458 『五影の大論戦』

458話については二部構成でいきます。
前編はこちら

3.五影の大論戦(3)

沈黙を守るダンゾウを雷影は古狸と揶揄しますが、
矛先を今度は霧隠れに向けます。

「一番怪しいのは霧隠れだ!! お前ら霧は外交をしない…。
 “暁”発生の地との噂もある!!」

この言葉に対して水影はくぐもらせるような口調で次のように言います。

「ここまできたので正直に言います…。先代…、
 四代目水影は何者かに操られていたのではないかという疑いがありました…。
 それが“暁”の可能性もあった…。だから事を大げさにはしたくなく…。」

やぐらは操られていた――。それならば、鬼鮫がトビの素顔を見たとき
即座に元水影と答えたのはいったいどういった事でしょう?
元水影、つまりやぐらの顔を持っていた…?
しかしして、鬼鮫はすぐにうちはマダラと呼びなおした。
それにトビが一瞬サスケに見せた素顔はやぐらとは程遠いものの気がします。
つまりトビはやぐらの前の水影、三代目水影以前の場合も考えられるわけです。
そして、四代目であるやぐらを傀儡として操っていた――。
しかし水影の言葉からは四代目水影のときのみ悪夢、血霧の里となっていた。
この辺りはいったいどういう経緯があるのでしょうか?
雷影に業を煮やしたのは土影です。

「口を慎め雷影! そもそも軍縮の時代にお前らがなりふりかまわず、
 力を求めて忍術を集めよるから…、
 対向するために“暁”を雇わざるを得んようになってきたんじゃぜ。」

これは土影の詭弁ともとれますが、雷の国の脅威に対抗するために、
自国も負けるわけにはいかず、暁の力を求めるに至ったという経緯は納得できます。
ダンゾウは二国のぶつかり合いが始まる前に、
暁のリーダーがうちはマダラであるという
確かな情報筋からの情報を投入しいったんその場を収拾。
五影達が驚愕するなか、鉄の国の長ミフネはある提案をします。

「中立国の長の立場から言わせていただこう。
 “暁”のリーダーは時代の流れを読んでいた…。
 国々の安定…、そして国々の不信感のスキを突き、力の拡大を計った…。
 このままでは鉄の国も…。」

暁は時勢を読んでその目的とするところへ向かって着々と歩んでいた。
そして五大国は暁を利用しているようでいて、
実は暁の歯車に過ぎなかったのです。

「しかし災い転じて福となす…。五影が全員揃う事も滅多にある事ではない。
 どうであろう…、“暁”を処理するまでの間…
 世界初の五大隠れ里…忍連合軍をつくってみては。」

五大国連合軍。そのための指揮系統の統一。
それが混乱を避けるために必要であるとミフネは説きます。

「あなた方だけでは揉め事になる……。
 それゆえ中立国の拙者の立場を尊重して頂いた上で拙者が提案したい。
 この五影の中で誰が適任なのか。」

このときダンゾウはまだ決まっても無いのに、

「これで…綱手の時代は終わった。」

さも自分に決まることを知っているように笑います。
このような展開になれば、命運を託されるのは、
残されている人柱力にして最大の九尾をもつ木ノ葉――
ダンゾウは先を読んでいたのでしょうか。あるいは――

「今や人柱力は木ノ葉の九尾だけだ…。
 それをどう導くかがカギとなろう…。
 火影に忍連合軍の大権を任せてみてはいかがか?」

他の影たちはどよめきます。

4.五影の大論戦(4)

ナルトばかりが苦しみや痛みを背負い続けているように感じたサイ。
サクラにサスケを庇うために雲隠れの忍に自ら進んで殴り倒されたことを話します。
無謀にも雷影へ懇願にいったことを併せて伝えます。
カカシがついていながらなぜ、というシズネの問いかけにサイは答えます。

「カカシ先生はナルトを信じてるから、
 たとえ無理だとしてもチャンスは作ってあげたいんだと思う。」

そしてサクラへ核心をつく話をするのです。

「ボクは最近サスケの代わりにカカシ班に配属された。
 だからカカシ班の事はまだよく分からないし……
 ……人の感情もよく分からない。
 …それに君とナルトの約束も知らない…。けど…
 ナルトは君の事が本当にスキだって事ぐらい――このボクだって分かる!!

サスケを連れ戻すその約束を頑なに守ろうとするナルト。
それはサスケとのつながりのためでもあり、
そして何よりサクラとのつながりのためでもある。
ナルトのことを想うとサクラは涙が止まりません。

「ナルトは君との約束をずっと背負っているようだった…。
 一生背負う気でいるみたいだった。
 君がナルトに何を言ったのかは知らない……。
 でもそれはまるでボクのされているものと同じ…。
 呪印のように感じた。ナルトを苦しめてるのはサスケだけど…
 君もなんじゃないのかい?

サイの言葉は的を射ています。
まるで呪詛のように繰り返される“約束”という言葉。
サスケを連れ戻してほしい――
そうナルトに泣きついたあのときから、
自分は変わってないのではないか…
ナルトに何もしてあげてこられなかった弱い自分を、
あらためてサクラは気付かせられることになるのです。