535 『イルカの説得』

最近月曜日に記事が更新できなくてすみません。
月曜は本当に忙しいです。なんでだろう?


今回はナルトのストーリー上、おそらく超重要パート
成長と世代交代』や『受け継がれる想い
ですので、
いつも以上に気合を入れて書きました。

1.イルカの説得(1)

「……!
 …何でイルカ先生まで…こんな島に!?」

と驚くナルトに、イルカは一芝居打とうとします。

「この島での追加任務が出た。
 オレ達はその応援に来ただけだ。
 この島は危険だと聞いている…。」

とイルカ。

「…なら何で外に出れねーんだ?」

論点を逸らされてるということを
感じているようで、ナルトは訝しがる様子。

「今ちょうど未確認生物が出て、
 そいつを確認しなきゃならない…。
 なぜなら…」

とイルカが持っていこうとしたところ、
ナルトが話しに割って入ります。

「…オレってば、九尾のチャクラを感じた…。
 それと関係があんのか?」

とにかく九尾のチャクラを自分以外から感じたことに、
ナルトは異常事態であることを感じて、
その正体がなんであるのかを知りたいと思っているのです。

「(チャクラを遮断するこの中で
  金角、銀角のチャクラを感じたというのか…!?
  外へ出すのはマズイ…絶対に止めねば!)」

と危機感を抱くシノの父親、油女ゲン。
イルカがうまく話を持っていってくれるように祈ります。

「そ…そうだ…。九尾のチャクラを持つ生物のようだ。
 九尾以外にもどうやらそんなのがここに居たみたいでな…。
 お前が外へ出てそいつがお前の中の九尾と共鳴して
 暴れだしてはこまる。
 だからお前はこの奥へ隠れていてほしいんだ。」

――と苦し紛れな様子でイルカは語ります。
九尾のチャクラをもつ未確認の生物。
ナルトの九尾本体と共鳴してしまう危険性。
という筋立てです。

「ヤマト体調が帰ってこねーのはそのせいか…?」

ヤマトがなかなか姿を見せないことを
気にかけていたナルト。
外の様子を知りたがっていたのはこのこともあるでしょう。

「そうだ。九尾のチャクラは木遁で押さえるのが一番だ。
 お前も分かるだろ…」

と追い討ちをかけるようにゲンが言います。
しかし、モトイはビーがこの島の猛獣を手懐けていることを言っていました。
そして何より自分がそれを目の当たりにしているという事実。
ナルトの中で、ヤマトが話した内容が、
受け入れられないでいる様子です。

「その動物が暴れんならオレが押さえる!
 自分で確かめさせてくれってばよ!」

仙人モードになり、意気込むナルト。
一触即発の事態。
ナルトが一歩を踏み出します。
ナルトを力ずくで押さえようと秋道一族の2人が取り掛かります。
しかしいまのナルトには容易く包囲網を突破されてしまいます。
なんとか奈良一族の忍が影真似の術で縛り、ナルトの動きを止めます。
そのとき周囲からチャクラを通して、
ナルトに戦場の情報が――目に映るかの如く流れ込みます。
――外部のチャクラを強く遮蔽する境界を超えたのでしょう。

「何だよ…こりゃ…?
 何でこんな事になってんだってばよ!!?」

事実を知ったナルト。
もう隠し立てしても意味がないと悟ったイルカは、

「…戦争だ。マダラがしかけてきた。」

と本当のことを語り始めます。
ゲンがそれはマズイと止めに入りますが、
しかし、もうそれではナルトは止まらないでしょう。

「ゲンさん…。もう嘘は止めにしませんか。
 ナルトはバカじゃない…。
 …正直に話して納得してもらうしかありませんよ。」

とイルカは言います。

「仲間の皆が戦って苦しんでんのに
 何でオレに黙って隠す必要があるんだ!?」

と事情を知らないナルトは強く憤ります。
「苦しんでんのに」という部分は、
自分も仲間のために戦いたい。
少しでも力が必要なはずなのに、どうして。
という強い気持ちが見て取れます。

「この戦争はお前を守るための戦争だからだ。」

――とイルカは宥めるように言います。

2.イルカの説得(2)

「マダラは全勢力での戦いをしかけてきた…。
 お前の中の九尾とキラービーさんの中の八尾を、
 今度こそ奪取するためにな。

 八尾と九尾を取られてしまえば、
 敵の術が完成しこの世の終わりを迎える!
 お前を守る事がこれからの未来と皆を守る事になる!

 お前を守るために皆命がけで戦ってる。
 ナルトお前は己と闘え…。
 ここは我慢の時だ。」

とイルカは言って諭します。
ナルトの脳裏には自分に平和への信念を託して
亡くなっていった長門の姿が浮かびます。
戦争――
戦士達は“死”に意味を見出そうとするけれど、
あるのは痛みと湧き上がる憎しみ…
結局戦争なんてのはゴミのような死と、
絶えることのない憎しみ、癒えない痛みが繰り返されるだけ――

ナルトはその託された想いを果たすときは今現在だと感じます。
戻ろうと告げるイルカに、
ナルトはその強き想いを口に出します。

この戦争は全部オレ一人でケリをつける!!
 憎しみも痛みも全部オレがまとめて引き受ける!!
 オレの役目だ!!

このような強い言葉は、
かつてサスケを奪還するために、
ナルトが口にした言葉と重なります。

腕がもがれりゃケリ殺す。脚がもがれりゃ噛み殺す。
首がもがれりゃニラみ殺す。目がもがれりゃ呪い殺す。

この時はサクラの想いを背負っている自分を自覚していたからです。
今度は長門の想いを背負っている、
いや自分の使命だと感じているからこそ、
ナルトの口から出た言葉でしょう。
憎しみを断つべく戦争という罪過を全て自分が背負う――
そう言ってみせたのです。
それでも死者が出てしまうことは連綿と続くでしょう。
ナルトの言っていることは浅はかに思えますが、
この強い言葉の意味することは逆にそんな浅いところにありません。
覚悟”です。強い強い“覚悟”です。

「話を聞いてなかったのか!
 お前の中には九尾がいる!
 お前だけの問題じゃないんだ、ナルト!」

そうなるとナルトはちょっとやそっとのことでは考えを曲げません。
曲げないからこそ覚悟なんですが。
八尾や九尾を守りぬく戦い――
王将や玉将を守りぬくために戦うのに、
敵の前に裸単騎で現れるなんて――
今まで戦い死んでいった仲間たちは、
じゃあ一体なんのために死んでいったんだ――
という話になるでしょう。

「オレを一番最初に認めてくれた先生が…!!
 何で九尾の事ばっか気にして、
 オレを信じてくれねーんだ!!」

というナルトに

「だだをこねるな!!
 オレにとってお前はなっ…」

理解らず屋とでも言いた気にイルカは声を荒げます。
互いが互いの想いを知らない――
だからこそ、気持ちがぶつかるのです。

「大切な生徒の一人だ。そして………
 弟のようにも思ってる…。」

そう告げるイルカに、一瞬ナルトの強い気持ちも挫かれたように、
仙人モードを示す隈が消えます。

「敵のボスはお前を全勢力で狙ってる…
 みすみすそんな危ない所へお前を行かせたいと思うわけないだろ。
 それに…お前ばかりが全部背負い込むことはないんだ。」

そう優しく語りかけるイルカ。
それがナルトの為でもあると思っているからこその言葉。

「オレってばもう昔とは違う…。強くなった。
 それにその額宛てをくれたのはイルカ先生だろ?」

先ほどの小競り合いでふとした拍子に落としてしまった
木ノ葉隠れの額宛。
イルカはそれを拾って、ナルトに渡しにいきます。
一瞬顔が綻ぶナルト。でも――

「ダメだ!
 それでもお前を行かせる訳にはいかない!」

といってナルトの気持ちをあえて裏切ってまで、
結界にてナルトを力ずくで封じ込めようとします。

「先生…オレってば強くなったって言ったろ…。
 …こんな結界じゃあ…」

九尾の力を解放してみせたナルト。
影真似の術も寄壊蟲の術も効果がありません。

「(何でだよ、イルカ先生!)」

そう思いかけたとき、
ナルトの額宛てに手紙がはさまっていることに気がつきます。



 お前の事だ
 すぐに戦場に駆けつけようとするだろう覚悟は知ってる

 この手紙を見てるという事は
 オレはお前を止められなかったって事になる

 綱手さまからお前を雲隠れの隠れ島へ
 足止めしておく役として任命された
 その時からもしものために
 この手紙を前もって用意しといたんだ…
 任命されたのに情けないよな…

 もし…そうなった時…
 うまく渡せるか分からないが
 どうしても伝えておきたい言葉がある
 …行ってしまったお前にオレが言える事は
 たった一言だけだ

 絶対に生きて帰って来い!!!


ナルトを後押しするイルカの言葉。
ナルトもその覚悟を強めます。
止める人々を、大事な人の言葉すら
振り切ってまで、それでも貫いた覚悟。
ある意味では間違っているかもしれない。
それでも――
守られるだけの存在じゃなくもう誰かを守れる存在
シカマルのようにナルトは言葉にしなくても、
心の中にはその思いがあるでしょう。
なぜなら、憎しみを止めるために成長したのだから。