461 『雲隠れ VS "鷹"』

1.雲隠れ VS “鷹”(1)

瞋恚<しんに>に呑まれるように一心不乱に雷影へ突進するサスケ。
重吾は冷静を欠いていると見ます。そのサスケの行く手を突如水の壁が阻みます。
【水遁・水陣壁】。ダルイによるものです。
あわせて【雷遁・感激波】によって水流を利用した放電攻撃がサスケを襲います。

「ボス…。こいつ情報通り雷の性質に間違いないみたいっスね。」

雷遁をうまく往なした様子のサスケを見てダルイが言います。

「それに火を持ってる。直に火遁を使うだろう。
 …ダルイ。水遁の用意は常にしておけ。」

とシー。

「何かサスケの情報漏れちゃってない?」

水月が心配するように、
実はサムイ小隊による木ノ葉側からの情報が漏れている背景があります。

「こいつらは雲隠れの上忍…。中央のでかいのが雷影だ。
 簡単には通してもらえない。」

反対に重吾らも雷影および雲隠れの忍を知っている様です。
おそらく大蛇丸の下にあったときかあるいは“鷹”として行動するにあたって、
各国の有名な忍、影の顔などを把握してあるのでしょう。
シーが突然複数の印を結び始めます。

雷幻雷光柱!

眩い光がシーから放たれ、サスケたちの眼を射抜きます。
すかさずサスケに突進してきた雷影。地面を抉る一撃をサスケに放ちます。

「重吾ひるむな。これは幻術だ。」

雷幻雷光柱は幻術と見抜いたサスケ。
シーも敵ながらその写輪眼の能力に感心します。

「幻術を見抜いたとしても遅いわ!!」

さっきの第一撃を回避したサスケに間髪入れずに雷影の第二撃。
今度はダルイを伴っての挟み撃ちです。
サスケを助けるように雷影の腕槌を水月が、ダルイの剣撃を重吾が止めに入ります。
が雷影の一撃は水月の首斬り包丁を真っ二つに割るほどの猛撃。
まさに雷神の雷槌トールハンマーの如く、水月の腕も粉砕します。

「ボクが水じゃなけりゃ両腕もげてるよアレ…!」

水化しているとはいえ、その恐るべき一撃を身をもって味わった水月はこう評します。

「八尾との時、切れ目を入れられていたからな。」

折れた首斬り包丁を見て重吾が言った一言に雷影が反応します。
それを心配する様子で見やるダルイ。

「お前ら…余計な事を。」

八尾戦でサスケが瀕死の重傷を負わされたこともあってか、
躊躇なく割って入ってきた重吾や水月の気持ちもつゆ知らずといった感じのサスケ。

「せっかく助けに出てきてやったのにさ…。何だよその言い草…!
 君らしいけど…。

サスケの人間性をこうやって認めてしまってるあたり水月も案外大人かもしれません。

「忍とは雑な戦いをする…。なんて奴らだ!」

応援を要請した侍は忍たちの戦いを目の当たりにして雑と評します。
サスケたちの仲間が他にいないか警戒するダルイとシー。
ダンゾウを捜すつもりでいた香燐も、その感知能力を殺さなければ、
逆にシーに感知されてしまうという状況に立たされてしまいました。

「香燐にはダンゾウの居場所を捜させてたのに…。これじゃ無理だね。
 あいつチャクラ消すよたぶん…。そういう能力だから。

ここで長らく謎だった香燐のチャクラ感知能力の一端が明かされます。
水月のこのセリフからどうやら、

  • 香燐のチャクラがチャクラ感知に関与している

という機構が考えられます。ソナーのように超音波を発信して、
その反響してきた波を受信し位置や形を測定するように、香燐も
自身の特殊なチャクラを発信して反響チャクラから位置と形状を測定する
か、あるいはこれと似たような機構を持っているのではないかと考えられます。
ゆえにチャクラ感知に使うための香燐の信号チャクラを
シーに逆探知される可能性があるというわけです。

「後ろの男は感知タイプだな…。倒すしかない…。オレがやる。」

重吾が呪印状態を高め、禁断の状態2に入ります。

「グハハハハハ、ぶっ殺してやらァ!!」

と禍々しい形相で雷影一行を睨む重吾。

「図にのるなアアア!!!!」

と轟く雄叫びをあげた雷影。これから乱戦となりそうです。

2.雲隠れ VS “鷹”(2)

一方会議場。

「青殿…。火影の瞳術がまだ継続中か確認していただきたい。」

ミフネおつきの侍の要請に、

「イヤ…今は経絡系のチャクラの流れもおだやかだ。」

と青は答えます。

「安心しろ。日にそう何度も使える瞳術ではない。」

とのダンゾウの言葉ももはや信憑性は薄く、青は訝しがるように、

「それはこちらで判断する。アンタは信用できない男だからな。」

と答えます。

「まさか白眼が他に漏れていたとはな…。
 木ノ葉の日向の裏切り者ならすぐに殺していたところだ。」

ダンゾウの穏やかでない発言に、その場にピリッとした緊張が走ります。

「アンタは秘密を知ったオレはいずれ処理するつもりでいるんだろうが、
 そうはいかんぞ。」

と言う青に加勢するように、

「その時は私が戦う。四代目水影を操っていた術とその瞳力…
 何か関係あるかもしれないからね。

と水影もダンゾウを露骨に訝しがる様子です。

「火影殿…ここでは忍術は御法度。信用を欠いてしまったな…。
 こんな手を使わずとも接写はアナタに決めたやもしれぬのに……。」

ミフネの言葉にダンゾウはこう返します。

「やもしれぬのでは困るのだ。ワシは忍の世界を守るためにどんな手でも使うつもりだ。
 この世界は一つになるべきなのだ。かつて初代火影柱間が一族をまとめて里を創ったように。
 今度は里をまとめ忍世界を一つにする。
 話し合いでこの忍の世界が一つになる事はない…。
 時間をかけて道徳的にやっていては何も変わらん。
 いずれ“暁”に忍世界を潰されてしまうだろう。

一つになるということは価値観や多様性を認められる状態に昇華すること。
すなわち価値観が違う相手を包容できる認め合いの中にこそ生ずる融合状態
しかしそれを無視して結果だけを追い求めるダンゾウは、
つぎはぎだらけの融合状態がいかに脆く危ないか――
全く分かっていないのではないかと考えられます。
木ノ葉をとっても千手一族がうちは一族を取り込んで、
結局は内部分裂を起こしてしまうような事態に陥ったわけです。
それを無理やりうちは一族虐殺という形で抑え込んだものの、
結局はサスケのように憎しみに取り憑かれた亡霊を生み出すことになってしまった。
これが一国を代表する里同士ならばどうでしょう。
内部分裂どころか紛争が絶えない世界となっていくでしょう。
力で押さえつければ必ず力が跳ね返ってきます。作用反作用の法則に似ています。
やはりダンゾウは上に立つ立場の人間ではないのです。

「理想を実現するには時間がかかるもんじゃぜ。
 焦れば周りが見えず失敗を引き起こす…。今のお前だ。
 まあ所詮、そんな理想は無理な話じゃぜ!
 よかれと思っても結果不信を生み、わだかまりを生み、憎しみを生む。
 ダンゾウ…今はお前の言っている事すら信用できん。」

土影が言う通りなのです。

「信用があろうとなかろうと…結果は必要だ。」

逆に信用すらつくれないなら結果は出ないに等しいです。

「それが世界…。それが人間だとするなら未来はないな。
 分かち合うこと、信じること……それを止めたら世界に残るのは恐怖だけだ。
 道徳を考慮しないやり方や諦めは今のオレにとって受け入れ難いものになった。

我愛羅は分かち合い、そして信じあうことの大切さを学びました。
道徳を考慮しないやり方を認めることはできない――とダンゾウを批判します。
そうでなければ恐怖と憎しみのみが蔓延ることになる。
かつての自分がそうであったように。

「難しい事を簡単に言うのう…。里を治める事をまだ何も知らぬガキが…。
 今のうちに聞きたいことがあったら何でも質問しろ。
 先輩として何でも答えよう…。のうダンゾウ……ククク。」

土影は我愛羅に冷やかしを入れるような姿勢を見せます。
――我愛羅が若輩の分際で悟ったような口をきくのに、意地悪な気持ちが働いたのでしょう。
しかし分かっていないのは土影の方でした。

アンタ達はいつ己を捨てた?

いつ己を捨てた――とは、いつ相手を認め、分かち合う姿勢を見せたか、
いつ相手を信じようとしたか
――という意味合いが大きいでしょう。
土影も一本とられたことを認めるような素振りです。
さて、サスケについてですが、
デイダラを倒したサスケを見てみたいという黒ツチをよそに、
土影は雷影に巻き込まれるな、と一言。

「ダンゾウ様。写輪眼の回収のため我々のどちらかを下へ行かせてください。」

とフー。雷影にサスケが負けるという前提で話が進んでいるようです。

「アンタ達木ノ葉はそのままでいてもらおう。
 雷影殿にそう託された。」

青の言葉に身構えるフー、トルネですが、ダンゾウに抑えられます。
ところで、忍の世界が暁に潰されるのではないかと懸念するダンゾウですが、
果たしてどこからどのようにそう思ったのでしょうか?
暁の目的を知っているから? 
それとも暁の行動から推論づけて?
ここで鍵を握るのはやはり一旦引き下がったダンゾウということになりそうです。