。ここで\nabla \times \mathbb{F}
回転(rotation)を表しているのは以前、
神羅天征と電磁気3・アンペール・マクスウェルの法則】*2
で少し扱いましたが、

\nabla \times \mathbb{F} = \( \frac{\part F_z}{\part y}-\frac{\part F_y}{\part z},\frac{\part F_x}{\part z}-\frac{\part F_z}{\part x},\frac{\part F_y}{\part x}-\frac{\part F_x}{\part y} \)

と表せます。したがって、


\iint_S \nabla \times \mathbb{F} \cdot \mathbb{n}dS \\ = \iint_{S} \( \frac{\part F_z}{\part y}-\frac{\part F_y}{\part z},\frac{\part F_x}{\part z}-\frac{\part F_z}{\part x},\frac{\part F_y}{\part x}-\frac{\part F_x}{\part y} \)  \cdot (dydz,dzdx,dxdy) \\ = \iint_{S_1} \( \frac{\part F_z}{\part y}-\frac{\part F_y}{\part z} \) dydz + \iint_{S_2} \( \frac{\part F_x}{\part z}-\frac{\part F_z}{\part x} \) dzdx + \iint_{S_3} \( \frac{\part F_y}{\part x}-\frac{\part F_x}{\part y} \) dxdy

(*5)
したがって(*1)式は(*4)式、(*5)式を用いて、

\iint_{S_1} \( \frac{\part F_z}{\part y}-\frac{\part F_y}{\part z} \) dydz + \iint_{S_2} \( \frac{\part F_x}{\part z}-\frac{\part F_z}{\part x} \) dzdx + \iint_{S_3} \( \frac{\part F_y}{\part x}-\frac{\part F_x}{\part y} \) dxdy \\ \hspace{10} = \oint_{C_1} F_x dx+\oint_{C_2} F_y dy + \oint_{C_3} F_z dz

(*6)
となりこれを示せばよいのです。

4.ストークスの定理と線積分(4)

(*6)式について、


\oint_{C_3}F_z dz

という循環を考えます。
z軸に沿った矢印量を拾い集めていくのですが、
ここで少し工夫して考えます。
その経路中のある地点において、
進む方向(Z軸)を法線とする面に対し小さい循環があって、
z軸上のその地点を通過すると、
その循環が表す量の総和を受け取ると考えましょう。
具体的には、何本も連なった火の輪があって、
これらをくぐっていくときに、火の熱を全てもらっていく、
と考えればイメージがわきやすいでしょう。
そこである地点に対する小循環C'を考えます。



(図は'が抜けてますがご容赦を(T_T))
この小循環C'が起こっているのは長方形でxy平面に平行とし、
x方向のベクトル場はF_x、y方向のベクトル場F_y
この4点の座標によってベクトル場が決まると見なせるほど、
この循環区間が小さいと考えます。
循環に逆らう方向はマイナスなので、

\begin{eqnarray} \oint_{C'}F_z dz &\simeq& F_x(x,y)dx + F_y(x+dx,y)dy -F_x(x,y+dy)dx - F_y(x,y)dy \\ &=& \frac{F_y(x+dx,y)-F_y(x,y)}{dx}dxdy - \frac{F_x(x,y+dy)-F_x(x,y)}{dy}dxdy \\ &=& \( \frac{\part F_y}{\part x} - \frac{\part F_x}{\part y} \) dxdy \end{array}

したがって曲面S3上に存在する循環を
全て含んだ経路C3全体では、

\begin{eqnarray} \oint_{C_3}F_z dz &=& \sum \sum \oint_{C'}F_z dz \\&=& \iint_{S_3} \( \frac{\part F_y}{\part x} - \frac{\part F_x}{\part y} \) dxdy \end{array}

となります。同様にして

\oint_{C_1}F_x dx = \iint_{S_1} \( \frac{\part F_z}{\part y} - \frac{\part F_y}{\part z}\) dydz
\oint_{C_2}F_y dy = \iint_{S_2} \( \frac{\part F_x }{\part z} - \frac{\part F_z}{\part x}\) dzdx

が成立するので、ストークスの定理(*6)は示されます。

5.ストークスの定理と線積分(5)

まとめるとストークスの定理から、
中に渦がいくつかあっても、
最も外側(縁)の循環に支配されます。
このことを利用して螺旋丸の波動現象を考えるときに
最も外側の円運動を考えることで、
前回*3一次元まで引っ張ってきました。
この一次元の波動方程式とその解を考えて、
螺旋丸について何が分かるのか、
次回に説明したいと思います。