439 『地爆天星』

1.地爆天星

「そこまでしなくても!
 もうアナタの体が――!」

大規模な神羅天征を放ってそんなに間をおかず、
続けて大技を放とうとする長門を小南が気遣います。

「少し黙っていろ小南……。集中する。」

しかし長門は自分の身体への負担を厭わず、地爆天星に集中します。
天道の両掌の間に発生した黒い球塊。それを宙空へ放り上げます。
あるところで静止したそれは、
ブラックホールのように周囲の土塊や樹木、一切合財を吸い寄せ、
まるで星のような大きな球体をつくり、
重力を無視したように浮上し続けます。

「…相手は九尾だ……。手は抜けない。
 それに六道仙人の作ったと言われる月に比べれば……大した事はない。
 …とにかく…これで九尾捕獲完了だ。」

地が爆<は>ぜて天につくられた星。その名の通り、まるで星と見紛うばかりのそれに、
九尾を閉じ込めた長門は、ここまで消耗してまで、
この規模の地爆天星を放ったことをこう述べています。

「何でだ!? 何でこうなっちまう!?」

長門がつくった星に閉じ込められたナルト。
その精神世界で、ペインが問うた平和と憎しみをなくすことの答えがわからず、
頭を抱え込んでしまいます。

「分からねェ!! オレってばどうすりゃいい!?
 もう何も分からねェ!
 誰か助けてくれ! 答を教えてくれ!」

そんなナルトに九尾はその梟雄ぶりを発揮せんと
ぎらぎらとした眼差しを向けます。

「全てを壊せ。苦しむもの全てをなくせ。
 お前の心を全てワシに預けろ。
 そうすれば苦しみからお前を救ってやる。」

ナルトの腹にある九尾封印の中枢と思われる八卦の封印式が、
まるで血の涙を流すように黒く歪み破れます。
八本目の尾が現れ、その姿は筋骨格が再現されもはや九尾といっても過言ではありません。
地爆天星を突き破り、けたたましい咆哮をあげて目を見開くその姿に、
長門も驚嘆の念を禁じえないようです。
精神世界の中で九尾とナルトを隔てる檻に貼られた『封』の札。
九尾はもはや言いなりのようになってしまったナルトに
それを引きちぎらせようとします。
それを止める『四代目火影』と書かれた外套を羽織った男の腕…。
強くナルトを抱き寄せ、九尾から遠ざけます。

「八本目の尾まで封印が解放してしまうと、
 オレがお前の意識の中に出てくるように封印式に細工しておいたのさ。
 なるべくはそうなってほしくはなかったが…
 もうお前にも会いたくなかったしね…九尾。」

なぜ自分と九尾しかいないこの精神世界に四代目火影がいるのか、
まるでわからないといったふうに当惑するナルトを後目に、ミナトは続けます。

「でも…成長した息子に会えるのは少し楽しみでもあったから…
 イーブンてとこかな。」

2.精神世界での邂逅

ナルトの精神世界に四代目火影ミナトが出てきたということ。
これは今までの謎だった色々なことにつながっていきます。
まず大蛇丸三代目火影猿飛ヒルゼンとの戦いにおいて
穢土転生で歴代火影を蘇らそうとしたとき四代目火影ミナトが蘇らなかったこと。
ヤマトが『妖狐の衣』・四尾形態のナルトを見て思ったこと。

「あんなチャクラを身にまとっていたら普通は…
 どうして…動いてられる…
 ナルト…君はいったい…」

その禍々しきチャクラに包まれていても動くことができたその理由――。
そもそも自来也の話からも類推されるべきものです。

ミナトは九尾の陰のチャクラしか屍鬼封尽しておらん。
 ミナトがわざわざ九尾の力を陰と陽に二分し、
 陽の側をナルトに封印したのは九尾のチャクラをナルトに遺すためだ。」

陰の九尾のチャクラを屍鬼封尽すること、
陽の九尾のチャクラをナルトに封印すること、
この二つを成し遂げるためにミナトも陰と陽に対応する2つに分かれたはずです。
陰のチャクラの方は死神の腹の中へ。
では陽のチャクラの方はどこへいったのでしょう――? 
今回のミナトの台詞がその答えとなっていたのではないでしょうか。

「八本目の尾まで封印が解放してしまうと、
 オレがお前の意識の中に出てくるように封印式に細工しておいたのさ。
 なるべくはそうなってほしくはなかったが…
 もうお前にも会いたくなかったしね…九尾。」

陽の九尾のチャクラともども自身の半分をナルトの中に封印した――というわけです。
陰がないとは言え、それでも禍々しい九尾のチャクラの毒から、
我が子であるナルトを微弱ながら守っていたのではないでしょうか。
ナルトは父である四代目火影の姿をあまり知らないでしょう。
顔岩や写真、噂などで姿や人柄のイメージがあったかもしれませんが、
やはりあれはナルトの意識がつくりだした四代目火影ではありえません。なぜなら――

「でも…成長した息子に会えるのは少し楽しみでもあったから…
 イーブンてとこかな。」

父親であることを明かすような発言、
九尾完全形態へと暴走しかけていたナルトを救ったこと――


これからミナトはナルトにどんなことを語りかけるのでしょうか