511 『帰ってこよう』

1.帰ってこよう(1)

トビは時空間忍術を使って、
長門の輪廻眼をその左眼に移植するような素振りを見せます。
予定外の時間がかかったようですが、
トビは用事を終えて霊廟から去っていきます。

時同じくして水面に浮かぶ小南。
すでにその意識はなく、死出の旅へと向かいましたが、
小南の遺志を継ぐように紙術による紙が一枚、
血に染まりながらも、風でそよぎ、宙を舞っていきます。
小南、弥彦、長門。彼らの過去を思い出すように。

「一番右が小南、中央が弥彦…で、左が長門のものだ。
 これはかえる板という。」

自来也が蛙の着ぐるみを着ながら、
その弟子達につるされた札――かえる板を説明します。

「うむ…。これは表は赤、裏は白になっていて、
 このように板はひっくり返る!」

そういって板をひっくり返らせてにんまり笑う自来也
シャレを言ったのですが、長門だけ少し理解が遅れた様子。

「……とにかく、アジトの中に居る時は板を赤にし、
 外出する時はこれをひっくり返して白にしてから出かける…。
 ちなみにこの絵はもうすぐ帰るという合図になっている!」

図柄の蛙の絵と帰るをかけてにんまりする自来也

「……いや何なんスか、さっきから…。
 ガマ仙人だから大目に見てるだけっすよ。
 このかえる押し。」

もちろん場の反応はいいものではありません。
弥彦の痛烈なツッコミ。

「…でも何でそんな事しないとダメなんですか?」

小南は訊きます。

「この辺はまだ治安も悪い…。
 いつこの場所が狙われるかも分からん……。
 実はアジトに居る時が狙われやすい。
 …居場所がバレバレの分、奇襲などをかけられやすいからのう。」

――と、ここまで自来也の話を聞いて、小南が理解します。

「つまり板が赤のままなのに、
 アジトにその人が居ない時は敵にさらわれたとか、
 白なのに部屋にずっといるって事は変化した敵、
 って可能性も考えられる…。
 そういうのがすぐに分かるって事でしょ?」

ここまで分かりやすいものだと、
成りすましも簡単でしょうから、

「とにかく四人だけの暗号として各々存在確認を常に意識しておく!
 つまりアジトに居る時も気が抜けない状況だって事だ。」

自来也の伝えたいことは、
そのような仲間にしか分からない互いの連絡方法を持っておけ、
ということでしょう。

「…一応地下の隠し部屋とそこから外に出る抜け道も作っておいた。
 何かあった時はここから外に逃げろ。」

一通り伝えたかったことを伝えられて、
“蛙の面に水”なる忍耐修行へと移ります。

「オレはもっともっと強くなって!!
 そんでもってこの国を変える!!」

弥彦の言葉に小南が微笑みます。
そして長門も笑います。


少し横道にそれますが、
この弥彦の台詞はナルトにとても近いものを感じます。
小南がナルトを信じたのも、
弥彦の姿がナルトに重なったからというのもあるでしょう。

2.帰ってこよう(2)

修行の日々を経て三人は成長していきます。
そして自来也との別れ。
去っていった自来也がまた帰ってくるようにかえる札は表のまま。
戦いの日々。三人で協力して切り抜けます。
弥彦の大怪我を介抱する小南。
互いに意識したのか、少し頬を赤らめる二人。
長門は外で優しく見守ります。
雨隠れを変えるためにつくられた暁。

「組織も大きくなってきた…。
 アジトも移らないとな…。」

組織のメンバーとは別に、
この三人は思いで深い自来也との小屋も隠れ家としてきたのでしょう。
しかし統率を考え、大人数を収容できる
別のアジトに移ろうとしている様子です。

「ここでオレ達は変わった…。力をつけた。
 全てはここから始まった。
 オレ達は夢の実現のためにここより出発する!
 そして…」

三人が各々のかえる札をひっくり返し、
“ここに帰る”ことを示そうとします。
小南が返し、弥彦が札に手をかけたところで、敵襲。
地下通路を通って敵を欺くことができた三人。

「とんだ出発になっちまったけど…、この国らしい感じだな。
 さあ行くぞ! 長門! 小南!」

出発する三人。

「オレ達は夢の実現のためにここより出発する!
 そして…オレ達の夢が叶ったら、
 たとえバラバラになっていたしても……
 いつかここへ帰ってこよう。
 そして三人で祝福すんだ!」

長門と弥彦が眠る場所は、
かつて自来也たちと修行して、
いまは廃屋となった場所。

「…ならその時は自来也先生も呼ばなきゃ…。」
「そうだね……。」
「ま……そうなるか…。」

そう。ここが彼らの眠る霊廟だったのです。
蔦が覆い茂ても、かえる札はあの日の面影を残しています。
敵襲によってあけられた天井の穴からは虹が見えています。
希望はまだ潰えていません。


対比的に写輪眼を模した仮面の穴から外を覗くトビ。
一瞬親指にも見えますが、間違いのようで(笑)

「手こずっただけあっていい眼を手に入れたね。」

カブトがトビにいいます。
やはり輪廻眼は彼に移植されたようです。
鬼鮫からの情報を手に入れ、
彼らは再び動き出します。

「九尾を取りにいく。」