さて、年も暮れに迫って参りました。
8、9月以降忙しさにかまけて更新がおろそかになり、
なかなか考察が書けていなかったのですが、
これだけは年内に書いておきたいということを
いくつか書いていきたいと思います。
片手間にでも読んでいただければ幸いです。

1.歪んだ平和

ペインの思想、ペインが考える平和――
それは綱手の言うようにテロリストでしかないと言えます。

「五影をなめるな!
 我々の先代達が求めそして維持しようと努めてきた安定を崩そうとする
 お前らテロリストが何を言っても無駄だ!!」

互いに自国こそが正しいと争って、そしてそんな徒労の末にとうとう作り上げた安定。
それは本当の平和と呼べるものではないかもしれません。

「お前達の平和が我々への暴力なのだ。」

結局のところ、そうやって大きな者がばたついた結果、小さな者を巻き込み、
憎しみをさらに大きく波及させたということになるでしょう。
憎しみが憎しみを呼ぶ――
ペインがもたらしたこの事態は、
過去、大国が蹂躙することで生まれた強い憎しみによるもの
ということになるでしょうか。しかし、

「確かにかつて木ノ葉隠れがやってきた事が全て正しいとは言えない!
 だがお前たちのこんなやり方は許せない!!」

結局はペインのやっていること、すなわち<痛み分け>は、
ペインが激しく憎悪してきたやり方
より大きな力をもって大きな力を制する――、
憎しみが憎しみを呼ぶやり方と何ら変わりはないのです。

「痛みを知らぬ者に本当の平和は分からん。」

確かにペインの言ってることはある面では正しい。
痛みを知らなければ、他人に優しくしたり、寄り添いあう大切さが実感できないでしょう。
では何が大きく間違っているか――。
“痛み”とはそう感ずることがなければ“痛み”でないのです。
いくらペインが思う“痛み”を与えても、
人々がそれを“痛み”と感ずることがなければ“痛み”ではない――
そう、殺戮に対する憎しみでしかないのです。
そこに“痛みへの理解”が介在する余地なんてのはありません。憎しみが憎しみを呼ぶのです。
ゆえにペインが考える“痛み=平和”という図式は、
人々からすれば“痛み=憎しみ”でしかなく、
ペインの考える本当の平和など独善的で“ペインだけの平和”でしかないのです。
これはペイン自ら皮肉った“大国だけの平和”と全く変わりません。
ペインの望む平和――
強大な力をもった絶対者=<神>が存在し、その絶対者の言うがままにしていれば、
執着も未練もない、人々は憎しみも無く殺し合いも無く暮らすことができる――
悲しみを感じるとしても一瞬だけ、
であるから対となる幸福や楽しい、嬉しいという感情も薄れ、
生きているのか生かされているのか、
操り人形のような世界が展開されていると考えられます。
生きているという実感はなく、生命の輝きなんてものはありません。
そこらにある無機物のようにただあるがまま暮らしている――
そんな様なものでしょう。他人を大事に思うこともなくなる――。
人間であること、生命であることを捨てて
これが果たしてみんなが望む平和でしょうか。
そしてこんな“平和”のために“痛み”という名の殺戮を繰り返す。
こんなものは喜んで破滅を受け入れる姿勢に過ぎません。

2.平和と理解

対して自来也が望む平和とはどんなものでしょうか。

「だがのォ…こんなワシでもこの忍の世に
 憎しみがはびこっているのは分かる。」
「その憎しみをどうにかしたいと思っとるんだが、
 どうしたらいいのかワシにもまだ分からん…
 だがいつかは……人が本当の意味で理解し合える時代が来ると
 ワシは信じとる!!」

自来也は憎しみから戦争や悲劇が生み出されていると考え、
その憎しみをどうにかできれば、人と人が理解しあえる時代がくると考えています。
人と人との理解――憎しみの呪縛から解放された状態であると言えるでしょう。
憎しみは押さえつけてなくなるようなものではない、
そう考えているからこそ、どうしたらいいか分からないと言っているのだと考えられます。
この点でペインよりも進んだ考え方をしているといえます。
生きる以上、衝突や競争は避けられない。そこには悲しみや憎しみも存在するし、
時には突発的な不可抗力によって何かを喪失し無力感に苛まされることもある。
けれど――そうやって荒波を乗り越えていく中で人は成長し、
そして“理解”できるようになるのではないでしょうか。
人が本当の意味で理解し合える時代
それは一人一人が荒波を越えて成長していく中で、
本当に大切なモノを、人間としての誇りを心に抱いて、精一杯生き抜いている、
であるからこそ他人を周囲の環境を大切にしていける、
生きることにそして寄り添いあうことに意味を感じられる世界――
憎しみはあっても、憎しみに囚われ続けることがない世界ではないでしょうか。
これは広く受け入れられる平和のあるべき形の一つでしょう。


自来也の想いを託されたナルトはいったいどんな答えを出すのでしょうか。