来週からようやく月曜更新に戻れるかもです(*_*)

612『忍連合軍の術』

1.忍連合軍の術(1)

「…忍連合軍の術か…
 こじつけもいいとこだな。」

忍連合軍の術――
五大国がより合わさった全ての忍たち。
その壮大な光景も、
マダラの心を全く動かすに足りません。

「この術でお前らを止める!!」

――とナルト。

「違う…。
 お前らがここでオレ達を止めようが、
 無意味なことに、なぜ気付かない。
 その術とてこの戦争の後には脆く崩れ、
 そちら側の誰かがまたオレ達と
 同じことをするようになる。

オビトは言います。
結局は五大国がより合わさって力を合わせている
現在の忍連合の姿は仮初の姿。
すなわち、共通の敵がいるからこそ、
"仲間"のように振る舞っているだけで、
そこに"理解"などない――というのです。
現実は決して甘美な姿をとりません。
オビトの悲観的な見方もある意味は正しいのかもしれない――

「…この世界でもがいても勝ちは無い。
 この世界に希望など…どこにもないと、
 もう知れ…!」

でも、この世界が存在する価値がないのか、
はたしてちっぽけな人間であるオビトやマダラが
決めてしまっても良い事なのでしょうか。
人の営みは小さい――
小さいであるがゆえに、一生懸命輝こうとしています。
そしてそのわずかな光がより合わさって、
この世界は光り輝いている――
オビトたちはいままさにその輝きの縮図を目撃しているのです。
でも、もう何も思うことはない――
幻の世界こそが彼の住むべき場所だと信じるからこそ、
目の前の輝きを見る事ができないのです。
そのよく見える写輪眼を以てしても――

「どうだろうが、あることにする!!!」

とナルトは答えます。
希望が存在しないと思うから、
目の前の小さな輝きを見ようとしないから、
だから見えないだけなのだと。
自分が信じる、皆が信じる――そこに存在するのだと。

「戦争中にあるないと言い合うのも無意味だ…。
 そろそろ決着をつけるか。」

とマダラ。
いい加減この手の話は飽き飽きとしているのでしょう。
でなければ、世界を終わらせ、
新しい世界に造り変えてやろうとなど思わないはずです。

「意見が割れた時は多数決ってのが決まりだろ…だいたい。
 どうする!?」

とナルト。

「いい案だ…。なら――、
 一人残らず消してからにしよう。
 そして…この世界は――」

対して多数決主義をとるなら、
反対するような誰もかれも消してしまってから、
論ずればよいとするオビト。

「やっぱそうくるか…。
 けど…この世界は――」

流石のナルトもオビトやマダラの考えは分かっています。
そして、決してそうさせるわけにはいかない――

「終わらせる…!!」
「終わらせねェ!!」

互いに譲る気はありません。
この言葉に双方の気迫が溢れています。

2.忍連合軍の術(2)

これが最終決戦!
ナルトが啖呵を切っている間、
シカクが本格的な《忍連合の術》の作戦を練っていたようです。

「カカシから面の男が、
 うちはオビトだったと聞いても
 驚くヒマもないよ!
 この戦い…先手を取り続け反撃のスキも与えん!!」

シカクはいのいちを通じて、
皆に念話で語りかけます。
もはや、仮面の男の正体がオビトだったことなど、
取るにたらない事。
全身全霊をもって、この最終局面で勝利をおさめるべく動きます。

「まずは目くらましで動きを鈍らせ、
 視界を潰す! 雲隠れの衆!!」

シカクの言葉に応じるように、
シーやダルイを先頭に雲隠れの忍たちが動き始めます。
《雷遁・雷光柱》による閃光で目を眩ませたあと、
引き続き《嵐遁・励挫鎖荷素》によって。
あたりに嵐を引き起こし砂煙を巻き起こします。

「なるほど…。オレたちを狙いつつ…
 本当の狙いは十尾の目潰しか…」

マダラには忍術による攻撃は、
すべて輪廻眼の《封術吸引》で吸い込まれてしまいますが、
本当の狙いは十尾の目眩ましです。

「そして少し前の霧隠れの霧と邪民具の蟲の二つの術…
 さらに嵐遁でできた多量の土ケムリを気流に乗せ操り、
 砂隠れの衆! 今だ!!」

次に砂隠れの忍たちによる《風遁・気流乱舞》で、
さらに風の壁をつくって完全に視界を遮断するのです。

「…視界を完璧に潰しつつ、
 こちらの姿と気配を捉えられなくする。
 あちらはデカイ分、隠れようがないからな…
 その条件を充分に活かさせてもらう。」

その風の壁にはところどころに油女一族の《蟲邪民具の術》による
蟲たちが舞っています。
チャクラ感知を夥しい蟲たちが惑わせるのです。

「(他里の術を教えたのはついこの前なのに、
  すぐに実戦に取り入れやがるとはな。
  あのシカマルのオヤジだけはあるか!)」

とテマリも感心するほどの連携の組み立てぶり。

「感知も無理だな…これじゃ。」
「十尾の攻撃で薙ぎ払えばいい!」

とマダラやオビトも感知を諦めるほど。

「岩隠れの衆。直ぐに次だ!!」

次に黄ツチを中心とした岩隠れの忍たちの《土遁・大地動核》で、
十尾たちを地割れのなかに閉じ込めます。

「視覚を奪った次は、体の自由を奪う!」

続いて黒ツチを中心とした《熔遁・石灰凝の術》で石灰を吹きかけていき、

「十尾を落としたらすぐに石灰を――
 霧隠れの衆、続け!!
 水と一緒に加えながら注ぎ――」

霧隠れの忍たちが《水遁・水弾の術》で
石灰を水とかくはんさせて、

木ノ葉隠れの衆、仕上げだ!!
 石灰と水を一気にカクハンさせつつ、
 火遁の勢いで乾かし――
 固めて――止める!!」

木ノ葉の忍の中でも火遁を得意とする猿飛一族が前にたって
《火遁・豪炎の術》でコンクリートを固めるようにして、
完全に十尾の動きを封じることに成功します。

「信じられんな…。
 あの五里の忍共がここまでの連携をやってみせるとはな…。」

とマダラも少しは感心したように、
言葉をもらします。

「十尾を止めないことにはオビトとマダラを狙うチャンスもない。
 十尾は奴らにとって術を発動させるための道具。
 頭であるその2人の術者をたたけば、
 無限月読とやらは発動しないハズだ!
 ただし十尾の力を押えられる時間は
 あまり無いと思った方がいい。
 マダラは物理攻撃以外効かない。
 体恤スキルのある忍はマダラにかかれ!
 オビトは全ての態と術がすり抜けるが、
 情報では5分間だけだそうだ。
 医療部隊と連携しつつ、
 5分以上攻撃の手を緩めるな!
 ナルト…そう今こそお前の言う――」

シカクは各忍たちへ伝令します。
皆の力を信じて、最後の仕上げへ――

「忍連合の術だってばよ!!!」

これぞ忍の究極の術《忍連合の術》。

「哀れだな……」

しかし、マダラたちは一向に動じません。

「ああ……。
 奴らのすがっている希望など…存在しない。
 今となっては奴らの存在とて、
 それと同じ…。
 十尾も…頃合いのようだ。」

十尾もまだ真の力を発揮していません。
ただただ不気味に蠢き、
めりめりとコンクリートを軋ませている音が響いています。
暗澹とした世界へと誘う序曲のようです。