526 『激戦! ダルイ部隊!!』

1.激戦! ダルイ部隊!!(1)

「ワシら大名達や要人は、
 こういう戦争で人質として利用される…。
 身の安全を保障するのも、忍の役目だぞ……!」

戦争ばかりでなく、要人警護もしっかりやってくれ、
そうゲキを飛ばすかのような霜の国の大名に、

「そのために私がついています。
 霜の国の大名様。」

警護にあたった五代目水影・照美メイは、
自信が漂う微笑みを浮かべながら答えます。

「それにこれから行く先は5ヵ所の隠れ家です。
 敵にこちらの所在を悟られないよう、
 大名様達は一定時間でその5ヵ所を移動して回ります。
 護衛の忍も強者ばかりですしね。」

水影たちの役割は大名たちなど要人の護衛のようです。
ある山の周囲を五角形状に点在する隠れ家を行き来することで、
所在を敵に掴ませないという作戦のようですが、
裏を返せばそれは移動中を敵に狙われる可能性が高いということ。

「…うむ。それなら安心じゃな。」

しかし、影クラスの忍が護衛につくとあって、
霜の国の大名も納得の様子。

一方すでに一箇所に匿われている五大国の大名達は、
いま世間で起きていることにまったく無頓着な様子。
褒美の勲章をどんな名前にするか――
そんなことを考えながら呑気に構えています。

「大名達はのん気なもんだな。
 勲章なんてもらったところでだが…。」

並足ライドウも呑気な大名たちの様子に半ば呆れ気味。

「それが彼らの仕事だ。
 それに勲章をバカにすんなよ。
 勲章がなくなっちまったら、
 何が名誉なのか分からなくなっちまう。
 その基準は誰かが決めねーとな。」

同じく警護にあたる不知火ゲンマは、
勲章があることについての意味を語ります。
勲章とはいわば“そうやって生きてきた”ことを讃えられた証。
ある人物がどんなことを成し遂げたのか、
ということを端的に表すものであって、
決して無意味なものではないと諭します。
もちろんライドウも分かってはいますが、
あまりにも大名達がのん気で、
自分たちが誰のために身体を張ってるかを考えると少し虚しく思えたから、
恨み言の一つでも言ってやりたくなったという様な口調で、相槌を打ちます。


一方、着実に敵の気配は迫っています。
黒ゼツがその隠れ家と思われる一つに迫り、大胆にも侵入。

「(ココデハナカッタカ……)」

見つかって網で捕えられるも、
床に統合、親和していくように、消え去ります。
森林へと引き上げてきた黒ゼツ。

「(フン…。コノ黒ゼツノ能力…
  甘クミラレタモノダ。
  全テノ地ハオレソノモノダ…。)」

広い大地と癒合し、一体化します。
おそらくその感知範囲は大地そのもの。
その上を歩いていく霜の国大名一行は、
すぐに感知されてしまうことでしょう。

2.激戦! ダルイ部隊!!(2)

「だるいけど…、
 何でオレがこの海沿いを任されたか、教えてやるか…。
 オレが火蓋を切る…続け。」

岸壁で敵の接近を見守っていたダルイたちの部隊。
ついに狼煙をあげます。
先手はダルイの雷遁・黒斑差。
彼の雷遁は特別なようで、黒い雷が海を駆け巡ります。
感電する白ゼツの部隊。

「先代雷影様から“雷”を刻む事を許されたのは、
 ダルイ隊長だけだ。」

三代目雷影と同じ“雷”の刻印を肩にもつダルイ。
あっという間に敵部隊の大部分にダメージを与えます。
しかし、その攻撃を掻い潜って、穢土転生の忍たちが岸壁へ。
攻防は一瞬にして激化します。

「大きくなったな、チョウザ。」

チョウザの前に現れたのは、綱手の想い人、ダン。

「これからもっと大きくならなきゃなりませんけどね。」

ダンは享年27歳。綱手と年齢が同じなら、
チョウザとは14歳年齢が離れています。*1
つまりダンが知ってるチョウザは死ぬ直前なら13歳。
それが現在では巨漢となっているわけですから、
ダンは自分が死んでいる(=時が止まっていた)という事実に、
改めて気づかされたといったような口調です。

「…兄さん…すまない。
 …宗家を守るはずの分家の私が宗家の敵になるとは…。
 …かつて宗家を恨んだ罰がこれだよ…。
 体がいう事をきかない。
 結局里のために自ら死を選んだ己の意志すら否定された…。
 これが分家の私に課せられた運命か…。」

そう語るヒアシ。それに対してヒザシは、
かつて宗家を、ネジや兄弟家族を守るために、
喜んで犠牲になろうとした弟のあの時の表情を思い浮かべながら語ります。

「そんな運命などない!
 お前の息子が、それを示そうと戦ってきた。
 …私の娘もだ。」

宗家をも脅かす才能をもち、
父の宿命を知り、分家に身をうずめるネジ。
その穏やかな性格が災いとなって、
次期当主としては頼りない実の娘ヒナタ。

「今は分家として宗家の血を守るのではない。
 ただ仲間として守り合う!」

しかし彼らはそんな運命を打ち破らんばかりに成長した――
もう分家も宗家もない。日向一族一丸となって、
“仲間”としてお互いを称え合いながら戦っているのです。


カンクロウたちのもとにはチヨバアや半蔵。
捕えられたデイダラを見やりながら、半蔵は口を開きます。

「お前ら“暁”もそして五大国の忍もワシの敵でしかない。
 助けるつもりもないが…
 何より許せないのはこの術のようだ…。
 …体が勝手に動く…。」

外からは五大国列強に耐えつつも、
内では長門が築き上げた“暁”による内乱に耐えてきた、
雨隠れの元長、半蔵。そうやって自分の意思を貫き通してきました。
しかし穢土転生によって、自らの意思に反する行動をとらなければならない。
彼にとっては、屈辱だと思われます。


黄ツチたちに本部からの伝令が伝わった頃、
オオノキが我愛羅のもとへ来ます。

「…重い腰を上げなくてもよいものを…。」

と過ぎた加勢と言わんばかりの物言いに、
オオノキは答えます。

「フン…上げさせたのはどいつじゃ…。
 いつぞや捨てた己をここで拾う!!」

保守的になりすぎて、
新しいことや人を見ていなかった自分がいた――
今一度“熱くなる”必要があると感じたのでしょう。
相手がかつての師匠であればなおのこと。
土影も“共に”戦う意志を見せます。

「なさけねェ…。ぶっ倒した二代目火影の術に、
 このオレがかかってるなんてのはな…。なあ金角。」

細身の顔ですが厳つさが際立つ銀角。

「…銀角…。奴の左肩を見ろ。
 三代目の雷を背負った若造だ…。
 少しはできそうだ。」

銀角よりも筋骨隆々とした様子の金角。
二代目火影・扉間は金角たちの部隊によって倒されました。
雲に二つの光あり、彼らは雲隠れの里では英雄と思われます。
その後、三代目(=エーの父親)が、
雷影となったところまでは生きていたようです。
二人の容姿からも40代程度と推測されます。

「大先輩に失礼だけど、もう少し恥かいてもらうっス…。
 お二人の金と銀のメッキを剥がす事になるかもしれません…。
 オレの嵐遁で一気にね! だるいっスけど!!」

そんな英雄を前にして臆することなく、啖呵を切ってみせるダルイ。
二人の栄光を冠すその名前の金、銀を“メッキ”扱いにするほど、
嵐遁の威力は凄絶だということになるのでしょう。