530 『チョウジの決意』

遅くなりました。m(_ _)m

1.チョウジの決意(1)

「びびってた割にはやるわね、チョウジ!」

と、いのは言葉をかけます。

「…冷や汗で激やせした気分だよ。」

見るも恐ろしい強大な敵に、
勇猛果敢にも、一連の連携攻撃の初撃として
流れをつくるために斬り込んだチョウジ。
一番リスクがあったのは彼でしょう。

「気分ならオーケーだ。
 大丈夫。いつものお前だよ。」

少々チョウジは放心状態ですが、
シカマルはさっと落ち着かせるような言葉をかけます。
それぞれの親たちも、自分の子供達の活躍に満足気です。


時を同じくして、

「第6から第10分隊は負傷者を後続へ!!
 他はオレに続け!!」

黄ツチの掛け声とともに、
劣勢だった軍勢は勢いを取り戻します。

「言霊ってのを縛り出す縄も金角と一緒に封印しちまったな…。
 これじゃあ忍具は使えねーか…、
 って、あとも一つの芭蕉扇ってのはどこだ?」

ダルイは幌金縄も一緒に金角とともに封印してしまったことに気づきます。
もう一つの宝具・芭蕉扇の在り処を気にかけているようです。


シカマル、チョウジ、いのは再び戦場に目を向けます。
そこにはかつての仇敵の一人、角都の姿がありました。

「“金”は取った――――
 “角”のアンタの動きも手の内も知ってる…。
 こっからはこっちが攻め倒す。」

将棋の駒に例えたフレーズ。
故・アスマの仇にアスマのフレーズを用いることで、
シカマルは自らを奮い立たせます。
“金”取り――すなわち金角を斃したことを意味しますが、
この場合銀角の“銀”も含めて、
彼らが手にしていた宝具も連合軍側にわたり、
まさに金、銀の駒を取った状態というわけです。
そして角の動き――角都の術式や攻撃パターンも既知。
どう攻めるかは自ずと見えてくるというわけです。

「影を使うガキ…。
 お前がここにいるという事は飛段を止めたのだな。
 また祈りの最中に首でもハネられたか……
 …あいつがここに居ないのは、
 まだ死んでないという事か?」

飛段の姿がない――
暁の一人であり、自分を甦らせる者ならば、
飛段を穢土転生で甦らせないわけがない――
穢土転生で甦らない理由はただ一つ。死んでいないから――
角都はその事情を察します。

「あいつの腐れ期限なんて知るか!!」

角都に鋭い敵意をむけるいの。
飛段は死にもせず、かといって生きているともいえない、
呪われた身体の呪縛に囚われたまま地中深くに閉じ込めました。

「飛車もなく金銀取られて防戦一方とはな。」

飛車落ちで金銀をとられてしまった盤上でも、
角都は臆することはありません。

「さて…そろそろ“角”成りといくか。」

角は通常斜め方向にしか(ただし自在ですが)動けませんが、
相手陣地へ突っ込めば成って“馬(龍馬)”になります。
この“馬”は角の動きに金と銀の動きも兼ね備える大駒。
5つの心臓を相手陣地から横取りした角は、
いままさに馬に成るべく4体の仮面の化け物を解放します。

2.チョウジの決意(2)

「でだ…こちらも“金銀”の手ゴマを取っててな。
 そいつらはどんな奴か気にならないか?」

しかし金銀という詰む*1のに役立つ駒は、
連合軍だけにわたったわけではありませんでした。
角都は木ノ葉隠れの忍たちを指で指し示します。

「加藤ダン…綱手姫の相方。
 そして猿飛アスマ…。三代目火影の子でお前らの師だ。」

アスマの姿を見て愕然とする3人。

「なにも相手の手ゴマを取ったのはお前達ばかりではないようだ。
 ほかにもまだ何人もいる。…皮肉だな。」

そういって角都は、仮面の四体を戦場へ解き放ちます。


「チョウザ。四紫炎陣の準備はまだか!?
 早くオレを結界の中へ閉じ込めろ!
 オレが“霊化の術”を使う前に!!」

一方でチョウザを急き立てるダン。
まだ意識はカブトに残してもらえているようで、
どうやら霊化の術なるものを使う前に、
四紫炎陣なるおそらくは結界術を使って、
自らを閉じ込めるように言います。
しかし事は簡単ではない、とチョウザは言います。
ダンの意識はあるものの、その意識のままならない状態、
どうやら強制的に戦闘させられているといった模様。
そのチョウザの後ろでは四紫炎陣が着々と進められていますが、
そこへ角都の秘術・地怨虞で生み出された仮面の怪物が飛来します。

「てめーにゃ借りがある……。
 忘れてねーよなひじきヤロー!」

その様子を見届ける角都に背後からイズモとコテツの強襲。
角都は大きく身体を×字に斬られます。

「地獄の沙汰も金次第って言うが…、
 死んでみてそれが役に立ったか聞いていいか?」

生前は暁で財布役として金銭に執心していた角都。
イズモが餞別とでも言うように皮肉を言います。
角都は地怨虞で斬り落とされた腕を再生しようとしますが、
剣を突き刺され身動きがとれません。
イズモ、コテツはこの隙に畳み掛けるように
シカマルたちと協力して封印しようとしますが、
そこにシカクからの伝令が届きます。

「(イズモ、コテツ。角都はお前達とダルイにまかせる。
  そいつは土遁を使う…。雷遁のダルイを軸に戦え。
  シカマル達はアスマとやらせる。)」

そう言いシカクはシカマルたちをアスマたちの下へ向わせます。
手の内を一番良く分かっているのは、
シカマルたちに他ならないからです。

「(泣き言は言うな、お前達!
  これは戦争だ! 必ず勝たなきゃいけねェ!)」

シカクももちろん非情であることは重々理解しています。

「(本当に仲間を大切に思うならな、
  逃げることを考える前に…
  仲間のためにてめーがより優秀になることを考えやがれ!
  それが本当の仲間ってもんだろーが。この腰抜けが!)」

かつて父シカクが自分に語ったことを、
シカマルは唇をかみ締め、思い出します。
何が一番大切なのか――
守らなければいけないものは――

「オレは行くぞ。」

アスマの言葉に報いるためにも
いまこそ幻影を振り払い、
逃げずに立ち向かうとき。
そう判断したシカマルは強く言い放ちます。

「チョウジ!
 周りの仲間をちゃんと見ろ!!」

チョウジもチョウザの言葉ではっと我に返ります。
皆、戦場という過酷な環境の中で、
逃げずに目の前の敵と向き合って一刻一秒を懸命に戦っている――
その姿をみてチョウジも決心を固めます。

「行くよ、二人共。」

アスマの最後の言葉を思い出しながら、
いのはそっと二人の肩を押しだします。


シカマルたちはアスマがとったように決して棒銀という
攻め方はしないでしょう。
玉を守るためには、どんな駒もわたってはいけない状況なのです。
【アスマの負け将棋と玉】*2で考察したように、
アスマは王手から目を逸らせようと龍の前に金をおいたように、
今度は奇しくもアスマ自身が幻影となって、
王手をそらせようとしているこの金の状況をつくりだしています。

シカマルはその状況を見抜いているはずです。


一方で連合軍のカンクロウ率いる奇襲部隊を
中吉の案内のもと半蔵たちは追跡します。

「…“暁”だか大蛇丸だか知らんが、
 ワシを蘇らせた事を後悔させてやる!!
 ガチで“死んだフリ〜”をかましてもーたがな!
 恥ずかしいわっ!!」

と穢土転生の術を皮肉るチヨばあ。

「集中している。少し黙れ傀儡ババア。」

という半蔵に、

「うるさいわい!!
 ビッグシュノーケルじじい!!」

とまあ見事な攻防?を繰り広げるあたり、
これが年長の見せる余裕というやつでしょう。
半蔵は通り名である山椒魚を口寄せします。
イブセと呼ばれる山椒魚は半蔵の掛け声とともに、
あたりに毒霧を振りまきます。
退路に集中するあまり、裏をかかれたカンクロウたちは、
この毒霧をくらってしまいます。
追いつかれ絶体絶命のところをミフネが助太刀。

ハンゾウ殿と御見受けする。
 拙者、侍統領ミフネと申す。
 お手合わせ願いたい!」

影クラスの実力があると思われる、ミフネ。
五大国相手に渡り合った雨隠れの長、半蔵。
その戦いは熾烈を極めるものとなりそうです。

*1:詰むとは、将棋で王(または)玉の逃げ道を完全に塞ぐこと

*2:【アスマの負け将棋と玉】