376 『予言の子』

1.予言の子

登場した新・自来也は団子鼻、瞳が口寄せ蝦蟇のよう。
両肩には右肩に長老をイメージするふさわしい髭をはやした〈頭〉、
パンチパーマのうえに濃すぎる口紅、厚化粧とカカアをイメージするにふさわしい〈姐さん〉。

「そろそろ一人で仙人モードに変身出来るようにならんといけんで、自来也ちゃん」
「お二人に比べたら、まだまだペーペーですんでの」

そんな会話をしながら登場と同時に、地面をその高下駄で踏み砕きます。

大蛇丸にしろ 自来也にしろ 三忍は独得な力を使うな。」

とペインは大蛇丸の方の“特殊な力”を知っている様子。
姐さんは、自来也から事情を聞くと、
カメレオンを蛇のような舌(←姐さんの)で、生物探知。そして即座に感知して、
隠れているカメレオンの肢体にその舌を絡みつけ、地面に叩き落します。
そこを頭が超高圧水放射。いわゆる水の刃〈ウォータージェット〉で、その肢体を真っ二つに。
〈ウォータージェット〉は、高出力でダイヤモンドすら切断してしまうという現代科学の粋を集めた代物のはずです。
50[MPa]〜200[Mpa](大気圧0.1[MPa]のおよそ5百倍〜2千倍)という
とんでもない圧力をもってなしえる水のビーム。
それをあの小さな身体でやってのけるとは、どれだけの肺活量を持っているのでしょうか?
一方で〈ソナー〉にはじまり、あの小さい身体で、舌だけを使ってあの巨大なカメレオンを撃墜させる力。
〈頭〉と〈姐さん〉はただものじゃないことを証明してくれました。


自来也の回想。
自来也は年齢に比例して、目の下の線を長くなっているのはご存知の通り。
ですから、これはかなり若い時期の自来也の話でしょう。
長門、小南、弥彦の回想時に出てきた線よりやや短く、かつ三代目の弟子であったころよりは長いので、
14、5歳くらいの話であると思われます。
これまた若いブン太に、

自来也、大じじ様が呼んどる。すぐに行け」

と言われ、驚きつつも喜んでいる様子の自来也
場面は変わって、蝦蟇の国(?)。
自来也がもうこの頃には色に目覚めていたというくだんはさておき、爺蝦蟇の予言によれば、
自来也も一人前となり、弟子をもつといいます。そして、

「その弟子は将来忍の世に大きな変革をもたらす忍になる。夢ではそう見えた。」
「世にそれまでにない安定をもたらすか…破壊をもたらすか。そのどちらかの変革じゃ。」
「お主はその変革者を導く者じゃ。いずれお主には大きな選択を迫られる時が来るじゃろう。」

という何やら意味深めいた予言を聞いた自来也は、すかさずどのようにすれば、
自分は正しい選択ができるか、と訊き返します。
そして返ってきた答えは諸国を漫遊し森羅万象を見て回り本を書くこと。
少し前までの自来也が各地を転々としていたのには、こういう訳があったと。



見事真っ二つにされたカメレオン。その中から、ペインが出てきます。
そして新しく口寄せの術を発動し、今度は人間の口寄せ、二体の暁を召喚します。
一方は肩までの長髪、もう一方はオールバック調の髪型で、飛段を彷彿とさせますが、
カブトのように小さい結わえがあるので、おそらく新キャラでしょう。

「大ガマ仙人よ…まさしくこれが選択の時ですかの」
「お前は破壊をもたらす者だった…。ならばここで倒すのが師の役目だの。」

と引導を渡そうとする自来也が息巻くシーンで終わります。

2.自来也の過ち

少なくとも長門を弟子にとった時点は、先述した目の下の線の描写や、

「そんなやつがおったとは聞いとらんぞ!! …ほんならそいつも――。」 (by頭)
「『予言の子』…か!?なら…なんでお前が戦う」 (by姐さん)
「どうやら正しい方向に成長しなかったようでしての。
 …それにすでに死んだと聞かされまして…。
 この子ではないと思い込んでおりました」(by自来也

というやりとりから、長門を弟子にとったとき、すでに自来也はこの予言を知っていたわけです。
しかし、長門自来也が思っていたこととは真逆の存在でした。
自来也は誤った選択をしてしまいます。
それもそのはず。この頃、自来也は戦役任務で、とてもいろいろなところを歩いて、
本なんて書くことができなかったはずなのです。
したがって、正しい判断をする条件を満たされていなかった――といえます。

〈変革者を導く者〉――、このとき自来也が正しい判断をしていれば、
長門は現在とは真逆の存在になっていたはず。
これは浅はかだった自来也によって、引き起こされてしまった展開。
そして自来也もそれを自負しているかのようです。


ところで、頭によれば、「…ほんならそいつも――」と言っています。
つまり、誰か他の人物を〈予言の子〉ではないかとして、自来也が進言していたことになります。
誰でしょうか? おそらく――