457 『五影会談、開幕』

1.五影会談、開幕(1)

鷹の面々は重吾が鳥から得た情報をもとに侵入するルートを、
西からあがるルートに決定した様子。
香燐の優れたチャクラ感知機能を利用して、
潜入計画をたてるサスケ。シビレを切らした水月が、

待ち伏せして、来る前にやっちゃった方がいいんじゃない?
 もう疲れちゃったよ…。」

と言いますが、

「バカかお前! 火影の到着が遅くなれば何かあったと考えるのが普通だ!
 増援の侍がすぐに嗅ぎつけてくるし、他の五影まで来たらどーする!?
 敵の能力も分からない以上、帰り道でスキを見て奇襲するのが妥当だ。」

と香燐。火影暗殺の決行時期も決まっている様子です。
決行を前にしてダンゾウの顔を確認するため、ゼツに協力を求めるサスケ。

「ウチはチャクラを感じ取る。
 ウソを言った時のチャクラの乱れってのは決まってる…。
 アンタの事も常にチェックしてっから忘れんな。」

嘘、あるいは不適な情報をゼツから受け取らないための脅しでしょうが、
それに対してゼツは、

「ウソはつかないよ。
 ダンゾウはボクらにとっても邪魔だからさ…

と意味深な発言をします。
邪魔…とは暁(トビ)にとって障害となる理由がダンゾウにはあるのでしょう。
一族への復讐を利用してダンゾウに対してサスケが刃を向けるように仕向けたトビですが、
自らがダンゾウに手を下そうとはしないことから、
トビとダンゾウには何らかの関係があるように思われます。

「あいつが…ダンゾウ。」

到着したダンゾウをその写輪眼で睨みつけるように確認したサスケ。


ミフネから時計周りに水影、風影、火影、土影、雷影と座ります。
従者は五影の後ろにあるそれぞれの国の垂れ幕の裏に座る形で、
五影会談が始まります。

2.五影会談、開幕(2)

サムイ班を尾けてきたナルトたち。しかし、シーには姿を見せる前に見破られます。
名を馳せる木ノ葉の忍であるはたけカカシの登場に、
火影からの伝令があるのか、と身構える雷影に対して、

「いえ…今日はお願いがあって来ました。
 木ノ葉隠れうずまきナルトの嘆願です。
 少しだけ聞いてあげてください。」

と連絡もなく、尾行という失礼を承知の上の話。
雷影も聞くだけなら取り合う、という姿勢を見せます。

「サスケを…うちはサスケを始末するのを止めてもらいてーんだ。」

と言うナルトに当惑する雲隠れの面々。

「むちゃくちゃ言ってんのも分かってる…! でもオレはそう言うしかねーから!
 サスケは友達だ…! 友達が殺されるってのにただじっとはしてられねーよ!」

ナルトも自分が感情から動いているのを認めます。
それでも友達のために、と頭を下げます。

「それにサスケが元で木ノ葉と雲が殺し合うのはイヤだから!!
 そっちにも仲間にも復讐はさせたくねーんだ!」

もしもサスケが雲隠れの忍に復讐という果し合いを挑まれ命を落とせば、
木ノ葉隠れの上層部としてはサスケはどうでもいいと思っているでしょうが、
ナルトやサクラなどの若い忍は黙ってはいられずに、
雲隠れの忍と諍いを起こすことになるでしょう。
この諍いが種火となって、サスケのことではどうでも良いと考えていた木ノ葉も、
若い衆に突き動かされる形で動くことになる――。
そうすればいずれは里対里の争いまで発展し、醜い殺し合いになりかねない。
本当に最悪のケースをナルトが危惧するのも、長門との戦いで、
戦争が残す傷痕、痛みが、どれだけの悲劇を生むのか痛いほど感じたため
ではないかと思います。なりふり構わず動こうとするナルトを、
カカシがあえて止めようとしなかったのもこういうナルトの気持ちを汲んでのことでしょう。

「行くぞ。」

聞く耳持たず、という姿勢の雷影。
それはもちろん当然のこと。
雷影としては身内に手を出されたわけですから、黙ってはいられません。
ナルトの嘆願も、机上の空論にしか聞こえないでしょう。
雷影も木ノ葉と事を構えようとは考えていません。
だからこそ木ノ葉に了承と確認を求めたわけですから。

「お願いだってばよ!! もう復讐で殺し合うような事したくねーんだ!!!
 サスケは復讐のことばっかだった!!
 それに取りつかれて変わっちまった!! 復讐はおかしくなっちまう!
 知ってる奴じゃなくなっちまう!
 もう誰もサスケみたくなってほしくねーんだ!!
 木ノ葉も雲も殺し合いなんかさせたくねーんだ。」

泣きながら土下座してまで雷影に頼み込むナルト。
雷影も行きかけた足を踏みとどめます。

「ワシ達はサスケを始末する。
 その後お前らが踏み止まれ!!」

確かに一方的にしかけ、非があるのはサスケの方。
雷影が留まる理由など何もないのです。
しかしあまりにも挑発的に聞こえる雷影の言葉に、
ヤマトが口を添えます。

「かつてアナタが日向の白眼を狙いやった事は木ノ葉では何も解決していない。
 戦争の火種をつくった雲側に対し、木ノ葉は血の涙を飲んで戦争を回避した。
 尊い犠牲の上にアナタ方は存在している事を忘れないでもらいたい。」

かつて日向に忍び込んだ雲の忍頭を返り討ちにした件。
雲側は日向の当主の首を求め、
当主ヒアシの代わりにその弟ヒザシが首を差し出しました。
でもこれはある意味確信的であったといえます。
忍び込んで返り討ちにされることは計算済み。
戦争をだしに首を差し出させることで、日向の秘密を調べることが目的だったはずです。
里と里の関係上、明白に日向の秘密を狙って、などとは明かされなかったはずですが、
ヤマトは「白眼を狙ってやった」と断言しています。
そして「アナタが」からこの一件は先代ではなく現雷影によるものだったことも窺えます。
こういう場で昔のことを持ち出すのは相応しくはありませんが、
雷影としては痛いところを突かれたはずです。

「…今ここで若い忍が不器用なりに雲と木ノ葉…、
 互いの里・国を想い頭を下げている。
 雷影様……、アナタは五影の一人としてこれをどう捉えどう思われる?」

それに対して雷影はきっぱりと言います。

「忍が簡単に頭を下げるな! 忍が尊重するものは行動と力だ!
 忍同士の話に譲歩ぐせは禁物だ!」

との言葉に雷影の信念、思想が端的に表れています。
忍とは譲歩しあう関係ではない、と。

「人類の歴史は戦争の歴史だ! 三つの忍界大戦以後……、
 あらゆる国…里が強い忍術を手に入れようとしてきた。
 力なき者は踏み潰される!

弱肉強食、自然淘汰の横行する世の中。
自らが強くなるために切磋琢磨することこそ、
そしてそれに伴って得られる力があってこその忍であって、
戦争のような理不尽はあたりまえで、そこからどう生き抜くかという考え方です。
それに付随するかのような別れや悲しみなどでうじうじするのではなく、
いかにそれをプラスに変えて生き抜くか…
運命や宿命に負けずに強く生きることができる人間の考え方です。
これは間違いではなく、忍として生きる、いや自然の中で人間として生きるからには、
こういう考えに辿り着くのは極めて自然です。
しかしそればかりでは理不尽を克服する方向にばかり眼が向いてしまって、
その理不尽の根本に眼が向いていない――平たく言えば、
復讐や戦争が横行しても、それを克服すれば済む、という考え方になりがちなのです。
もちろん理不尽の根本ばかり考えて、
理不尽を克服しようとしないのも問題であることを付け加えておきますが…

“暁”は国際指名手配となる。
 そうなればワシだけではない。世界がサスケを狙う。
 犯罪者のために頭を下げ仲間の安全の為に慈悲を請う。
 忍の世界でそれは友情とは言わん!

 木ノ葉のガキ…お前が何をすべきかもっと考えろ!
 バカのままやり通せるほど忍の世界は甘くない!!」

雷影の言動はきわめて現実的なものと言えるでしょう。
ただ、ナルトとしては自分でも言っているように無茶苦茶であることは理解しています。
ナルトにはサスケの友達としての想い、そしてつながりを確かめたい、
会ってもう一度サスケと話がしたい、という思いがあるはずです。
そしてできればもう一度第七班としてともに――と。
すれ違って分かり合えないまま、その望みも絶たれてしまうことをひどく恐れて
雷影に嘆願するという暴挙に走ったのだと考えられます。


ところで、これだけの国際的な被害にも関わらず、
今頃ようやく国際手配になるのは遅い気もしますが、
これは暁がうまく行動していた、ということなのでしょうか――。