453 『五影会談前夜』

1.五影会談前夜(1)

木ノ葉へ急ぐ“鷹”の面々。
突如、空間を歪<ひず>ませて、トビがその行く手に現れます。

「こいつのチャクラ…。突然感じた…。どういう事…?」

香燐は遠くのチャクラを感知できます。
つまりサスケ達に何者かのチャクラが近づいていれば、
それを感知することができるわけですが、
全く感知することなく現れたということは、
チャクラ感知すら遅れる一瞬で空間を飛んできたことになります。

「…どうしてオレの居場所が分かった?」

訝しがるサスケにトビは答えます。

「オレをなめるな。こっちにはそれなりの能力がある。」

それなりの能力――、ゼツの監視以外にもまだ何かあるような節です。

「…今さら何の用だ?
 オレ達“鷹”は“暁”を抜けた。お前らにもう用はない。」

尾獣狩りの件で暁に協力したが裏切った覚えはない――
ところが、トビはサスケ達が件の尾獣狩りで暁を“裏切った”として
制裁にきたといったような言い回しをします。

「イヤ…“暁”としてやった仕事は最後までやってもらう。
 …とは言っても八尾はもういい…。今は別の用をやってもらう事にした。」

結局のところサスケ達が持ち帰ったのは身代わりに過ぎなかった、と。

「お前らは八尾に一杯食わされたのさ。
 正直お前らにはがっかりしたぞ。」

写輪眼では確かに見切っていたはずだと驚くサスケですが、
尾を分断したときにその隙があったことに気付きます。
暁として引き受けた仕事はやってもらうというトビ。
押し通ろうとするサスケですが、トビの身体を透過してしまいます。

「お前の目的は今や空しく聞こえてくる…残念だ。
 木ノ葉隠れの里はもう無い。」

この言葉には流石にサスケも驚きを隠せない様子です。
そこへまた突如として現れたゼツ。火影がダンゾウに決まったことを知らせます。
ダンゾウという言葉に反応したサスケを、
待ってましたとばかりに次のようにトビは言うのです。

「そうだ…。お前の兄を追い詰めた木ノ葉の上層部の一人だ。
 そいつが新たな火影になった。」

一体木ノ葉で何があったのか、訊ねるサスケにトビは答えます。

「オレの部下ペインが木ノ葉を潰した。
 お前もペインもハデにやりすぎたせいで、
 ついに五影も動き出したようだ。」

サスケの八尾拉致、およびペインによる木ノ葉強襲は、
暁に対する局所的に点在していた不満分子を、
一気にかき集めてしまう結果を引き起こしてしまった
――ということになるのでしょう。
ところで、ペインを部下扱いしている点から見て、
トビとペインの立場は対等ではなかったようですね。
五影会談が開かれるとなって、
ターゲットであるダンゾウが木ノ葉を出てしまうなら、
ターゲットが向かう方に行った方がいいのではないかと提案する水月

「オレたち“鷹”は五影会談で火影の首を取る。行き先変更だ。」

とサスケが言うとトビは北叟笑むかのように言います。

「…それがいいだろう。」

別の用とはこのこと、あるいはこれに近いことでしょうか。
言うなればトビにとってダンゾウは邪魔な存在なのかもしれません。
サスケに対してしきりにダンゾウの名前を口に出したのも、
サスケがダンゾウを殺すように仕向けるためだった――

つまり、ダンゾウはトビにとって都合が悪いことを知っているということです。
例えば、トビの正体――とか。
そしてサスケをそう仕向けるからには、サスケでなくてはならないということ。
自らがダンゾウに手を下すわけにはいかないということでしょうか。
であるならトビが取る行動は上述のことを裏付けるようで辻褄が合います。

2.五影会談前夜(2)

一方、木ノ葉の里。
サスケが暁にくだったと聞いて泣き崩れるサクラ。

「何泣いてんだコラ! 泣きてーのはこっちなんだよ!
 てめーが泣いてもキラービー様もユギト様も帰ってこねェ!
 泣くヒマがあったらさっさとサスケについて話せ!」

と詰め寄るカルイに、サイが待ったを入れます。

「おそらくこのサスケ抹殺の承諾がなされた時点で、
 木ノ葉にあるサスケの情報は君らの側に渡されるハズだ。
 ここでこの人にそこまで詰め寄らなくても…」

確かにそうではある。
でも、師匠の安否が気がかりでじっとしてはいられない、という二人。
ナルトはふと自来也のことが頭を過ぎります。
カルイ、オモイの言う師匠が人柱力であることを確認して、ナルトは二人に言います。

「“暁”は人柱力を必ず生け捕りにする。
 お前らの師匠はまだ生きてるかもしれねェってばよ。」

この言葉で目に輝きを取り戻すような二人。

「サスケの事よりまずはその師匠を助けるのが先だ!」

ナルトの言葉で一先ず事態は収拾に向かいます。

「オレに任せてくれサクラちゃん。」

雲隠れの忍たちに協力することを誓ったナルトは、
オモイ、カルイを前に考えている様子です。

3.五影会談前夜(3)

身体が二つに割れるゼツ。割れた断面を肉が覆っています。
やはり二つの人間が融合しているような様子です。
一方の白い方のゼツがサスケたちを五影会談の場所へ誘導します。
ついて行っていいのかという重吾に、

「何かおかしな様子があれば“天照”で処理する。
 ちょうど試したい事もあるしな。」

と答えるサスケ。
他方残った黒い方のゼツは

「ウマクイッタナ。」

と話しかけます。

「…イヤ…長門にしてもオレのための輪廻天生の術を、
 あんな事に使うとは思わなかった…。裏切るとはな…。」

ここでトビはペインのことをペインと呼ばずに長門と言っています。
そして輪廻天生の術も既知の様子です。ペインについて全て知っていたわけです。
そうトビはやはり暁の全てを牛耳っているのです。

「サスケが長門以上になったとしてもコントロールできなければ意味がない。
 外道魔像も当分はリンクさせるつもりはない。様子を見た方がいいだろう。」

外道魔像とリンクさせるつもりはない、とはどういうことでしょうか。
尾獣集めを保留するという意味か、
あるいはサスケを暁の“リーダー”と呼ばれるような存在にして、
幻龍九封尽発動を介することができるようにするのを引き延ばすつもりか。
いずれにしろ、トビはサスケを引き込むつもりでいるのは間違いありません。

「ダガ長門ガ死ヌシナリオモ用意シテアッタト…」
「一応な…。だがオレの本命ルートじゃないのは確かだ。
 うずまきナルト…。奴のせいで計画が少しズラされた。」

トビは長門が亡くなったときの段取りまでも考えていたようですが、
それは不本意な様子です。動くのか、というゼツにトビは答えます。

「虎視眈々といくのはここまでだ。
 “月の眼計画”を急ぐとしよう。」

動く、ということでしょう。


五影会談に先だって、砂隠れを旅立つ風影我愛羅
テマリ、カンクロウを引き連れ、
里の者に見送られての出発となりました。