458 『五影の大論戦』

458話については二部構成でいきます。
後編はこちら

1.五影の大論戦(1)

「オレから話す。聞け。」

まずはじめに話し始めたのは風影・我愛羅
土影が我愛羅の話し方に対して礼儀がなってないと茶々を入れますが、
水影が話を進めるようにいいます。

「…オレは元人柱力だ。“暁”に拘束され、
 尾獣を抜かれ、殺されかけもした。
 だからこそ“暁”が極めて危険な存在であると考えている。」

我愛羅は実体験からくる実感を込めるように暁の危険性を訴えます。

「オレは何度も五影に協力を求めたが無視されてきた。…前火影以外はな。
 そもそもここまで人柱力を奪われておいて協力するのが遅すぎる。

我愛羅は暁の危険性を野放しにさせておくわけにはいかず、
実際協力を求めていたようですが、前火影綱手を除いて
全く聞き入れられなかったようでした。
それに我愛羅の言うとおり、この段階になるまで、
全く手を取り合おうともしなかった各国の姿勢は不思議と言わざるを得ません。
それに対して明確な回答が土影より得られます。

「フン…。五大国の隠れ里が人柱力を奪われたとあっては他国に示しがつかん!
 大恥じゃぜ! 秘密裏に回収するのが常識じゃぜ。
 奪われた時点で他国に協力など求めるハズがないわい!

つまり土影の言い分では、五大国ともあろう隠れ里が、
その保有する人柱力および尾獣を奪われたとあっては他国に示しがつかない。
したがって奪われた時点で協力を求めるという考えはなく、
逆に他国に知られないように自国で何とかしようという考えが働くのです。

「体裁…面目…。くだらぬ古い考えだ。」

我愛羅は反論します。暁による侵攻があったとは言っても、
それは身内だけの問題に止めておきたいという意識が働き、
かえって暁をのさばらせてしまう結果へとつながっていった――わけですからね。
さて水影は別の見解を示します。

「尾獣が奪われたからといって、それがすぐ恐怖につながる訳ではありません。
 コントロールには技術知識・時間が必要ですから。

すぐには脅威にはならない――
これを見越してそうなる前に暁の尻尾を押さえられると考えていたのでしょう。

「人柱力は尾獣と共に成長し順応させる必要がある。
 それでもコントロールは難しい…。おいそれとはいかん…。
 なぁ…そうじゃろ風影殿よ。」

土影も賛同します。実際、人柱力であった我愛羅は否定できません。
ここで火影・ダンゾウが重い口を開きます。

「そもそも尾獣を本当の意味でコントロールできたのは、
 かつてのうちはマダラと初代火影柱間…、
 それに四代目水影のやぐら、雷影殿の弟キラービーぐらいだった。

尾獣のコントロールができた柱間やうちはマダラ――、
それと並んでキラービー、そして四代目水影やぐらがあげられました。
やぐらといえば三尾の人柱力であった人物。*1
そして四代目水影といえば、霧隠れの里を血霧という悪夢の渦に陥れた人物。
ここで元水影であるトビが三尾と戦闘になっていたシーンがふと連想されます。
あのとき三尾は尾獣のままで人柱力ではありませんでした。
やぐらの登場は無かったのです。さらに三尾はそのトビに制された。
これはどういうことか――
もう一つ。ダンゾウは他国の人柱力が誰でどのようであるか、
というのを握っていた可能性が高いということです。
四代目水影ならまだしも雷影の弟であるキラービーを知っているくらいですから。
さて、ダンゾウが話を続けようとしたとき、
雷影が業を煮やして机を叩き割ります。
あわや一触即発。各国従者の忍達が場に集合し互いが互いを牽制します。

2.五影の大論戦(2)

「ここは話し合いの場でござる。
 礼を欠いた行動は慎んでもらいたい。」

ミフネの一言もあって、事態は収まりますが、
雷影の調子は荒々しいままです。

「…木ノ葉! 岩! 砂! 霧!
 お前らの里の抜け忍で構成されとるのが“暁”だ!」

これは木ノ葉から得た情報でしょう。
暁がどんな組織でどんな忍で構成されているか、
実際に接触した忍の情報量とその確からしさが求められます。
何回も接触し最も信頼性の高い情報を得ている、
木ノ葉からのものと考えられます。

「それだけではないぞ!! 前任者の影も含めたお前らの中には、
 “暁”を利用してきた者がおる事も調べはついとる!!

暁を利用してきた経緯のある国が存在する――
そういえばデイダラがこんなことを言っていましたね。

「こいつを除き今までに二匹、“人柱力”をオレの仲間が
 倒したんだがな、そいつらの仲間も里の者も、
 誰一人として助けようとする奴はいなかったらしいぜ。
 それどころかむしろ喜んでくれる奴がいたそうだ…。」

ネクラで人嫌いという印象はこの2体から来るデイダラの印象でしょうが、
(実際はナルトや我愛羅、ユギトやキラービーなどは違う)
デイダラおよび雷影の話から推測されるのは、人柱力を捧げるかわりに、
何か自国にとって見返りを求めた国があったかもしれないことです。
伏せ目がちな土影も怪しいところですが――

「ワシはお前らを信用しておらん! 話し合いすらする気もしなかった!
 だがワシがここへきて五影を召集したのは、
 いい加減お前らの信義を問うためだ!!」

雷影は息巻きます。

「風影のくせに何も知らされてないのか! 
 自里のじじい共に聞いてみろ!
 お前らはかつて戦争に“暁”を利用してきた!」

実は我愛羅の父である砂こそ暁を利用した里の一つなのです。
何も知らない我愛羅は驚嘆します。

「今や大国は一様に安定してきた…。軍拡から軍縮へと移行しとる。
 各国間の緊張緩和で戦争の脅威が小さくなれば、
 国にとって軍事力である差とは金食い虫の邪魔な存在じゃ…。
 かと言ってじゃぜ、それはリスクでもある。
 突然戦争になってみろ! 実戦経験の無い忍に頼るのは問題があるじゃろ。」

土影の言葉から我愛羅が事態を把握します。
弱体化という事態を回避する一つの方法が暁によるものだった、と。

「自里で優秀な忍を育成するには手間と金がかかるが、
 戦争を生業としている“暁”は常に現役のプロ集団。
 しかも安い金で戦争を請け負う。
 その上最高の結果をもたらしてくれたからのぅ。

土影の最後の言葉から土の国・岩隠れも暁を利用していたことが分かります。
ただ暁サイドの目的を考えると、
これはまんまと暁にのせられていたことが明白なのですが――

砂は“暁”を木ノ葉崩しに利用した。大蛇丸だ…!
 その時“暁”を抜けていたかどうかは定かではないが!
 それで風影と火影の前任者が死んだ。
 …これが誰かの画策である可能性も捨てがたいがな。」

なぜ大蛇丸が抜けた里を舞い戻ってきた侵攻したのか――
これも長らく謎でしたが、それもこれもという存在に
大蛇丸が身をおいていたからということになります。
ところでこのとき大蛇丸は暁を抜けていたはずですし、
当人もそんなようなことを仄めかしています。
しかし侵攻側の風影の暗殺や火影との戦いなど、
極めて政治的な内容が絡んでいると見て間違いないでしょう。
相棒だったサソリはこんなことも言っています。

「おいおい四代目っつーのはオレは知らねーぜ。
 手引きはオレの部下がやったことだ。

チヨバア大蛇丸の四代目風影暗殺手引きをしたことを問い詰められ、
知らない、と答えたサソリはこの一件に絡んでいないように思われますが、
部下が手引きしたと言っているあたりは、
サソリは確かに関与していないが、暁が関与していないとは言えないに等しい。
そして何より次の雷影の一言から、どうやらこの木ノ葉崩し自体、
政治的に仕組まれたものである可能性が俄かに露呈するのです。

「…これが誰かの画策である可能性も捨てがたいがな。」

雷影の言葉はダンゾウへ向けられたものです。
大蛇丸とダンゾウとのパイプ。
ダンゾウそして暁、大蛇丸を通じてつながります。

*1:NARUTO-ナルト- イラスト集』