471 『八尾、バージョン2』

1.八尾、バージョン2(1)

巻かれた包帯がはがれ、肥大した刺々しい姿を露にする鮫肌。
ビーは印を結び口から墨をつくり、その墨で敵の名ホシガキキサメをメモします。

「口から墨とは……。
 やはりうわさ通りの蛸ヤローでしたね。」

鬼鮫の慇懃な口調とは合わない蛸ヤローという言葉。
ビーも負けじと言い返します。

「さめざめと泣かしてやるぜ!
 この鮫ヤロー!
 ウィイィィィィイ!!!!」

ビーは腕を天高く突き上げ雄叫び。
尾獣のチャクラが滲み出し、尾が七本の“八尾の衣”がまわりを覆います。

「知ってるか? 蛸は鮫を食うんだぜ!」

ビーはそのまま突進し、尾獣のチャクラが乗った刀で刺突。


ところで蛸が鮫を食べるとは初耳だったのですが、どうやら本当のようです。
いろいろと探し回ってみると本当に蛸が鮫をその吸盤のついた触手で
搦め上げてしまうという動画*1を見ることもできました。
鮫は捕食者で海洋における食物連鎖のトップにあるようですが*2
その数少ない天敵の一つが蛸であるとは思いもよらないことです。
体格差もあると思いますが、なかなか興味深いですね。
八尾は牛でありながら蛸という側面ももつので、
ビーVS鬼鮫の対決というのも奥深いものを感じさせます。


さてビーの刀ですが鮫肌自体がまるで意識をもったように回避。
尾獣の衣に食いかかります。

「今回は鮫が蛸を食うようですね。」

体格差によっては蛸を鮫が食べる場合もあるでしょう。
鮫的にはあの軟体を食いちぎるのは骨が折れると思いますので
好んでというわけではないでしょうが…。
この対決の場合体格差を表すものはチャクラということになります。

(あの“鮫肌”とかいう刀…大食いで早食いだが…
 一度に食えるチャクラ量は尾が六本分ね……
 このバージョンでこれなら…次のバージョンでいけるか…。)

口元に笑みを浮かべるビー。
八尾を完全に制御できているからこそ見せられる余裕でしょう。
ナルトでは九尾の衣のうち正気を保ってられるのは天地橋のときで三本、すなわち \, \frac{3}{9}
対してビーの八尾の衣で七本、すなわち\,\frac{7}{8}で、
九尾と八尾との総チャクラ量が違うとしても、単純に
\frac{\frac{7}{8}}{\frac{3}{9}}=\frac{21}{8}=2.625
尾獣の制御力という点ではビーがナルトの先をいっていると考えられます。


尾獣の衣六本分のチャクラを吸収した鮫肌はさらに肥大します。

「オレも出る。尾獣化しろビー!」

内なる八尾がビーに語りかけますが、ビーは拒否。

「だめだバカヤロー! コノヤロー!
 八っつあんとじゃ一撃がでかすぎて辺りがむちゃくちゃになる。
 今はサブちゃん先生もポン太も居るんだぜ。
 その上せっかく身を隠したのにお前出したら、
 ここに八尾のキラービーが居るんだよ!って事になるだろ!」

ビーは状況を冷静かつ的確に判断しています。
兄の雷影には戦場に出たら何をしでかすか分からないとは言われていますが、
その評価はもしかすると見た目一辺倒のものなのかもしれませんね。
雷影も弟の性格や実力を分かってはいるでしょうが、
五影会談の場でああいう風に言ってのけたのは、
弟であり人柱力であるビーを守るためだったのかもしれません。

「グダグダとお前らしくねーなビー!
 ならどうすんだ? バージョン2でやんのかよ?」

と八尾。ビーは頷きます。

「アアイエッ♪
 ただしさっきからのやり取りで、
 ほとんどオレのチャクラ持ってかれちまった…。
 お前のチャクラ貸してくれ!」

尾獣の衣を制御していた分のビーのチャクラを尾6本分持っていかれた為でしょう。
“バージョン2”なるものは八尾の協力なくしてなしえない、と。

「ケッ! オレがいなけりゃとっくに敗者になってるとこだぜ。」

ビーの頼みに憎まれ口をたたくものの、協力する八尾。

「なまいきな口上♪ その御厚情に感謝するイエ―――♪」

バージョン2。黒々とした禍々しい姿へ変化します。
尾獣の強烈で禍々しいチャクラを解放、それに曝されながらも正気を保っているビー。
サブちゃんによればこれは尾獣の力を人型に押さえ込んだもの。
ここまでビーの状態や尾獣のことを把握していると、
サブちゃんはただの演歌忍者の頭領であるだけでなく、
相談役のような霧隠れにおける上位の人物でしょう。
ビーの腕には八尾の頭蓋骨が形作られていきます。
この形態での<ラリアット>はまさに超ド級の威力があるでしょう。

「“鮫肌”がトリップするほど騒いでいる…
 さっきとは比べものにならないチャクラの量…質……。
 9引く1なだけありますね…。
 これだけのチャクラを正気を保ったままコントロールするとは…。
 これほどの量食いきれませんね……。」

激しい衝突。
鮫肌はビーをバージョン2から尾獣の衣状態に戻すほどのチャクラを食らいますが、
鬼鮫は致命傷に近いダメージを受けます。
しかし鮫肌に触れるとみるみるうちに鬼鮫の傷は回復。

「私は…相手が強ければ強いほどそれに比例して強くなる…。
 疲れることも……倒れることもない。」

鮫肌に食われたチャクラは持ち主である鬼鮫に還元される仕組みとなっているようです。

「だから…尾を持たない尾獣などと呼ばれていましてね……。」

水遁・大爆水衝波によって辺り一面に水のドームをつくりあげます。

「戦いが長引けば長引くほど、アナタ達は削り取られて弱っていく…。
 が、私は削り取った分どんどん強くなっていく。」

暁の衣を脱ぎ捨て鮫肌と融合していく鬼鮫

「ビー。奴の刀を奪うしかないよっ!
 あの刀が奴の強さの鍵になってるよっ!」

サブちゃんの分析は的を射ていますが、
しかしそれはもう今となっては困難を極めるものです。

「私の体から引きはがせればですがね。」

魚人に姿を変えた鬼鮫
衣を脱いだということは、
これが鬼鮫最後の戦いということでしょうか?

2.八尾、バージョン2(2)

青の残していった目印を追いかける水影と長十郎。
一方の青はフーによる心転身の術の影響下にあって、
自身の身体のコントロールをフーに奪われた状態ですが、
青の意識は木偶に入れ替わる形で存在するようです。
クナイで白眼を抉り取ろうとしますが、
危機が迫ると自動的に呪符で保護される仕組みとなっていたようで、
フーはその結界忍術に苦心します。

「…簡単とは思っていない…。
 お前の目を抉れば術者本体のオレの目も潰れる…。
 分かってるだろ。」

死体処理班として活躍する霧の暗部でしか解けない結界忍術で
ブロックはされたものの、もし結界術が発動していなかったら、
自分の眼を代償にする覚悟はあったというフー。
しかし心転身系の応用術では、まるで飛段の呪いの術のように
相手に起こった事象と自分に起こった事象が連動する仕組みを持つようです。
ともすると飛段の術も心転身系の術だったのかもしれません。

「ダンゾウの命令か…。部下を何だと思ってる。」

と青は吐き捨てます。
そこでフーは首ごともっていくことを決意。
そのまま心転身で繋がっていればそのままフーにもその事象が及ぶことになります。
したがって括りつけた鎌に飛び降り際首が当たる瞬間、術を解いて、
自分の身体に戻ったのち引き返して首を持ち帰る。
しかし、そのシビアなタイミングも一歩間違えれば命取り。

「ビビって少しでも早くその術を解いたらオレは必ず鎌を防ぐ!!
 もしオレが死んでなかったら…
 お前がここに首を取りに来た時は立場が逆転すると思え!」

フーの背水の構えに青は起死回生を狙います。