459 『サクラの決意』

1.サクラの決意(1)

広場に集まるシカマル、ネジ、リー、テンテン、キバ、いの、チョウジ、ヒナタ、シノ。
サスケのことを聞いて涙するいの。めいめいが思うことを口に出します。
一方、涙を流すサクラを前にサイは言います。

「サクラもボクも…皆はナルトに頼りすぎてる。
 最近のナルトを見ていると、感じることができるようになったんだ…。
 悲しいって…。
 そしてサスケの事を考えると…お腹の辺りが熱くなってくる…。
 それが怒りなんだって分かったよ。

約束に縛られ、皆の期待を纏<まと>い、それでも邁進しようとするナルト。
九尾を背負い、里の皆から罵られたこともある――
それでも里の為、そしてサスケの為に邁進しようとする姿は、
感情をもたないサイですら突き動かせられる程の激情をおぼえるのでしょう。

「ナルトの為にも木ノ葉の為にも、ナルトに頼るんじゃなくボクら自身が
 何とかしなきゃダメだ。サスケは――」

とサイが言いかけたところでシカマルがやってきます。

「サイの言う通りだ…。」

シカマルはサスケに一番馴染みがある第七班に、
承諾――言い換えれば“見切り”を得に来たのです。

サスケのせいで木ノ葉隠れ・雲隠れが戦争をするわけにはいかねェ。」

雲隠れの忍がサスケを殺したらナルトやサクラたちは黙っていられない。
そして今度はそのナルトやサクラが傷つけられたとあれば、
今度は木ノ葉側が黙っているわけにはいかない。
お互いがお互いの復讐をするうちに、いつしかそれは戦争となってしまう。だから――

「雲の伝令役の情報からしてサスケはもう国際的に重罪人として扱われる。
 サスケがこれ以上“暁”に同調してあちこちで憎しみを増やしていくなら、
 サスケを木ノ葉の手で処理するべきだとオレは考える。
 オレの言ってる意味…分かるよな…サクラ…。」

木ノ葉の手で処理する――それはサスケの意思が危険と判断されるなら、
暗殺もやむを得ない――ということでしょう。

「シカマル…、………、
 …それより先は…何も言わないで…。」

サスケを失う悲しみ。ナルトを傷つけてきた苦しみ。
流れる涙。そして虚ろな瞳。わななき握り締めた拳。
サクラは決意します。

「ナルトを一番苦しめてたのは私だった…。
 私はいつも間違ってばかり。失敗ばかり。
 もう間違いたくない…。もう失敗したくない。」


一方寝転がりながらサスケが今何を思っているのか考え込むナルト。

「お前は兄キのイタチを倒した…。復讐をした…。
 スッとしたのか…? それとももっと苦しくなったのか?
 サスケ…。何で木ノ葉に帰ってこねェ…?」

いったい何がサスケをそうさせるのか――

「…憎しみにやられちまったのかサスケ?
 本当にただの犯罪者になっちまったのか…?
 今は…お前の事が分かんなくなってきたってばよ…。」

ナルトの想うこととは裏腹にサスケは写輪眼を見開き虎視眈々と機会を窺います。
――とゼツの姿が消えたことに気付きます。
トビとゼツの片割れ――様子を見ていたようです。

「始めろ。」

2.サクラの決意(2)

「なぜ火影だ!? こいつは“忍の闇”の代名詞が付く男だぞ!
 こんな男には任せてはおけん!」

五大国のまとめ役をダンゾウが務めることに雷影が猛反対します。

「我が里から“暁”は一人として出しておらん!
 信用を欠いてはその大役は務まらん!
 その役はワシが――」

そう言いかけたところ、ミフネは承服できないと言って、
雷影が叩き割った机を指差します。

「強者共をまとめるにはそれなりの情と力が必要なのは
 それがしも分かるが…、感情任せに力で行動するあなたのような方は
 連合軍をその机のようにバラバラにするであろう。

もともと雷影は他国を信用していませんし、
仮に五大国の総まとめ役ともなれば、
自分の国に都合が良いように他国を扱うのが目に見えている。
――これはどこの影がやっても同じであるかもしれませんが、
少なくとも雷影の力で従わせる図式では、
他の影たちはもちろん各々の里の忍の協力は得られない――
という結論でしょう。一見、筋は通る――と書いておくことにしましょう。
その理由は後述します。ミフネは続けます。

「中立国から見た冷静な判断で提案しているだけでござる。

 風影殿はこの大権を使うにはまだ若すぎる…。
 他国に顔が利かぬだろう。風影の肩書きだけではキツイ。

 土影殿は逆に歳を召しすぎて機動力に欠けるイメージがある。
 それに“暁”を利用しすぎた…。信用に一番欠ける。

 水影殿は“暁”発祥の地とされている霧隠れだけに、
 こちらの情報が漏れる心配がある。スパイがいる事も懸念される。

 “暁”が尾獣を集めて何をするつもりかは知らないが…
 九尾を渡すわけにはいかない…。
 九尾は木ノ葉のものだ。火影が受け持つのが妥当と考えるが…。」

――であるから、“忍の闇”と噂されるような人物ダンゾウが統括する
木ノ葉にこそ大役、すなわち五大国連合軍んも全権があるべき――
というのもあまりにも根拠が薄すぎておかしな話です。
ダンゾウも“歳を召してる”し、“暁を利用してるかもしれない”し、
忍の闇ゆえにもっとも“スパイがいてもおかしくはない”わけですからね。
あまりに火影優位に話が進められていく様子に、
水影の従者である青が疑問を持ちます。
そしてなんと眼帯に隠された白眼を発動します!

「右肩と右腕…しかもあの右目のチャクラの色は…間違いない……。
 うちはシスイの色!!

サスケがデイダラ戦で明かしましたが、
写輪眼がチャクラを色で識別する能力をもつように、
白眼もチャクラの色識別能をもっているようです。
ダンゾウに右眼を見せるように要請します。

シスイの瞳術は相手の脳内に入り、
 あたかも己の意思であるかのように疑似体験させ操る術だった…。

うちはシスイ。イタチが慕っていた人物。
ここでシスイの顔が明かされますが、雄雄しい印象の人物です。
そしてその能力の一端も明かされます。脱線しますが、この写輪眼の能力は、
記事【変貌と疑惑5・シスイの遺書】*1にある内容と関わりがありそうです。
シスイを一族のためなら何だってやる男、
自殺など考えられないと評価していた警務部隊に対して、

「見た目や思い込みだけで…人を判断しない方がいいですよ。」

と言ったのは、どういう意味だったのでしょうか。
シスイの能力なら、自殺したと思い込ませることもできるわけです。
そのシスイの能力をもつダンゾウは、ミフネを操ったというわけです。
ダンゾウが口角をあげるほど事が思い通りに運んだのはこういった裏があったわけです。
さて、写輪眼どころかダンゾウの右肩、右腕までもがシスイのもの――
とはいったいどういうことでしょうか?

「私の右眼もかつての日向と戦った貴重な戦利品…
 アナタと同じで人の事は言えませんが、
 四代目水影にかけられた幻術を解いたこの私の眼はごまかせませんよ。
 そしてその――」

雲隠れ相手に影武者として当主の弟を出すくらい秘密厳守だった日向の眼を、
奪った青という人物は相当の強者であることが台詞の片鱗から分かります。
あわせて四代目水影やぐらは“幻術”をかけられ操られていたことが分かります。
青は自分と同じようにシスイの写輪眼を移植によってダンゾウが得たと考えていますが、
案外、右眼や右肩だかでなく、右半身あるいは全身がシスイ――
ダンゾウなどというものはとっくの昔にいなかった
――という場合も考えられます。

「きさま――!!」

いきり立つ雷影。そこにまるでこの事態に狙って乱入してきたかのようにゼツが登場します。

うちはサスケが侵入してるよ。
 さてどこに隠れているんでしょ〜〜〜〜か?」

五影の従者たちがいっせいに臨戦態勢へ。
波乱の幕開けとなりそうです。