569『意志の証明』

1.意志の証明(1)

「じゃあ、その止める方法ってのを教えてくれ!!」

とナルト。

「…その前に一つ言っとくが、
 オレは基本、人柱力の人間を信用しないことにしてる…。
 …尾獣とお友達になりたいなんて言うバカはなおさらな…。
 つまり…オレ達を助けたとしても、お前の味方になるなんて思うなよ。
 信用されたきゃ…」

四尾はまだ完全にナルトに心を許しているわけではありません。
当然、警戒心や猜疑心だってまだ残っているのです。
とは言っても、敢えてそのことを吐露するというのは、
いったんはナルトを信用しようとしている心の顕れ。
ナルトもそのことを理解しているようです。

「今はそれでいい…!
 どうすりゃいいかはオレもだいたい分かってっから!」

四尾の言葉をさえぎっても、分かっていると口にするナルト。

「(ナルト…。ワシはずっとお前のしてきたことを見てきた。
  …だからお前も分かっているハズだ。
  お前がワシに…ワシ達尾獣に何を語ろうとも無意味だ。
  本心は伝わって来ん。)」

九尾は人柱力や他の人間たちの言葉など、
自分たち尾獣には届かないことをよく知っています。
そう。"言葉"だけでは足りないのです。

「捕えたぞ…九尾。
 このまま四尾ごとオレの中へ引きずり込んでやる。」

トビは虎視眈々とナルトの中の九尾も狙っています。
四尾の口が開かない状態。このまま膠着状態が続けば状況は悪化するだけです。
口を開けさせるために何か手はないか考えます。
"吐かせる→食べ過ぎ"という発想から多重影分身で、
四尾の口と腹の中をいっぱいにする面白い手法で難をなんとか切り抜けます。
しかし問題はまだ解決されていません。
ペインと同様の"杭"をどうにか見つけ、そして外さないといけないのです。
首のあたりを探せと四尾。人柱力のときは胸にあったのですが、
尾獣化に伴って巨大化したため、首元の方へ移動してしまうようです。

「とにかくその杭を引き抜け。
 そうすりゃチャクラの鎖は出てこなくなる!」

四尾のアドバイスを聴き、首元をよくよく観察すると、
確かに黒い杭が刺さっていることに気づきます。

「それで中にいるオレを今縛ってる鎖も連動して消えるハズだ!
 カンタンじゃねーぞ!!
 オレは操られてて攻撃を止められねェ!」

精神世界で四尾を縛るチャクラの鎖は、その杭によるもの。
それによって外界の四尾は操られた状態となっています。
この杭を引き抜くことが根本的な解決策なのです。

「分かってる。その分手荒くなっちまうかもしんねーけど、
 ガマンしてくれってばよ!」

とナルトは四尾に言います。

「勢い余って殺してくれるなよ!」

と冗談まじりにナルトに任せた四尾。
その期待に応えるために、再び九尾チャクラモードを展開し、
握りつぶされそうになるのを防ぐと、
一気にチャクラの手を伸ばして首元の杭までいきます。
あとは杭を引き抜くだけ。
しかし杭を引き抜こうとすると、
自分にもチャクラの鎖が絡み付いてきて思うように引き抜けません。

「その杭は直接触れているモノを縛る。
 ペイン長門の外道の力よりはるかに強い縛りだ。」

とトビがほくそ笑むのはどうやらこの杭は、
長門が使っていたものの強化版のようで、
簡単には引き抜けないそうだからです。

2.意志の証明(2)

「結局、今まで通り…」

九尾は静かにナルトの言動を思い返します。

「オレは火影の名前をもらうんだってばよ!!
 お前ら今に見てろー!!」
「このオレはいずれ火影の名を受けついで、んでよ!
 先代のどの火影をも超えてやるんだ!!!!
 でさでさ里にオレの力を認めさせてやんだよ!!」

おごってもらったラーメンを頬張りながら、
イルカに高らかに宣言するナルト。

「多重影分身?
 なんだよ! なんだよ!
 いきなりにがてな術かよ〜〜」

ミズキに騙されて盗んだ封印の巻物。
禁断とされるその中の一つの高等忍術、多重影分身の術。
ナルトの屋台骨となった術です。そしてその術を使って、
ナルトを利用したミズキを逆に成敗してしまったこともありました。

「証明してやる…。
 このオレがこの世に英雄がいるって事を証明してやる!!」
「遅くなって悪かったな…。
 ヒーローってのは遅れて登場するもんだからよ…。」

波の国任務。心を閉ざしかけていたイナリのピンチに、
助けにあらわれたナルトの言葉。

「…オレは逃げねェ…。
 まっ…すぐ自分の言葉は曲げねェ…。」

中忍試験本選。ネジとの戦い。
厳しい宿命を背負い、その厳しさに負けないために鍛錬を重ねてきたネジ。
彼は火影になると口にするナルトに、
火影というものはなろうとしてなれるものでなく、
そういう運命を背負ったものがなるものだ、と教えます。
四代目火影を父親にもつことが分かった現在、
ネジの言葉はある意味正しかったといえますが、
それよりも人柱力ということで憎しみの矢面となって、
里の人々から認められていなかった当時を考えれば、
ナルトが言っていたように、自分の信念を曲げずに、
火影に向かって真っすぐ努力し続けてきたことによって現在の彼があるわけで、
一概に運命や宿命なんて言葉では片づけられません。

「修得出来もしない術を教えて師匠気取りか?
 …その気にさせんのはよしな。
 だから夢見がちなガキが火影になるだのと、
 戯言を言い始めんのさ。」(綱手
「ガキは全てが簡単だと思ってる…。
 だからバカげた夢を平気で口にする。
 だからあきらめない…そして死ぬんだ」(カブト)

人々はナルトが火影になると口にすることを受け入れてはくれませんでした。
火影になると言った大事な人を二人も失った綱手の言葉。
若くして暁のスパイとして暗躍(記憶は操作されている)、
才気溢れるゆえ、医療忍術を簡単に身につけ、
忠誠を誓う大蛇丸のもとで研鑽を重ねる薬師カブトの言葉。
それらを跳ね除け、不可能と呼ばれていた螺旋丸を習得し、
ついにはカブトを打ち倒します。

「オレが諦めるのを――諦めろ!!!!」

平和に対する明確な答え――長門(天道ペイン)は、
それを持たないナルトに諦めろと諭しますが、
それに対して一喝しました。

「よく帰ってきた!」
「信じてたぞ!」
「お前は英雄だ、ナルト!」
「ありがとう!」
「おかえり!」
「ナルトー!」

里に未曽有の災禍をもたらしたペインを打ち倒し、
無事里に帰ってきたナルトに人々がかけた言葉。
"人柱力"という宿命に負けず、里の人々に認められたのです。

「なぁ九尾…。オレはな、
 いつかおめーの中の憎しみもどうにかしてやりてーと思ってる…。」

そしてナルトが九尾にかけた言葉。

「ナルトお前がワシ達尾獣のために…
 本気で何かしてやりてーと本心で思うなら…、
 今まで通り…行動で証明しろ!!
 それがお前だろ!!!!」

そんなナルトを九尾は応援するように言います。
いつも言葉だけじゃなくて、行動してきたからこそ、
現在のナルトに成長し、だからこそ認められていったのです。
九尾にも――!

「さっき手荒くなっちまうって言ったから分かってくれよ!
 ここの中から杭を押す!」

四尾の内側に入り込んだ分身体。
仙人モードとなって本体が引き抜こうとしている杭を
内側から《蛙たたき》を使って一気に叩きだします。