.金角部隊

「この追跡力からして、雲隠れ…
 手練れの金角部隊か。」

そもそも金角、銀角の金角は481話『ダンゾウ死す!!』で出てくる
二代目火影を追跡していた金角部隊の金角でしょう。
つまり二代目火影、二代目土影、二代目水影が
活躍していた時代の人物のはずです。
その金角、銀角が、
九尾のチャクラを帯びているとはどういうことでしょう?

「渦潮の里の中でも、私は特に九尾を押さえ込める強いチャクラを、
 持って生まれたらしくてね。
 私の前任の人柱力だった人も渦潮のくの一だったから。
 …慣習になってたってのもあるし。
 その人の名はうずまきミト。初代火影の妻になった人。」

クシナが幼き頃、九尾の人柱力となるために連れてこられたとき、
九尾の人柱力でかつ初代火影の妻ミトは、
高齢ながらもその封印を守っていました。
クシナで2番目――
その時まで九尾はミトが所有していたことになります。
そこからクシナにわたり、そしてナルトへ受け継がれていった九尾。
木ノ葉に九尾が途絶えたことはないと一見感じ取れます。
しかし、九尾のチャクラを帯びているという金角、銀角――。
彼らもまた人柱力だったとすれば、それは何を指すかといえば、
雲隠れに一度は九尾を奪われたことがあるということでしょう。


初代火影の妻として九尾を自らに封印していたミト。
しかし、何かの折に九尾の封印が解けてしまった――
うずまき一族であったミトは命を落とすまでに至らなかったものの、
そこを何者かに狙われた可能性があります。

「前任のミト様がそうだった…。
 出産の時、封印が解けそうになったのじゃ。」

三代目火影猿飛ヒルゼンはクシナの出産に際し、
このように言っていました。
しかし、これはあくまで解けそうになったであって、
解けたわけではないと考えられます。
ですが、ヒルゼンの行動には不可解な点も見受けられます。
九尾の封印が解けてしまったら一大事なのに、
ごく限られた人物にしかクシナの出産を知らせなかった点です。

確かに四代目火影の身辺を気にして、というのもあるでしょうが、
もし九尾の封印が解けてしまったことを考えたら浅はか。
限られた人数だけで九尾をおさめようとするにはあまりに無謀です。
そのリスクをおかしてまで秘匿にしとかなければならなかったのは、
この出産において九尾の封印が解けることよりもずっと、
四代目の身辺を気にする方が大きかったというわけです。
つまり、何者かに狙われている――という意識が常にあった。
図らずもそれは仮面の男トビなる人物によってもたらされるのですが、
ヒルゼンが気にしていたのはずっと前の出来事――
おそらくミトの出産のときで、
このとき何者かの襲撃があったのではないでしょうか。
その何者かがおそらく雲隠れで、この時は失敗しますが、
その後にどういう経緯か雲隠れに九尾がわたったのではないかと考えられます。


二代目火影が金角部隊に追われる場面へと再び話を戻しますが、
以上のことを踏まえてなぜ二代目火影は金角部隊に追われていたか、
を考えると、しっかりとした筋書きが思い浮かぶのです。
あの時、二代目火影含む部隊は直々に九尾を取り返しにいった――
そして九尾を奪還できたものの、雲隠れに追跡を受けていたのでは…。

「敵はまだこちらの位置をハッキリとは把握できてない。
 ここは待ち伏せして不意を突き、逃げ道の突破口を…」

うたたねコハルの台詞からも読み取れますが、
いくら多勢に囲まれたとはいえ、
相手との戦いを避けるということは、
当然この部隊の目的は“戦闘が目的ではなかった”ということです。
このとき二代目火影が身体を張って追跡を食い止めようとします。
若き火の意志に希望を託して――
でも冷静に考えれば、戦場とはいえ、
二代目火影がそこまでする価値がこの件からは読み取れなかったのです。
しかし、ここに九尾というキーワードが入るならまた別。
なんとしてでも九尾を木ノ葉に持ち帰る必要がある――。
そうだったなら、色々な話の情景が繋がっていく――


かつてクシナがこんなことを言ってましたね。

「…私には少し特別なチャクラがあってね…。
 それを狙って雲隠れの里が私をさらった事があったの。」

この件はクシナが赤い髪の毛を落としていって、
それに気づいたミナトが彼女を救ったという馴れ初め話として
498話『母ちゃんの赤い髪』で何気なく挿話されていました。その後、

「私は2番目の九尾の人柱力として選ばれた。
 本当言うと九尾の人柱力になるために木ノ葉へ連れてこられたの…。
 渦の国からね。」

500話『ナルトの出生』では九尾の人柱力を目的として
渦の国からやってきたことが明かされます。
――ということは、必然的に雲隠れの里は、
九尾の人柱力たる特別な力を狙った
と見るのが普通です。
あるいは九尾の人柱力の後継を絶とうとした
その隙を縫って、かつて金角や銀角が所有していたように、
九尾をもう一度雲隠れが所有しようとしたのかもしれません。
もう一つ。実は、クシナが幼き頃、
ちょうど八尾の人柱力であるビーも幼かったころのはずです。
――というのも現在の二部の年代x+3年では、
生きていれば、うちはミコトは40歳あたり(x年法では42歳)
年齢が近いと思われるクシナもその周辺であり、
容姿からビーもこのくらいの年齢だと考えられます。
彼もまた幼き時分人柱力になったのがモトイの話から明かされていますが、
クシナが人柱力になった時期とビーが人柱力になった時期は近接している
ように思われます。
八尾の人柱力となるビーのために、うずまき一族の力を狙った
のも解釈しやすい事件の背景です。